瑞鶴と翔鶴のシリアスネタまとめ

ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

（巻き１） 瑞鶴たちはひたすらに夜の海を進む。月明かりと星の道しるべを頼りに、真っ暗な海をいく。瑞鶴と翔鶴の間には会話はない。瑞鶴も翔鶴も口には出さないが限界が近かった。大破した翔鶴はもとより、瑞鶴もずっと翔鶴を担ぎ海を進んでいるのだから。帰るべき場所への道程を急ぐ。

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（瑞鶴視点） 通常であれば気づかなかったかもしれない。だがある種の予感がしたのだ。反射的に進行方向を急激に曲げた。雷撃の白い筋が足元をかすめる。どこからだ。慌てて左右を見渡すとそう遠くない場所に駆逐艦の影を確認した。急激に血の気が引く。全く気付かなかった。

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これだから暗闇は嫌いなのだ。夜目が効かない。ガチガチと震え始めた歯を噛み締めて、翔鶴姉を背負い直し全力で前に進む。あれは先ほどの戦艦の取り巻きだ。あれがあそこにいるということは。 瑞鶴…あれは……。 びょうびょうと耳元で鳴る風音をはさんで、翔鶴姉の呆然とした声が聞こえる。

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その声音に、氷水を背中に流し込まれた感覚を覚える。つばを飲み下す。心臓がはちきれんばかりに慟哭するが、足に全力を込めて海上を進む。 あれは…戦艦ル級。それに、取り巻きも…！ 翔鶴姉がかすれた声で私に伝える。わかっていると言うようにぐっと翔鶴姉の足を掴む手に力を込める。

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それでも私の目線はただ前のみに据えられている。ほかを見る余裕なんかない。そこに広がる暗闇を憎々しく思いながらも前を見続けるしかなかった。

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（巻き２） 瑞鶴はひたすら前に進み続ける。だが、翔鶴を背負いながら進む瑞鶴と戦艦ル級の距離は徐々に近づいていく。瑞鶴よりそう離れていないところに着弾し、水柱が上がる。もうすぐ相手の砲撃可能な距離になる。どうすればいい、このままではジリ貧だ。瑞鶴は焦り続ける。

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（続き） 瑞鶴。 翔鶴姉が呼びかけてくる。 ねぇ瑞鶴。そのままでいいの、聞いて。 なんだというのだ。また置いていけなんて言ったら張り倒してやるんだから。そんな思考をしながら返答を返す余裕もなく進む。そうして翔鶴姉は指先を前に向け、あることをつ伝えてきた。

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それは、本当にそうなのかわからない。私にとっては不確かだ。でも翔鶴姉ははっきりと分かっているようだ。翔鶴姉が微笑んだ気配がした。 私は瑞鶴と一緒に、鎮守府に返ると約束したわ。私だって、ただ茫洋としていたわけではないの。瑞鶴よりも知っていることだってあるわ。ね、信じて、瑞鶴。

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あぁ、そうまで言われてどうして無碍にすることができるのだろう。私が翔鶴姉を信じないことなどありえない。こくりとひとつ頷くと翔鶴姉の言うことを信じて、ぴたりと海上で止まった。そして翔鶴姉をそっと下ろし、後ろを振り向いた。砲撃は一時的にやんだ。

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急に立ち止まった私たちに警戒をしたのだろう。警戒心をあらわにゆっくりと戦艦ル級が近づいてくる。震える手足が今にも崩れ落ち、痙攣する喉が叫びを発しそうだ。鈍色に光る砲身の形がどんどん近づいてくる。怖い。たまらなく怖い。ガクガクと震え始めた私の手が握り締められた。

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ハッとする。そうとも。幸運の女神が共に居る。傍に寄り添ってくれている。なら、私がどうして踏ん張らない選択肢があるだろうか。ひとつ大きく息を付くと、一つの矢を取り出しキリリと弓を引き絞る。戦艦ル級の顔が、楽しそうに、凄絶に歪む。空母の身で何を。そう言いたいのだろうか。

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あぁ、そうとも私は空母。五航戦、瑞鶴。又の名を。 幸運艦って言うのよ。――賭けは、私達の勝ちね。 私の背後で、しらみ始めていた水平線。朝日が戦艦ル級の姿をはっきりと浮かび上がらせる。そう、待っていたのだ、この時を。ずっとずっと。幸運の女神と一緒に。

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暁の光の中で、矢を放つ。爆音とともに艦載機が空を舞う。 夜はもう終わりだ。

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◆ 静かな波音が響く中、遠くの水平線に建物の姿が見える。白い光で照らされるその姿に、私の心は沸き立った。戻ったら翔鶴姉を一番にドックに入れてあげよう。そして補給をしたら先輩達にお礼と謝罪を言わなきゃ。

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提督にも報告しなければならないだろう。あぁ、やることが一杯ある。それに、それに―――。 ねぇ、翔鶴姉、あのさ、鎮守府に戻ったら翔鶴姉に言いたいことがあるんだ。 なにかしら、今ではダメなの？ う～ん、もう少しちゃんとした格好で言いたいかな。

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変なことにこだわるのね。……いいわ、待ってる。 うん、待ってて、ちゃんと言うからさ。 真っ直ぐにぶつけるよ。受け止めてくれるといいな。私の思いを、ね。 ―完―

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長すぎて自分でも訳ワカメ状態のｼﾘｱｽ妄想。これにて完結と相成ります。ここまでお付き合いくださった皆さんありがとうございました。ほかにも色々くっつけたいネタはありますが、一旦お開き。どっとはらい。

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補足事項がないと意味わからんちんって思ったので、いくつか。①翔鶴は瑞鶴の事が心配で瑞鶴が寝てから寝て、起きる前に起きてって生活をしていたので、朝日の昇る時間がおおよそわかってた。凄いね翔鶴姉。

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②瑞鶴と戦艦ル級との戦闘シーンは全カットでしたが、戦艦ル級も大分体力が削れてました。飛龍・蒼龍ｺﾝﾋﾞが攻撃してたためです。鬼ごっこで翔鶴を背負った瑞鶴が長い間逃げていられたのも、ある程度のﾀﾞﾒｰｼﾞが敵方にあったせい。

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③瑞鶴の暗闇恐怖症はまだ克服には至ってません。最後の時点でも。ふとした拍子にまたフラッシュバックする可能性もあるけれど、今回それが防げたのは一にも二にも翔鶴が常にそばにいたからってことで。