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囚人【レイカオル】

囚人と紙飛行機、僕夢バージョンです。 ちょっと色々いじくったり、全部まとめてみたりしました。
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二次小説創作ぶどー。 @uminosati

それから、1ヶ月の時が過ぎた。あの子は、あれから来なくなった。 「浮かない顔してるねぇ」 「あ……ノドカさん」 ノドカさん。僕と同じ囚人のはずなのに、何故か薄汚れた白衣を着ている。そして、看守達の対応も少し違う。 「どうしたの?話してごらん」 微笑みながら、そう話しかけてくる。

2015-03-30 01:26:11
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

この人は、囚人の仲間の中で一番仲が良いと言っても過言ではない。 ……けど。あの子のことを話していいものか悩んでしまう。一応、外部との接触は禁止されているから…… 「……話せない?」 「……はい。ごめんなさい」 「そっか……」 そう言いながら、クセのついた髪の毛をいじっていた。

2015-03-30 01:28:49
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

これは、ノドカさんの癖。考え込んでるときの癖。 「……恋?」 「……はっ?」 恋?誰が、誰にだろうか。 「レイ君、誰かに恋してる?」 ……恋?は?僕が? ちなみに。レイというのは、ノドカさんが僕につけた名前。記憶がない=0=レイ。単純な名前だ。だけど、それなりに気に入っている。

2015-03-30 01:32:07
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

と、まあそんな事は置いといて。 「僕が……恋……?」 「うん。そう見えたけど……違う?」 じっ、と。何かを見据える様な感じで、僕を見つめてくる。 「そ、そんな、別に、恋なんか……それに、僕女の子とかに出会ったこと……」 「……ダウト」 うぐっ。強い、強いぞノドカさん。

2015-03-30 01:34:03
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「本当、レイ君って分かり易いねぇ」 「い、いや、そんな……」 「……で?誰とどこで出会ったの?」 興味を持ってるような持ってないような、楽しそうな楽しくなさそうな感じで聞いてくる。 だけど。その瞳を見つめると……何も隠し事が出来ないような、そんな錯覚に陥る。 だけど、でも……

2015-03-30 01:38:29
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「……そう、思うのなら……そう思って下さい」 わざと、突き放すような言い方をした。するとノドカさんは驚いたような表情をする。 「おやおや。……レイ君が、そんな事言うようになるなんてねぇ」 「言えないものは、言えないんです。ごめんなさい」 そして、口を噤んだ。

2015-03-30 01:40:33
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「……はあ、分かった。そんな強情なレイ君には、この花をプレゼントしよう」 そう言い、差し出してきたのは小さくて可愛い一輪の白い花。 「……これは?」 「教えないよ。知りたかったら、自分で調べるといい」 そう言い、背中を向け歩いていってしまった。

2015-03-30 01:42:10
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

その背中を見送りながら、渡された花を見る。 「見たこと無い花だな……何だろう、これ」 特徴はない。白い花、どこにでも咲いていそうな花だ。 「何か意味があるのかな?」 ちゃんと保管しておこう。そのためには、花瓶をもらってきちんと育てなくては。 そして、僕もその場を離れた。

2015-03-30 01:44:39
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

そしてその日。彼女は来た。 ひ、さ、し、ぶ、り そう言い笑う彼女。その笑顔を見て安心すると同時に、とても怖くなった。何故かはよく分からない。 今日は僕の番だ。紙飛行機を持ち、空へ向かって放つ。 綺麗に弧を描き、それは彼女の手元へと届いた。……これで、また会える。そう安心した。

2015-03-30 01:51:48
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

だけど。彼女は僕の紙飛行機を仕舞うと、懐から白い何かを取り出す。 そして、それを持ち大空へ投げた。それはそのまま僕の元へと届く。 ……それは、紙飛行機だった。綺麗に折りたたまれていて、今までと比べ物にならないぐらい綺麗だ。 嫌な予感がする。……いや、嫌な予感しかしない。

2015-03-30 01:53:43
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

急いでそれを広げる。 『遠くへ、行くことになったの。だからバイバイ』 「……っ、へ……?」 理解出来ない。……理解したくない。その文に目を逸らしたくなる。 遠くへ行く?だから、もうバイバイ? ……もう、会えないってこと……? 彼女を見る。彼女は、笑っていた。綺麗に、笑っていた。

2015-03-30 01:55:59
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

ご、め、ん、ね 違う。僕が聞きたいのはそんな言葉じゃない。 ば、い、ば、い 笑顔でそう言って背中を向ける。……待ってよ、それで終わりなの?もう、会えなくなっちゃうの?紙飛行機も、もう渡せない?渡されないの? ……嫌だ。こんな別れ方は、嫌だ……!まだ、話してたい……!

2015-03-30 01:58:05
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「ーーーー!」 叫ぶ。僕は、叫ぶ。 「ーーーー!」 自分でも何を言っているか分からない。だけど、心が思うままに叫ぶ。あの子に届くように。彼女の背中はどんどん遠くなる。 「ーーーー!」 それを言い切った後。彼女の後ろ姿は、完全に見えなくなった。 僕の目から、涙がこぼれ落ちた。

2015-03-30 02:00:51
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

それから、僕の日常は変わった。 心に大きな穴が空いたような……とてもつまらない日々を過ごしていた。何をしても、何を見ても感動しない…… けれど、彼女の手紙を見ている時だけは違った。心が温かくなった。その瞬間だけが、僕の唯一の楽しみだった。

2015-03-30 02:16:39
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

ある日の夜。僕は、いつものように手紙を大事に眺めていた。 すると、部屋の外で物音がする。人の話し声もする。 「……ここだ。開けろ」 冷たい声。この声は聞いたことがある。 そして、僕のちいさな部屋の扉が開いた。立っていたのは、ソウタさんとリョウさん。それと看守が数人だった。

2015-03-30 02:18:55
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「……見つけたぞ」 両腕を看守の人に掴まれる。身動きが出来ない。 「な、何するんですか!」 「証拠」 そう言い、手紙を手に取る。ソウタさんの瞳はいつにもまして冷たい。 「外部と繋がっている確実な証拠だ」 「そんな……」 そう言ったのはリョウさん。信じられない、という顔をしている。

2015-03-30 02:21:25
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「リョウ、これでいいだろ」 ソウタさんのその問いかけに、何も答えないリョウさん。 「……もういいな?」 そして、黙って頷いた。……待ってよ、ねえ。なにするつもりなの。 ソウタさんは手紙を重ね、両端と両端を持つ。 待って。それ以上は。……ねえ。 そして……思いっきり、右手を下へ。

2015-03-30 02:23:59
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「やめろ!!」 僕のそんな声も虚しく……手紙は、ビリビリと音をたてて破れてしまった。僕の目の前で、ビリビリ、ビリビリ……半分に。 「う、うわああああああ!」 手を振りほどこうとするけど、力が強く中々解けない。だけど、必死に解こうとする。

2015-03-30 02:26:41
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

目の前のやつはもう一度、手紙を重ねて上下へとひいた。そして、どんどん細かくしていく。文字が見えなくなるぐらいに。思い出が見えなくなるぐらいに。どんどん、どんどん小さく。 「え、あ、あの子の……手紙が……」 もう、僕は声も上げられなかった。 そして、手紙は紙くずとなった。

2015-03-30 02:28:50
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「……離せ」 目の前のやつがそう言うと、僕の両腕は自由になった。急いで紙くずと化した手紙を集める。 「ま、だ……まだ、くっつければ……読める……読める、よ……」 集める。風が吹く。飛ぶ。 「あ、待って……」 思い出が、飛んでく。 「いか、ないで……」 彼女が、離れていく。

2015-03-30 02:30:48
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「行くぞ」 そう呟いたそいつは、看守とリョウさんを連れて僕の部屋を出ていこうとする。 ……おい、どこへ行くつもりだよ。彼女との思い出を粉々にして……どこへ行くんだよ。 「ま、待て……待てええええ!」 憎いそいつへと飛びかかる。彼女との思い出を壊したそいつへと飛びかかる。

2015-03-30 02:33:41
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「ソウタっ!」 咄嗟にリョウさんがそいつと僕の間へと入ってくる。看守も、武器を手にとった。 ……そんなの、知るか。僕はそいつを倒さないといけないんだ。彼女との思い出を壊したんだ。 心の中で声がする。 やれ。 全てを排除しろ。 邪魔する奴は……ゼンブコワセバイインダ。

2015-03-30 02:38:05
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「分かってるよ」 そして、一旦そいつらと距離をとる。一対七。でも、やれる。 まずは看守。剣を持ってる。避ける。蹴る。殴る。壁に叩きつける。それを繰り返す。 ……いつの間にか、立っているのはリョウさんとそいつと僕だけになっていた。僕の手は真っ赤に染まっている。

2015-03-30 02:40:37
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「っ、ソウタ!逃げろっ!」 そう言い、銃を構えた。銃。少々厄介だ。 ……まず一発撃ってくる。それを避ける。間をあけず、もう一発撃ってきた。肩に当たってしまう。撃った奴は、少し安堵していた。 ……こんな傷、問題ない。まだ動ける。 そして、そいつに向かって走り近付いた。

2015-03-30 02:43:16
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

そして、思いっきり顔面を殴った。右目に拳が当たる。 そいつの体は3メートルほど吹っ飛んで、跳ねて、止まった。 「う、うう……」 ……外したか。だけど、もう動けなさそうだ。 そして、とうとうそいつと向き合う。 「お前……」 「覚悟は、いいよな?」 そう言い、床を蹴るようにして走る。

2015-03-30 02:46:03