#変態不知火さん I dedicate everything to you.

高峯みやび @sukamelancholy

龍鳳の放った矢は殺人鬼の手を貫通しており、血が流れ出している。何が起きたのかを確認する前に、次の矢が彼女の頭部に突き刺さった。 「……これは」 物語の登場人物であり、決まった言葉しか話せなかった提督は唖然としている。 「司令、ご無事ですね」 #変態不知火さん

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倒れた敵を警戒しつつ不知火は声をかけた。 「なんだここは……、なんだこの服。それに三人とも──」 元の提督に戻った彼は順番に秘書艦たちを見て……、頷いた。 「そうか。俺は助けてもらったんだな」 「勿論よ。私を誰だと思っているの？」 得意気に胸を張るビスマルク。 #変態不知火さん

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頼もしく、そして愛する者たちによる救出。それは少々気恥ずかしいものではあるが、これまでに考える事すら許されず操り人形となっていた時の光景を思い出すと、背筋の凍るような体験ばかりだった。 「趣味の悪い夢だ。それを延々と見せられて……。俺は危ないところだったんだな」 #変態不知火さん

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「はい。詳しい説明は後です。今は司令が目覚め──」 不知火の台詞をさえぎるように、ソレはきひひと嗤った。頭部の矢を強引に引き抜き、血と肉、脳の一部が地面に飛び散る。青い地と真っ白な肉が、ソレは人間とはかけ離れた異物である事を証明する。 #変態不知火さん

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すかさず龍鳳は矢を続けて三度放つが、ソレは嗤い声をあげながら受ける。胸、喉、頭部。どれも致命傷となる部位に刺さるも、異物は提督を見た。あくまでも獲物は彼であるとばかりに。 「まどろっこしいのは、終わりだ。次は確実に、殺す」 「その前に私がっ！」 再度、矢を放つ。 #変態不知火さん

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「……ッ！」 放たれた矢はまたも異物の頭部へと一直線に向かうが、それを何者かの手が止めた。 「そ、そんな」 龍鳳は自身の目を疑った。異物の背中の向こうからその腕が伸びているが、異物の背後には誰にもいない。 「……キヒヒ」 ぶち、ぶちぶち。 肉を裂く不快な音。 #変態不知火さん

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「だーれだ」 矢を止めた腕は間違いなく異物の背中から生えていた。遅れて胴体も、足も。蛹から羽化するが如く、現れた。その者もまた加賀の姿だった。 「チッ……。悪趣味な」 舌を打つ不知火に、加賀の姿をしたモノは口角を歪ませる。 「私は加賀よ、不知火さん」 #変態不知火さん

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「加賀さんの名を騙るな、怪物」 硬く握り締める拳は力を増し、ケッコンの力も合わさっており、いつも以上の速度と力を発揮出来ると確信する。その証拠に不知火の身体を青いオーラが包む。 数ヵ月前、別次元の世界の鎮守府と演習した際に開花したものだ。 #変態不知火さん

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限界以上の練度になった者がなれるその状態、ケッコン。力と速度を増していく力ではあるが、その代償は同じ指輪をつけている提督の体力を消費する。夢の中とはいえそれは例外ではなく、思わず心臓をかばうようにするが、提督は言った。 「俺は大丈夫だから……。敵を倒すんだ」 #変態不知火さん

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「期待に応えてみせます」 「ビスマルクの戦い、魅せてあげるわ」 「龍鳳の本当の力、お見せします」 三人同時に蒼い光を放つ。それを加賀の姿をした怪物は首をかしげる。 「わかっていないわね。ここがどういう場所なのか」 「教えてあげる」 二人の加賀から闇が広がった。 #変態不知火さん

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これまでの #変態不知火さん 番外編『 I dedicate everything to you. 』 pic.twitter.com/w2jmb3CH4w

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昏睡状態の提督を救う為、三人の秘書艦は彼の夢の世界へとダイブする。夢の中で殺害されようとしていたのを阻止、攻撃するが彼の中に侵食していた深海因子は加賀の姿を取り、彼と秘書艦たちに襲い掛かる……。 #変態不知火さん

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加賀――怪物から溢れだした闇はいとも簡単に全てを飲み込んでいく。演じさせられていた物語の舞台も、登場人物も。 「……っ、不知火、ビスマルク、龍鳳」 三人の名を呼んでも返事がない。足元も自身の身体すら見えない程の暗闇に急激な孤独感が襲ってくる。 #変態不知火さん

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瞼を開けているのか、それとも閉じているのか。それすらも認識できない闇の中。動かしている感覚はあるのに、視界では何も捉えられない。思わず手を顔にやってちゃんと生きている事を確認する。 「……何処だここは」 一抹の光すらもない。 「……、……ッ！」 思わず口を塞ぐ。 #変態不知火さん

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叫びそうになった。そうでもしなければこの闇の中に押し潰されてしまうと感じたからだ。 「――、――――ッ！」 三人の名前を呼ぶがそれさえも闇に飲み込まれている。 不知火は言っていた、ここは自分自身の世界。全ては夢なのだと。 ならば何故覚めてくれない。 #変態不知火さん

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「それは、私が貴方を支配しているから」 喉を下から上へとなぞられる。小さく悲鳴をあげ、その手を振り払おうとするも躱されたのか、当たりもしなかった。 「全てが思いのまま。貴方の世界はもう私のもの」 加賀の声で囁かれている。手が頬を、脚を、背中を、胸をなぞる。 #変態不知火さん

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「ここは何処なんだ。あの三人はどうしたんだ」 全身をくまなくなぞられ、寒気が走る。 「教えない」 両耳に囁かれる。左右から加賀の声が聞こえた。 「私に支配された世界に飛び込むなんて馬鹿のやる事ね。どうなるかも知らないで」 「一体何を言っている……」 #変態不知火さん

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「現実世界じゃなく、夢の中だもの。夢を夢と知ってしまったら、その世界は自分だけのものになる。あり得ない事すら可能になる」 無数の手が提督の身体を這う。一つや二つではない。いくつあるのかもわからない程の数が彼を覆っている。 「ふふ……、きもちいいでしょう」 #変態不知火さん

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「気持ち悪い、だけだ」 得体の知れない怪物に迫られた所で劣情すらも沸かない。 「どうしてかしら。貴方が学生の頃に必死になってお付き合いした加賀よ。鎮守府でも何度も殺されそうになって、それでも愛した加賀。何も違いなんてない」 加賀の名を語る怪物は両耳にささやく。 #変態不知火さん

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「現実じゃ出来ない事も、ここでは全てが叶う。私が触れた場所を絶頂するぐらいに感じさせられる事だって出来るわ」 塗り込むように、加賀の手は提督の身体を撫でる。ゾクゾクとした感覚が走り、それでも歯を食いしばる。 #変態不知火さん

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「お前は加賀さんなんかじゃない」 「私は加賀よ」 「違う。本物なら、こんな事をしない」 「なら、本物とは違う快楽をあげる」 服を脱がされていく。わざとらしくゆっくり剥かれる。吐息が熱く、腹部や首筋、耳を撫でる。一体何処に顔があるのかと疑問が出るが、見えない。 #変態不知火さん

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「毎日あなたはこうしていたのでしょう。キスをして、セックスをして、体液も体温も交わって。……あぁ、良い事を思いついたわ」 頬を、ぬめった何かが這う。 「〝あなたを、食べてあげる〟」 悪寒が一気に走る。食べる。その食べるとはどういう意味なのか。 #変態不知火さん

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「あなたの全てを食べて、私の中で永遠に終わらない快楽をあげる。全身、余す事無く愛してあげるわ。あなたの身体を得られるのだから、それ相応のお返しをしなければならないわね……？ あの三人も、他の子も忘れるぐらいの、永遠の悦楽を」 #変態不知火さん

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◆◆◆ #変態不知火さん

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「……うぁぁッ！！」 全身全霊の一撃を怪物にぶつける。ケッコンの力が上乗せされ勢いと威力が増した一撃は怪物の首をいとも簡単に吹き飛ばした。血に染まり切った不知火の手袋は壮絶な戦いであった事を語っている。 だが、吹き飛ばした首から再生される。殺しても、終わらない。 #変態不知火さん