【AUC身内ネタ】クラークと白社長

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鉄剣鮫(昼盛ク貧/HSKH) @IRON_2cm2

クラークは窓際で外を見るエルムと並んで外を見ていた。外ではハカランダとサダメが手合せをしている。共に巨大な鉄の塊と言えるような剣を使い、近所迷惑な轟音を響かせている。「それで」視線は庭に向けたまま、エルムはクラークに声をかけた。「サダメ君とはどうなの?」「……どう、とは?」

2015-03-30 00:00:41
鉄剣鮫(昼盛ク貧/HSKH) @IRON_2cm2

聞き返したものの、質問の意図は分かっていた。サダメへの恋心は、その関係は進展しているのか?とエルムは聞いているのだろう。クラークがそれを分かって聞き返した事をエルムも当然分かっているのか、重ねて問いかけてはこない。二人の間には沈黙が、周囲には鉄の轟音が響く。

2015-03-30 00:00:47
鉄剣鮫(昼盛ク貧/HSKH) @IRON_2cm2

「……余所では、兄と呼ぶ事にしました」数分かけて、クラークはそんな言葉を捻りだした。「へぇ」ずっと庭に向けていた視線が、クラークへ向けられる。「諦めた、という事かしら?」その言葉にクラークはなんと答えたらいいものか、迷った。諦めたのだろうか。自分に問いかける。

2015-03-30 00:00:53
鉄剣鮫(昼盛ク貧/HSKH) @IRON_2cm2

サダメは、自分の事を女性とは見ていない。数度の巡りを共にし、何百回もの戦場を横で駆け抜けたから、それは確信を持っていた。だけど、それは最初から分かっていた事ではないだろうか。地底へと落ちかけた自分を救ったサダメの手は、身体を救ってはくれたが、心は困らせてくれる。

2015-03-30 00:00:59
鉄剣鮫(昼盛ク貧/HSKH) @IRON_2cm2

沈黙のまま考えを巡らせるクラークを、エルムはじっと見ていた。その表情からどういった感情を抱いているのか、いまひとつ感じ取る事が出来ない。考えに没頭するクラークは無防備で、両性愛者として有名なエルムを知る者からすればいたずらの一つでもしそうなもの、と考えるが、指一本触れる事はない。

2015-03-30 00:01:15
鉄剣鮫(昼盛ク貧/HSKH) @IRON_2cm2

実のところ、エルムも少々迷ってはいた。クラークの事は目にかけていたので大体は把握している。恐らく彼女が気付いていないであろう心の変化にも気付いていた。つまり、クラークの心はクラークとサダメの二人だけではなく、もう一人現れたのだろう。知る者は知っている。聖国の英雄、赤い髪の彼。

2015-03-30 00:01:21