#変態不知火さん I dedicate everything to you.

高峯みやび @sukamelancholy

ボロボロになり足掻こうとする怪物の一撃を回避し、煙立ち上る拳を何度も叩き込む。当然、その反動はきている。並の人間ならばそれだけで四肢が吹き飛んでしまいそうなほどの強力な一撃。だが、それも問題はない。俺には彼女がついている。誇り高き、ビッグセブンの力が――！ #変態不知火さん

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怪物の元へ駆け出し、その身に拳を入れる。何度も、何度も。一発や二発どころではない。何発も。そう――弾丸が尽きるまで。燃料が枯渇するまで。これが俺の戦いだ。彼女達の為の命懸けの戦いなのだ。 ――そして、怪物の身が崩れ出す。 #変態不知火さん

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「こんな、こんなこんな事……ッ！」 ここは俺の世界だ。お前の世界じゃない。わかるだろ。自己を持ったんだ。だから、お前は排除されて当然だ。 「そんな、馬鹿な。我ら〝鬼〟が、こんな人間に――敗北する、のか……！」 肉が落ちる。そして魂も崩れる。やがて、怪物は消えた。 #変態不知火さん

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……終わった。未だ煮え滾る燃料を身体に感じながら、それを確信する。 「いいえ、まだよ」 ……あぁ、そうか。 左の薬指が、光を取り戻す。蒼く、そして強く光り輝くその力。ケッコンの力。助けに来てくれた彼女達。今一度、願いを込める。愛しき者たちへ、意志を貫く力を……！ #変態不知火さん

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◆◇◆◇ #変態不知火さん

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力を失った者達を弄り、嘲笑う怪物。既に再生するような力は失われ、受けた傷は治癒しなくなった。 「どうした、それでおしまいか」 その身に骨の矢を何度も受け、剣山のようになり、トドメとばかりに巨大な骨を胴体に受け磔にされる龍鳳。 #変態不知火さん

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「あははは、あははははっ！」 脇腹は既に削られ抉られ、腸が出ていても尚戦ったビスマルクの身体を絶叫にも似た嗤いで弾き飛ばす。今度こそビスマルクは真っ二つに折れた。 「ああ、あぁぁぁぁぁ――――ッ！！」 叫びながら突撃した不知火も、また右肩から先が失われていた。 #変態不知火さん

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残る全ての力を振り絞った一撃も、怪物に止められた。 「甘いな……あの威勢は何処へ行ったのだ？ その力を失った瞬間、おしまいか。脆い。やはり〝貴様ら〟は脆い」 不知火の頭部を掴み力を込める。みしみしと音を立てて、骨も肉も脳も全てが潰れようとしていた。 #変態不知火さん

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「お前たちは叶わない。我らには敵わない。それが決定された事象。運命だ」 残った手も、力を失ってだらりとしている。不知火にはもう力も残されていない。深海棲艦だった名残のあの宝石ですら、ここでは作動しない。現実ではない、支配された世界だからか。 #変態不知火さん

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「――吠えていろ」 「ん……？」 ほんの少しだけ力を込めればその頭部が全て潰れる状況で、不知火は強く言う。 「吠えていろ、化物。お前のような者に、司令が負ける筈がない」 「ぷっ、ふはははは！」 嘲笑う。この機に及んで何を言うか。その司令とやらは既に食われている。 #変態不知火さん

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「侮るな、化物。無礼るな、怪物」 その身をズタズタにされようとも意志を失わぬ哀れな者に、怪物は告げる 「死ぬ前に言ってやろうか。お前の司令がどうなったかを」 「……っ」 「喰われたよ。私の本体に。今頃胃袋の中で消化されているだろう」 「――ッ！！」 #変態不知火さん

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「残念だったな。無礼ているのは、お前たちの方だ」 そして力を込め、砕こうとした瞬間。 「――Feuer!」 炸裂する徹甲弾が、肥大した怪物の肉体を抉り、消し飛ばしていく。 #変態不知火さん

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「――！？ ――――ッ！！？」 何が起きた。疑問符が思考を埋め尽くす。誰だ。誰が、砲撃をしたのだ。……〝砲撃〟？ 意味がわからない。〝一体何故ここで砲撃されるのだ〟？ その答えを知る前に、怪物は飛来するエンジン音とその機銃の連射音を聞いた。 #変態不知火さん

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「全艦、突撃！」 飛来するは空の支配者。複数の機銃と爆弾が怪物に着弾していく。 「――！！？」 意味が分からない。何故だ。全艦突撃？ 艦載機が飛んでいる。この支配した世界で。 残った目で、辺りを見渡す。白き世界で、蒼いオーラを揺らめかせる者。それが、三人居た。 #変態不知火さん

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「……司令」 提督の名を呼ぶのは、先ほど頭部を砕かれようとしていた者、不知火。欠けた身体は既に戻っており、さらにはその背中に背負っているのは艤装だった。 「……何……ッ！？」 「だから言ったのです。司令を無礼るな、怪物」 #変態不知火さん

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「貴様ら……何故、何故だ……――！？ 何故、だ」 最初の疑問は復活した彼女たちへ向けて。そして次の疑問は、自身の肉体へ。もう、復活していないのだ。流れる血液も破壊された筋組織も、修復を始めない。そのままだ。視界は片方が潰れている。何故、何故何故何故……！？ #変態不知火さん

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その答えは怪物の本体が死亡した事を意味するが、それを受け入れようとしない怪物。 そして、蒼き艦娘達は、最後の攻撃を繰り出す……！ #変態不知火さん

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「全砲門、Feuer!!」 放たれた徹甲弾は地面を、そして怪物を抉る。それだけで怪物はその身をほぼ砕かれたが、弾丸が着弾し立ち上る黒煙の中から艦載機たちが怪物へと突撃する！ 「第二次攻撃隊、突撃！」 数えきれぬ程の艦載機が一斉に機銃を掃射する。 #変態不知火さん

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絶叫さえあげられなくなった怪物。そして艦載機の後にやってきたのは。 「……沈め。――沈めッ！！」 怪物の上に乗り、顔面に向けて連装砲を零距離で発射する、駆逐艦不知火の姿。そして、引き金は引かれた。弾丸の限り、砲身が焼け付くまで。 「――――っ！！」 #変態不知火さん

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そして三人を苦しめた怪物は、跡形もなく全て、粉砕された。 #変態不知火さん

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これまでの #変態不知火さん 番外編『 I dedicate everything to you. 』 pic.twitter.com/w2jmb3CH4w

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怪物の胃袋の中でとある風景を見た提督。そこには不可解な建造物を発見した。……だが、その後現実に引き戻され、胃の中で徐々に殺されそうになるが、過去に陸奥の呪いを解くために陸奥と心臓を交換し、移植した心臓から〝戦艦陸奥〟の声を聞く。――そして、彼は怪物の胃から脱出。 #変態不知火さん

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艦娘の力をその身体に受け、怪物を撃ち滅ぼす提督。一方、秘書艦の三人、不知火、ビスマルク、龍鳳は捕食されてしまったが故に提督からケッコンの力を得られなくなり絶体絶命となるが、怪物を撃ち滅ぼした提督が再度力を送り、複製された怪物を完膚なきまでに撃滅したのだった。 #変態不知火さん

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「……司令ッ！」 提督の身体に巣食っていた怪物は滅んだ。再び自分自身の世界を取り戻した提督は怪物によって歪められた世界を元に戻し、無事秘書艦たちと再会出来た。そして、真っ先に提督に駆け寄りその胸に飛び込んだのは、不知火だった。 #変態不知火さん

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普段は大人しく、冷静だった不知火がここまで取り乱したのは初めてだった。それもその筈。あの怪物は提督が死んだと言い、その実ケッコンの力が途切れたのだ。頑なに信じようとはしなかったが、それでも、心には引っかかっていたのだ。強く抱きしめる不知火を、優しく撫でる。 #変態不知火さん