キュッチャニアにお狐様来る

Ｄ・Ｗ・Ｗ @dwwyakata

何でも話によると、このキュッチャニアにはキュッチャンとモモンガの化生しかいないらしい。 外貨の取得手段はあるものの、お城の他は全部山と森なのだとか。 人間がいないのでインフラなど必要ないらしい。 #キュッチャニアにお狐様来る

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「僕達の排泄物で、森のドングリはすくすく育つんですー」 濁りのない綺麗な目で言うモモンガ。 茜は返す言葉がなかった。 #キュッチャニアにお狐様来る

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「じゃあ、厠はかまわぬ。　せめて夕餉をいただけぬかな」 「はいですー」 どどんと積み上げられたもの。 生のママの。 ドングリ。 皮も剥いていない。 #キュッチャニアにお狐様来る

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「あの、ドングリ？」 「ごちそうですのだ」 「わし、肉食なのじゃが」 「ごちそうですのだ！」 さらにどどんと積み上げられるドングリ。 生のママで。皮も剥いていない。 #キュッチャニアにお狐様来る

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「せめて粉に引いて灰汁を取って練り物にして焼くとか」 「ごちそうですのだ」 さらに積み上げられるドングリ。 いかん。 目の前がくらっときた茜は。 此処にいると死ぬ事になると確信した。 #キュッチャニアにお狐様来る

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「ええーい、最後の手段じゃ！」 争い事なんてした事がない茜だけれども。二百年の修行はさぼったことがない。 光を放ってモモンガ共の目をくらませると、ドアを強行突破。 幸い、運ばれて来た経路は覚えている。 #キュッチャニアにお狐様来る

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「おきつねさまが逃げた！」 「つかまえろ！」 「つかまえろ－！」 右から左から飛び出してくるモモンガ共！ 必死に走って逃げる茜！ 途中、振り返った茜は、悲鳴を零す。 みぎもひだりもうえもしたもよこも。 全てが、モモンガの化生に埋め尽くされている！ #キュッチャニアにお狐様来る

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もじどおりこけつまろびつ逃げる茜！ 追う声はどんどん大きくなる一方！ 「おきつねさまをつかまえろおきつねさまをつかまえろおきつねさまをつかまえろおきつねさまをつかまえろおきつねさまをつかまえろ」 #キュッチャニアにお狐様来る

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城壁の上に逃れる！ そこで見てしまう！ 合体したモモンガの大群が、巨大なモモンガとなって、手を此方に伸ばしてくるのだ！ 「おきつねさまあああああああああああ」 「のぎゃああああ！」 #キュッチャニアにお狐様来る

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思わず火を放つ茜。大爆発。 しかし、無数のモモンガが吹っ飛ぶ中、その中にいるキュッチャンが、大喜び。 「もっと、もっとお！」 「のぎゃあああああ！くるなあああああ！」 #キュッチャニアにお狐様来る

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多分、捕まえるつもりだったのだろう。 巨大モモンガが降り下ろした手が、城壁の一部を爆砕！ 吹っ飛んだ茜は、空中でぐるんぐるんと回転しながら、キュッチャニア国境の川に落ちた。 #キュッチャニアにお狐様来る

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その後しばらくして。 はるか下流の川から、茜が顔を出す。 溺れた彼女を人工呼吸してくれる者だとか、飛び込んで助けてくれる者だとか、いるはずもない。 必死にもがいて泳いで、どうにか生き延びたのだ。 「げほっ！　ごほごほっ！」 水を必死に肺から出す。 #キュッチャニアにお狐様来る

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「そっかあ。　一日持たなかったかあ」 不意に、上から声が来る。 顔を上げると、野狐がいた。人間に化けているから、多分茜とそんなに実力は変わらないだろう。 「なんじゃそなたは」 「あんたこそ、よく彼処に行ったなあ。　有名なんだぞ彼処」 #キュッチャニアにお狐様来る

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仙と名乗った野狐は、グラマラスな美女に化けていた。そこだけは茜より実力が上だ。 「狐好きの国王がいるって事で、前々から何度か狐が行ったんだけどな。中には傾国の経験がある大妖弧もいた。　でも、みんなすぐに逃げて来ちまったよ」 「」 言葉もない。 #キュッチャニアにお狐様来る

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「一体彼処は何なのじゃ」 「キュッチャニアだよ。　何でも獲得外貨を全部兵器と国王のミリタリーコレクションに換えてるって変わった国でな。　昔から贅沢したい狐の間では有名だったんだが。　何しろ長続きした狐がいないんで、今じゃ狐が近寄らない国１位だ」 「」 #キュッチャニアにお狐様来る

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「困ったのう。　慎ましく祀ってくれれば、それでよかったのに。　どうやって生きていけば良いのか」 途方に暮れた茜。 騒ぎでガラケーも壊れてしまった。荷物も流されてしまったし、行く場所もない。 #キュッチャニアにお狐様来る

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「何、働き口ならあるぜ。　あたしはそもそも、あんたみたいなのを拾いに来ているんだしな」 「何だか穏やかではないのう」 「簡単に説明すると、直接入らなければ、キュッチャニアはあたし達にとっては善い国なんだよ」 #キュッチャニアにお狐様来る

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しばらく後のこと。 日本にあるキュッチャンバーガーなるお店に、茜の姿があった。 それほど強くないとはいえ、きちんと修行を積んだ妖弧。野狐よりずっと力も上。 妖怪や一部の愛好者しか入れないこのお店を管理するには、適任者だったのだ。 #キュッチャニアにお狐様来る

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「店長、今日もクローンキュッチャンが送られてきました」 「そうかそうか。　それでは帽子を被った人をはじめとして、常連にメールを送る様にな」 「はい！」 後輩の狐に指示を出す茜は、充分に店長として様になっていた。 #キュッチャニアにお狐様来る

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「側にいることは勘弁して欲しいが、そなたには世話になっているし、感謝もしているぞ。　キュッチャン」 少なくとも、茜は路頭に迷って悪事を働き、退治されることもなくなったし。 寒さの中凍えながら、襤褸を被ることもなくなった。 感謝の言葉は真実だった。 #キュッチャニアにお狐様来る

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キュッチャニアには、お狐様はこないのではない。 来るのだけれど、帰ってしまうのだ。 そして、キュッチャンの周りには、案外たくさんのお狐様がいて。ギブアンドテイクの関係が構築されているのだった。 #キュッチャニアにお狐様来る

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おしまい。 #キュッチャニアにお狐様来る

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ほーい、というわけで、此処までにございます。 とりあえずキュッチャン殿の所にお狐様は来ないという定説について、異説を唱えてみました次第です。 楽しんでいただけたのなら何よりです。

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なおキュッチャンバーガーについては、以下をご参照ください。 #キュッチャンバーガー

kyu190a4（ｻﾌﾞｷｭｯﾁｬﾝ） @kyu190a4

(ヽ´゜ω゜)ﾉ＜ｷｭｯﾁｬﾆｱ政府はこのように狐さんを捕獲しようとしたり強制的に婚姻を迫ったりトイレが無かったりドングリしか食べさせなかったりするようなことはないきゅー（外務省からの抗議 @dwwyakata