地域系アートプロジェクトの構造的限界と日本美術界の病【番外編】ドメスティックな文脈

インディペンデント・キュレーター渡辺真也氏の連続ツイート Togetter - 「地域系アートプロジェクトの構造的限界と日本美術界の病」 http://togetter.com/li/61668 の番外編をまとめました。
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Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

今日はリーダーの方の質問に応える形で、番外編をツイートします。 「地域系アートプロジェクトの構造的限界と日本美術界の病 番外編 ドメスティックな文脈 その1」

2010-11-02 10:27:54
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈1)私は以前、地域系アートプロジェクトにて活躍するとあるアーティストから、地面にお風呂を作る、というプロジェクトや、民家を切ってしまう、というプロジェクトを提案されたことがあった。

2010-11-02 10:28:42
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈2)しかし、地中に部屋を作る、というプロジェクトは、既にエルムグリーン&ドラグセットが、 http://bit.ly/daayGM そして家を切る、と言えばそれこそゴードン・マッタ・クラークが既に作品化していた。 http://bit.ly/dcFcNM

2010-11-02 10:29:17
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈3)もしこのアーティストの作品は、彼らと何が違うのですか?と関係者に伺った所、返答が頂けなかった。そこで私が理解できたのは、日本の美術関係者が、エルムグリーン&ドラグセットやゴードン・マッタ・クラークを知らずに美術活動を行っている、ということであった。

2010-11-02 10:30:08
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈4)特にゴードン・マッタ・クラークに関しては、コンテンポラリー・アートを仕事としている人は、基礎的に知っているべき歴史化された事実である。それは、英語教師が英語文法を理解しているのと、それほど変わりが無いように思う。

2010-11-02 10:30:55
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈5)仮に、この提案をした日本人アーティストに、海外での展示機会が訪れたとしよう。その時、「エルムグリーン&ドラグセットやゴードン・マッタ・クラークと何が違うのか?」と問われて初めて、彼らは世界と乖離した、ドメスティックな文脈で活動していたことに気付くだろう。

2010-11-02 10:31:57
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈6)ニューヨークのアーティスト・イン・レシデンスにて、オープンスタジオに行った時のこと。とあるスペイン出身の女性アーティストは、身体中に青いペイントを塗りたくり、全身を使って描いた、という絵画作品を展示していた。

2010-11-02 10:32:25
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈7)すると、ご一緒していたアメリカ人のキュレーターが、「この作品は、イブ・クラインと何が違うの?」と尋ねた。すると、この女性作家は「それ、誰?」と答えた。彼女は、イブ・クラインを知らなかったのである。 http://bit.ly/9vpjuU

2010-11-02 10:33:04
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈8)アメリカ人キュレーターは、「イブ・クラインを知らずにこんな作品を作るなんて問題外だ」と言って切り捨てが、彼女は「私はイブ・クラインを知らないし、その人の真似はしていない、これは私のオリジナル作品だ」と半ば怒りながら返答した。

2010-11-02 10:34:18
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈9)しかし、彼女が真似しているかいないか、ということは問題ではなく、イブ・クラインさえ知らずにこの作品を作っていることは、そもそもお話にならなかった。その後、このスペイン人作家は、アートのプロフェッショナルからは相手にされなくなってしまった。

2010-11-02 10:35:10
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

「地域系アートプロジェクトの構造的限界と日本美術界の病 番外編 ドメスティックな文脈 その2」へとつづく・・・

2010-11-02 10:35:25
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

連続ツイート「地域系アートプロジェクトの構造的限界と日本美術界の病 番外編 ドメスティックな文脈 その2」

2010-11-03 09:37:26
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈B1)日本のアーティストは、地理的・言語的な理由から、外部と触れる機会がどうしても限られてしまう。その為、かなり意識的かつ自主的に外国語に触れながら勉強しない限り、欧米で共有されているアートの基礎的項目を共有することができない。

2010-11-03 09:38:02
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈B2)例えば、ネオン管を使用した、安易とも思われる日本人アーティストの作品を何度か拝見したことがあるが、アートにおけるネオン管を使った表現は、欧米のアートの文脈では、それこそ「鬼門」の様に思われている。

2010-11-03 09:38:48
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈B3)ブルース・ナウマンからジョセフ・コスース、マリオ・メルツ、ダン・フラヴィンなどの歴史を、それこそ歴史としてしっかりと学んだ上で立ち向かわなくては、ネオン管を使った新作は、アートとして評価されることは困難である。

2010-11-03 09:39:13
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈B4)つまり私たちは、ナウマン(物理、存在と非存在、点灯と消滅=生命、自己-他者認識)、コスース(言語と物質、色彩と文節、言語の概念)、メルツ(自然と科学、数学、物体)、フラヴィン(歴史と空想、宗教、目の構造、補色)などを乗り越えることを要求される。

2010-11-03 09:40:30
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈B5)これらの文法や歴史があるからこそ、それを乗り越えて、"A Phantom of Appropriation"の様なネオン管を使った作品を作れてしまう、ライアン・ガンダーの様な作家が、世界でひっぱりだこになる。 http://bit.ly/d39wev

2010-11-03 09:41:39
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈B6)柳幸典の憲法第9条を分節化し、3分おきに点灯させた「Article 9」や、中村政人のマクドナルドのmサインを使った作品「QSC+mV」などは、ネオンのメディア性や日本の歴史を上手く文脈化し、世界と接続できた日本人アーティストの稀な例と言えるだろう。

2010-11-03 09:43:48
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈B7)しかし現在の日本は、そのアートの文法をうまく自分のものにできていない為、結果として外部と話をすることや、外部に持って行くことが困難になってしまっている。これは、英文法さえ理解せずに英語圏の国にビジネスに行く様なものである。

2010-11-03 09:44:17
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈B8)日本人アーティストの多くは、国外の文脈と繋いだ会話ができない為、自分たちの作品を文脈に乗せて、外部へと流通させることができない。その結果、金銭との交換価値としての市場価値を海外に生みだすことができない。

2010-11-03 09:44:41
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈B9)しかし、この外で活動することができなかったドメスティックな文脈のアート関係者が、国内のみでネットワークを作ってギルド化してしまうことで、この外部との接続の不可能性、という日本美術にとって不毛な側面が再生産されている傾向がある。

2010-11-03 09:45:31
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈B10)また、日本人しか理解が困難なドメスティックなものをテーマにしても、先がない。海外が日本に熱視線を送っていたのは90年代までであり、現在の日本は注目を浴びていない限り、国内的な文脈をグローバル化することは困難だと言えよう。

2010-11-03 09:46:00
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

(ドメスティックな文脈B11)現在の私たちは、ドメスティックな文脈に寄って輸出コンテンツを生みだすのではなく、しっかりとアートの文法を理解した上で、よりユニバーサルなものに近づくことが求められている。

2010-11-03 09:46:30
Shinya Watanabe 渡辺真也 @curatorshinya

以上、「地域系アートプロジェクトの構造的限界と日本美術界の病 番外編 ドメスティックな文脈」でした。

2010-11-03 09:46:47