アームヘッド・ヴァーシズ『ニューヒーロー』

アームヘッドの外伝です。たまに続きが出ます。
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マキータ @makitateriz

俺はなにかから逃げるようにバイクを走らせていた。ゴレン諸島の中央部複数の群島からなるこの地方はいわゆる過疎地帯でほとんどまわりに人間は住んでいない。だが俺はバイクの速度を緩めない。追っ手はいつやって来るのかすらわからない。俺はどこまで逃げればよいのかすらわからないのだ。

2015-02-10 23:15:13
マキータ @makitateriz

不安要素しかないなか、このバイクがアームヘッドで少なくとも燃料切れの心配がないのがありがたかった。「精神が不安定のようだが?大丈夫か?」こうやって小うるさいのが玉にキズだ。「お前こそどうなのだ?捕まったら貴様も解体されてしまうんじゃないか?バイク1号」「ミスラだ」「あ?」

2015-02-10 23:20:48
マキータ @makitateriz

「俺はバイク1号じゃない。ミスラだ。そんな無機質な名前は捨てた。お前はどうなのだ?ウルスラグナ」ミスラが言った。「なるほど、自分で名前をつけたか。無機質な名前ね・・・」俺は何を言おうとしたのか?だが思考を切り替えねばならない。追っ手だ。黒いバイクが後ろから猛追する。

2015-02-10 23:24:35
マキータ @makitateriz

「裏切りのバイク1号!そしてウルスラグナ!お前たちは逃れられぬ運命にある!善と悪の戦いからは逃げられぬ!」黒いバイクが叫んだ。「お前はバイク3号!完成していたのか?」ミスラが驚愕する。「そうよ!スピードの俺様がお前らを追い抜き倒す!敵前逃亡するならば死ね!」バイク3号が加速する。

2015-02-10 23:28:23
マキータ @makitateriz

雄弁なバイクに対しその黒き乗り手は沈黙を保って不気味である。俺は善と悪の戦いに興味がない。いや、その運命そのものを憎んでいる。「逃げるぞ!ミスラ!」ミスラの限界速度まで加速し逃げる。中央ゴレンの殺風景がどんどん後ろへと流れていく。遮蔽物のない道路しかない道に隠れ場所はない。

2015-02-10 23:32:25
マキータ @makitateriz

二台のバイクはゴレン諸島の美しい海岸に沿ってチェイスを続けている。俺自身疲れの無い体質であることを感謝した。だが向こうの黒いバイクもまた同じ。ミスラが急に減速する。「どうした?」理由はすぐに分かった。目の前を一角獣が横切った。「殺すわけにはいかねえだろ・・・」だが致命的。

2015-02-10 23:37:05
マキータ @makitateriz

バイク3号とその邪悪な黒き乗り手が迫ってくる。さらに海猫が目の前に飛び視界を奪う。ミスラの動きが狂う。「・・・。もうチェックメイトだ」黒き乗り手が口を開いた。「これも上流階級とやらへ中継されているのか?」「中継だと、なんだそれは?」なるほど知っているのは俺だけか。

2015-02-10 23:40:43
マキータ @makitateriz

「お前はなんて言うんだ?悪役」「我の名はアンラ・マンユ。貴様らは既に追い詰められ死ぬ。言い残すことはないか?」もはやこれまでか。「無いね」俺はミスラを海に向かって加速させた。「おい!ウルスラグナ!どういうつもりだ!」「すまない。ミスラ。俺は馬鹿らしい戦いはこりごりなんだ」

2015-02-10 23:45:00
マキータ @makitateriz

俺達はそのまま海へと飛び出し沈んでいった・・・。それからどうなったのだろうか?

2015-02-10 23:46:25
マキータ @makitateriz

「ニュー・ヒーロー」 (椿薫編)

2015-02-10 23:47:01
マキータ @makitateriz

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2015-02-11 22:30:11
マキータ @makitateriz

「ウルスラグナは完成したか?」幼さの残る青年が灰色のローブの男に尋ねた。俺は横になりながら様子を見ていた。「はい、今は動作を停止していますが」「ゾロアスター、ウルスラグナはいつ頃、善と悪の戦いに投入できそうか?」「はい、アームコアの調整に少し手間取っています。まだ時間が・・・」

2015-02-11 22:34:47
マキータ @makitateriz

「お前たちとは違い、ウルスラグナにはアームコアを試験導入している。そのせいで自我が不安定になるのは仕方の無いことだ」「早急な投入が必要でしょうか?社長」「否、最大の敵は油断だ。念入りに調整せよ」「わかりました。菊田社長」うー。うー。急にまわりが明るくなって・・・。

2015-02-11 22:38:12
マキータ @makitateriz

「あ、起きたわね!」特攻服を着た女が俺を見ていた。「ここは・・・?」俺はベッドの上に横になっていた。部屋?『蛇苺』『御蓮最速』などの旗があちこちに飾られている。「ここは、私の部屋。あなたはどうして浜辺で倒れていたの?」「俺は助かったのか?」本来地獄に逃亡するつもりだったのだ。

2015-02-11 22:43:17
マキータ @makitateriz

「私は天城メープルソース!カエデって呼んで!あなたはなんて名前なの?」「ウルスラ・・・。いや俺は椿薫だ」「ツバキ・・・」「そうツバキだ。ところでミスラは無事か?」「ミスラ・・・。?ああ、あのバイクね大丈夫よ!」俺は胸を撫で下ろす。ミスラだけが地獄に行ったとなれば申し訳がない。

2015-02-11 22:47:08
マキータ @makitateriz

「あなたも走り屋なの?」「まあそういうところにしておく」「じゃあイチゴ先輩って知っている?」イチゴ先輩・・・?それは知らないとまずいものなのか?もしかしたら怪しまれるか?「カエデ?二枚目は目覚めたかしら?」したの階から声がする。「うん、母さん!起きたよ!」登ってくる音がする。

2015-02-11 22:50:33
マキータ @makitateriz

「紹介するね、イチゴ先輩!」「天城苺です」母親が挨拶する。「椿薫です」俺は上半身を起こして挨拶する。「私は昔、イチゴ先輩って呼ばれていた不良だったんだけど今は引退して喫茶店をやっているの。でも血は争えなかったわね」イチゴ先輩が娘を見た。「助けてくれてありがとうございます。ですが」

2015-02-11 22:54:16
マキータ @makitateriz

「まあ、ゆっくりしていきなさい。ここはなにも無いところだけど」「まだ、身体も治らないでしょ?」確かに俺はここを今すぐ出れる体調とは思えない。だがその選択は間違いだったとすぐに思い知らされることになる。続く。

2015-02-11 22:56:57
マキータ @makitateriz

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2015-02-12 21:24:35
マキータ @makitateriz

ズルズルとスパゲッティを食べる。大分腹が減っていたようだ。エネルギーを取り入れる方法がこれで本当に良かったと思える。無論空気だけでもある程度補給は可能なのだが、それでは戦闘はできない。というより正確には・・・。いや俺はもう戦う必要は無いのだ。おそらく俺は死んだと思われている。

2015-02-12 21:28:03
マキータ @makitateriz

善と悪の戦いから、いち抜けたと言うわけだ。それでいて命も有るのだから運が良かったと言う他無い。「美味しい?」イチゴ先輩が尋ねた。「普通」俺は味覚を持っていない。「おい、ツバキ!嘘でも美味しいっていいなよ」メープル某が言う。「嘘でもはないでしょ?」「・・・。ああ、美味しいです」

2015-02-12 21:31:43
マキータ @makitateriz

「わざとらしい・・・。ところでバイク見てみる?」「ああ、塩味になっていないか。気になるぜ」はてさてミスラだったが無事だった、塗装も剥げてないくらいだ。「目が覚めたようだな」超震動会話だ。メープル某には聞こえない。「ああ、フジツボのお家になってないか心配してたぜ」「うるせえ」

2015-02-12 21:35:49