瑞鶴と翔鶴のシリアスネタまとめ

瑞翔のなんかシリアスな妄想。順次追加。
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ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

何言ってるの。声は掠れていた。動きっぱなしで水分補給もしていない。無理矢理唾を飲み込み喉を湿らせ、先程よりも強く言う。 何言ってるの、翔鶴姉。そんな事出来る訳ないでしょう。 …貴方は優しいわ、瑞鶴。とても優しい子。 私などよりずっと穏やかな口調で、翔鶴姉が言う。

2015-04-24 13:51:19
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

でも良く考えて?もうすぐ夜が来る。空母の戦う術が封じられるわ。一刻も早くこの海域から出て、鎮守府に帰還しなければならないわ。瑞鶴、まだ暗闇は怖いのでしょう?それにーー。 潮の音と翔鶴姉の声が混じる。 血を、流し過ぎたみたい。目が霞み始めたの。ね、だから、私を置いて行って。

2015-04-24 13:51:26
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

そう言われて頭が真っ白になる。そうだ、翔鶴姉は大破状態なんだ。ずっと私が肩を貸し、引っ張ってきたけれど限界に近いのだろう。良く見れば爆炎に汚れた上橙色の光に照らされ分かりにくいが、唇の色が限りなく薄い。 ね、お願い。無事鎮守府に戻ったら、救援隊と一緒に探しに来てくれれば良いのよ

2015-04-24 13:51:36
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

貴方が行方不明になった時、みんなそう判断したのよ。そして貴方は無事に戻った。私だって大丈夫よ。 詭弁だ。心中で断じる。私の時とは状況が違いすぎる。私は翔鶴姉ほど怪我は酷くなかったし、あの時は島が周りに多かった。つまり敵海域とはいえ漂着の可能性が高かったのだ。

2015-04-24 13:51:45
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

だから鎮守府もあれだけ大規模な救援隊を組織出来た。でもここは何もない大海原で。漂着すら出来ない。それに、私達を追っている深海棲艦らに攻撃される可能性が非常に高い。そんな事になれば生き残る可能性など無きに等しい。それがわからない翔鶴姉のはずがない。そこまで考えて、はたと気付いた。

2015-04-24 13:52:08
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

翔鶴姉はもとから帰る気なんかない。ここで囮になり私への追っ手を引き受けて、玉砕するつもりなのだ。私が無事に鎮守府へ帰れるように。ぎりと歯を食いしばる。問い詰めたところで、決してそうだと頷く翔鶴姉ではない。本心をひた隠し、迎えに来てというのだろう。

2015-04-24 18:52:54
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

そうして私が翔鶴姉を置いていけば、笑顔で見送るのだろう。私が、罪の意識で苛まれないように。史実(かつて)のように、その身を私に捧げるつもりだ。 翔鶴姉―― 何を言えばいいのか分からない。舌が言葉を紡がない。身の内に想いが猛るばかりだ。

2015-04-24 18:53:19
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

最善の判断をするのよ瑞鶴。私たちがいるのは戦場よ。生き残るのに一番効率のいい方法を考えて。 私が『気づいたこと』に気付いたのか。どこまでも穏やかな声で、しかし突き放すように翔鶴姉が言う。 さぁ、瑞鶴、行って。日が暮れてしまうわ。――私を、お姉ちゃんで、居させて?

2015-04-24 18:53:38
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

祈るようにつぶやかれたその言葉に、覚悟が決まった。 やだ。絶対に置いてかない。 やけに軽く響いたその言葉に、呆然とする翔鶴姉。その表情にちょっとだけすっきりする。翔鶴姉が「姉」として無償の愛を注ぐのならば。私は「妹」として最大のわがままを言わせてもらおうじゃないか。

2015-04-24 18:53:56
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

ちょ、ちょっと瑞鶴、冷静に考えなおして?生き残るにはこれが一番―― やだったらやだ。絶対にいや。何言われてもいやだもん。 あまりにも子供っぽい私の口調に開いた口がふさがらなくなっている翔鶴姉である。面白い顔だ。大体、翔鶴姉の言い分に耳を貸す気なんて毛頭ない。

2015-04-24 18:54:13
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

なんせ私は我儘で、横暴な妹だからね。にししと笑う私の顔はどうみえるだろう。 瑞鶴、私は―― ねぇ翔鶴姉。翔鶴姉は私をこの暗闇の海に、『また』一人にさせる気なの? 真剣な声で問いかける。びくりと翔鶴姉の肩が震える。『また』に込められた私の思いを汲めない翔鶴姉ではないだろう。

2015-04-24 18:54:59
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

暗闇は恐ろしい。今でも手が震えてきそうだ。しかし、それ以上に怖いものがある。 一人きりの海は、怖くて、さみしいよ。一緒に居てよ、翔鶴姉。 ぎゅうっと翔鶴姉の手のひらを握る。つないだ手はお互いに血で汚れ、ぼろぼろだ。でも愛する人の生きた体温が伝わってくる事実がとても暖かい。

2015-04-24 18:55:13
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

妹のわがまま、聞いてくれないの?ねぇ、『お姉ちゃん』? ダメ押しのように伝える。翔鶴姉は言葉に詰まったようだ。やがて諦めたように細くため息をついた。苦笑をうかべながら翔鶴姉が言う。 ……ずるいわね、瑞鶴。 翔鶴姉程じゃないと思うけどなぁ。

2015-04-24 18:55:44
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

星の光が瞬き始めた空の下で、二人で同時に吹き出した。翔鶴姉と一緒ならどんな暗闇だって怖くない。 一旦幕。

2015-04-24 18:56:09
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

客先で暇な時間があったからワードで一気に打ったった。これだけで1000文字超えてるとか書きたいパワー爆発し過ぎた反省。アイホンで直打ちするのよりやっぱり早いわ。そしてここまで来たらクライマックスまで一直線である。もう少しだけお付き合いの程を。

2015-04-24 18:56:43
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

瑞鶴は夜の海をひたすらに進み続ける。一緒に行くことに同意したものの、翔鶴はやはり限界が近い。ふらついてしまう翔鶴を瑞鶴が背負う。翔鶴が危ないとか、大丈夫よとか色々いうけど、意に介さない瑞鶴。 こっちの方が早いんだよ、早く鎮守府に戻らなきゃでしょ?

2015-04-25 23:15:54
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

そう行って進み始める。少しの間、下ろしてと言っていた翔鶴だが、やがて静かになり瑞鶴の首へ腕を回してしがみつきおとなしくなった。瑞鶴にとってその方が進みやすいし結局早くすすめると判断したのだ。ただでさえ足でまといなのに迷惑をかけてはいけないと思いながら。

2015-04-25 23:16:49
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

瑞鶴はやはり暗闇は恐ろしかった。今にも叫びだしそうになる。あの時のことを思い出しそうになる。でも決定的に違うこともある。今は、ひとりじゃない。この暗闇の中で、大切な人の腕が瑞鶴を抱きしめていてくれるという事実が恐怖を薄めていた。

2015-04-25 23:17:12
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

瑞鶴と翔鶴は真っ暗な海をひたすら進んでいく。そっと空を見てふと笑う瑞鶴。どうしたのと翔鶴が尋ねる。 あっちが北だよね、だからこっちの方角に進めばいいのね。 わかるの? 瑞鶴。星の見方が。 瑞鶴がひとつの星を指差す。

2015-04-25 23:19:54
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

あれが北極星。少し光の弱い星のやつよ。……いつか役に立つかもしれないから、鎮守府で眠れずにいた間に色んな知識を仕入れたの。本も苦手だけど一杯読んだんだから。 少しだけ誇らしげに瑞鶴が言う。 そう、えらいわね、瑞鶴。 背中から瑞鶴の頭を撫でながらも少しさみしげな翔鶴。

2015-04-25 23:20:25
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

……どうしたの翔鶴姉? 私は瑞鶴の足を引っ張ってばかりね。あの時も、今も、瑞鶴に迷惑をかけているダメなおねえちゃんだわ 違う! 突然怒ったように口を開く。 私は翔鶴姉に支えられて今ここに居るの!一人だったら、きっと、もう、私はあの島で。

2015-04-25 23:20:48
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

そこで口を閉じたものの、その後に続いたであろう言葉は翔鶴にもなんとなくわかった。前に向き直りまた進み始めた瑞鶴がぽつりという。 私は、翔鶴姉を守りたいの。今までの努力も、きっと、これからの努力も全部そのため。だから翔鶴姉がいなきゃ意味ないの。

2015-04-25 23:21:14
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

ぎゅっと翔鶴の体を支えている瑞鶴の手に力がこもる。 もう一度言うよ、翔鶴姉。一緒にいてよ。これからもずっと。約束だからね。 ――えぇ、そうね。瑞鶴。 そう返した翔鶴の目尻は滲み、潤んでいた。居てもいいのだ、と。こんなダメな自分が居なくてはならないのだと言ってくれた。

2015-04-25 23:21:31
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

ツンと熱くなる鼻をごまかすように少しだけ瑞鶴の背に体を寄せる。その背中の大きさにふと気付く。妹はいつのまにこんなに大きく育ったのだろう。それはきっと、体だけではなくて心の強さから発せられるものだった。私も負けていられない。瑞鶴はもう私が守る存在ではない。

2015-04-25 23:22:24
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

新しい私たちに、共に背中を預け会える私たちになろう。それこそが今ぶつけてくれた瑞鶴への最大の返答になるだろうから。そう決意する翔鶴の頬を一筋の水が滑り落ちたのだった。 一旦幕

2015-04-25 23:23:17
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