#変態不知火さん I dedicate everything to you.

高峯みやび @sukamelancholy

「えっと……つまり、足柄さんの身体が戦艦タ級の構造を捨てて……？」 「ちょっと違うわ。タ級の構造をそのまま足柄に、自分のものに作り替えて最適化ね」 「そんな事が」 「ありえたからこうなっているの」 「……不思議ですね」 「ええ、不思議ね」 月影はからからと笑う。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

腕を組み、人差し指をとんとんと動かしながらビスマルクは眉をひそめる。 「足柄の身体についてはわかったわ。それで、その足柄が誠士郎にやった事と関係が？」 「勿論。その為の説明よビッチちゃん」 「ビッチって呼ばないで！」 「そうです。エリエリと」 「なっ、違っ……」 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

脱線した話は月影の咳払いで修正され、座っていた椅子を動かし先程まで睨んでいたモニターを三人に見せる。網のような物がいくつもあり、複雑に絡んでいる。時折光のような物が網を通り、また同じように他の場所でも光った。 「これ、何だと思う？」 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

「何でしょうこれ……」 モニターを覗きこむが、龍鳳もビスマルクも首をかしげる。 「わからないわ」 「これは、脳ですか」 不知火はこれに見覚えがあり、答える。月影はにこりと笑い頷く。 「そ。これは誠士郎クンの脳。倍率をどんどん強くしたらこんなのが見えるの」 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

「司令の脳……これを不知火達に見せてどうするのですか」 「実はね、ついさっき、昏睡してた誠士郎クンの意識の場所を特定したの」 不可解な言葉が飛び出す。この女性は意味のわからない事を口走って誤魔化しているのか、と疑われてもおかしくはない。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

「意識とは脳の信号の事なのでは」 「簡単に言えばね。……でも、私の居る世界は貴女達の居る世界よりももっと技術が上なの。言えないけど、艦娘の艤装システムも、妖精さんも元々は――」 そこまで喋った後、月影は自分の口を塞ぐ。 「おっと、何でもないわ」 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

「まぁ兎に角、この世界じゃ到底追いつけないようなレベルの技術なの。で、その技術はヒトの意識の場所の特定、そして観察も出来るの。勿論、介入すらも」 途方もない空想のような話だが、真面目な月影に三人の秘書艦は疑い半分ながらも信じざるを得ない。頼れるのは彼女だけだ。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

疑い半分なのが顔に現れていたのだろう、月影はそれにくす、と笑う。 「まぁ、全部信じて……とは言えないわね。誠士郎クンの意識の在処は判明してるし介入も出来る。でもね、問題は、足柄の唾液を全て飲み込んでしまった事」 「……つまり」 続きを促す不知火。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

「足柄の身体には排泄する機能はなく吸収するだけ。でもどうしても不可能だった場合……。今回がそれなの。体内のタ級の器官を作り替えて“不要な深海棲艦の因子を吐き出したのよ”」 「……！ では今、司令は」 「そう。その深海棲艦の因子によって苦しんでいるの」 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

掴み掛からんとばかりにビスマルクが月影に近づくが龍鳳がそれを止める。 「ビスマルクさん、まずは誠士郎さんの救出からです。その後なら、いくらでもママを責めて構いませんからっ！ ……策はあるんでしょう、ママ」 「……ありがとう、龍歌。さっき介入出来ると言ったわね」 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

「彼の脳内へ介入、その後は彼の意識をはっきりさせるの。これは夢で、現実ではない。帰ってくるの、って」 「……失敗した場合は」 「調べてみたけれど、彼が陸奥と心臓の交換を行ったのが幸いしてる。どうにか深海因子に負けずにいる。けれど、精神が負ければ……」 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

「司令は負けません。どんな苦境でも、戦いをやめたりはしません」 確信を持って不知火は月影にそう答える。これまでもそうしてきたし、証明してみせた事を思い出す。 「……じゃあ、ここで彼が深海因子に侵食されて別の何かに変化するのを見ているの？」 「何ですって！？」 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

思わず声をあげたビスマルクに、月影は提督の右腕を持ち上げ、そして髪をかきあげる。 彼の指先からシミが伝わっていくかのように肌が白くなっており、髪も中身が白く、深海棲艦と同じような容姿になりつつあった。 「……司令」 「かなり深刻よ」 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

これまでの #変態不知火さん 番外編 pic.twitter.com/vgCMZaVn6V

拡大

高峯みやび @sukamelancholy

改二になり、足柄の体内が最適化されその不要物を事故で飲み込んでしまった提督。その不要物は戦艦タ級の深海因子が含まれており、それによって昏睡状態となる。その中で提督は無惨にも殺害され続ける夢を見る。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

一方秘書艦の不知火、ビスマルク、龍鳳は海軍の研究者月影の協力の元、ケッコンの力と月影の持ち寄ったオーバーテクノロジーによって提督の夢の中へとダイブした。 そして。 夢の中の提督にもその変化は現れた……！ #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

左手。確かにそこから熱が走り、腕を駆け巡ってはある一点を目指している。 彼の服の下では、イバラの刺青のようなものが熱を発しながら身体の中心点を目指す。そのイバラは左手の薬指から発生しており、目的地は心臓であった。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

イバラが彼の心臓に到達したと同時に、胸の奥が強大な熱を発する。熱い。体内の臓器、骨、肉体も全て溶かしてしまいそうな程に。 思わず叫びだしてしまいそうになるが、その熱は“初めてではなく既に知っていた”。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

彼の記憶にこんな経験はない筈だが、知っている。むしろ懐かしくもあり、尊いとすら感じる。もう一度熱をもったイバラが彼の心臓を目指す。腕を通り、背中を通過し漸く心臓へ到達する。一度だけでも拷問のようであった熱はさらに増し、既に叫び声は止まらない。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

身体を溶かされる。発生した熱はもう彼の体内から飛び出さんとばかりである。だが、その熱が愛しい。二度目の熱を受けてから彼は確信した。“これがあともう一度来る”と。 案の定同じく左手の薬指からイバラの刺青が走る。今度は胴体を何度も何度もがんじがらめにするように回る。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

もう限界だった。彼の体内ではこの熱を留めきれないと。そして熱は意思を持っているかのように暴れまわる。 三つの業火は彼の身体全てを駆け、その時を待った。 彼も、どうすべきかを既に理解……否。“思い出した”。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

「龍鳳……！」 熱の温度が増す。“名前を呼ばれて”歓喜する。 「ビスマルク……ッ！」 さらに勢いは増す。もう、熱に恐れを抱いてはいない。何故なら。 「不知火……！」 ……それこそが愛する者たちの、強い想いなのだからーーーー！！ #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

刻の流れが加速、否、元に戻る。自分を殺そうと殺人鬼はその包丁で刺そうとするが……、 「させません」 不知火が包丁を手ごと蹴り、ビスマルクが彼、誠士郎を庇い。殺人鬼の手には矢が刺さった。 「もう、大丈夫よ」 「私たちが、来ましたから！」 弓を持った龍鳳が現れる。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

これまでの #変態不知火さん 番外編『 I dedicate everything to you. 』 pic.twitter.com/w2jmb3CH4w

拡大

高峯みやび @sukamelancholy

昏睡し、夢を見る提督は物語に合わせて何度も理不尽に殺され続けていた。 そしてまた提督の前に現れた殺人鬼によって殺害されようとした時──。三人の秘書艦、不知火、ビスマルク、龍鳳がケッコンの力によって介入。提督の死を阻止した。 #変態不知火さん