オカルト探偵あきつ丸 -桜花ノ理-

竹村京さん(@kyou_takemura)の書いてくださった、落ちぬい二次のオカルト探偵あきつ丸シリーズです。 今回は晴にふさわしき桜の下の怪異のお話。 ぜひお楽しみください。 続きを読む
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竹村京 @kyou_takemura

20機ばかりいるだろうか。しかし、そのほとんどが何らかの損傷を受けているようで、黒煙を噴き出しているものもある。 「手負い蛇というやつでありますな」#落ちぬい二次

2015-03-31 01:58:06
竹村京 @kyou_takemura

桃山人夜話に『蛇を半殺して捨置しかば、其夜来りて仇をなさん』とある怪異である。無論この怪異そのものではない。完全に仕留めきれなかった敵艦載機が仇をなすことを例えただけだ。#落ちぬい二次

2015-03-31 01:59:35
竹村京 @kyou_takemura

実は、一週間ばかり前にこの鎮守府の主力艦隊が出払っている隙を狙い澄ましたかのように近海に深海棲艦が現れたことがある。それらは留守番艦隊や空軍、陸軍が持ちこたえている間に帰ってきた主力の艦娘によって撃退されたのだが、討ち漏らしがあった。#落ちぬい二次

2015-03-31 02:01:19
竹村京 @kyou_takemura

それがこの艦載機群である。 帰還の望みがなくなったこれら艦載機は、手負いながらせめて人間に一矢報いんと夜に乗じて人を襲っていたのである。 「放っておけば散る命でありますが、これも仕事であります」#落ちぬい二次

2015-03-31 02:02:52
竹村京 @kyou_takemura

あきつ丸は烈風を放ち、手負いの敵艦載機を次々と撃墜していく。 もとより損傷しており、しかも母艦へ旗艦もできず川に潜んでいただけの状態である。あきつ丸の言った通り、数日もすれば機能停止してしまう。#落ちぬい二次

2015-03-31 02:05:17
竹村京 @kyou_takemura

どうせ死が見えているのだから、殺すことはない。 花は散るのが美しいのであって、散らせるものではない。 「とはいえ、命令には逆らえないのが公僕の辛いところでありますな」#落ちぬい二次

2015-03-31 02:06:56
竹村京 @kyou_takemura

淡々と攻撃を続ける。敵艦載機が放つロケット弾はまともに狙えず、あきつ丸の姿を闇に浮かび上がらせるだけだ。爆風が桜の枝を揺らし、炎の色の花弁が吹き散らされる。 「されど今 狂い咲きの桜の下では 泡沫の紡糸」 悼むように歌う。#落ちぬい二次

2015-03-31 02:08:18
竹村京 @kyou_takemura

最後の一機がロケット弾を抱えたまま、火を噴きながらあきつ丸に突っ込む。 15.5cm三連装副砲を構え、 「夢の淵で佇むあの日の 運命られた理……」#落ちぬい二次

2015-03-31 02:09:52
竹村京 @kyou_takemura

歌が終わると同時に引き金を絞る。真正面から砲弾を撃ち込まれた敵艦載機は火の玉となって散った。 穏やかに流れる川は桜と月と敵艦載機の残骸を、ゆらゆらと、静かな海へと運んでいくのだった。#落ちぬい二次

2015-03-31 02:11:40
竹村京 @kyou_takemura

しばらくそれを見てから、ふと目を川の上流に向ける。 「まあ、本当にどうにかしないといけないのはこっちでありますが」 川の中に何やら長いものが漂っているのが見える。よくよく目を凝らせば、蛇の尻尾のようだった。#落ちぬい二次

2015-03-31 02:13:32
竹村京 @kyou_takemura

「濡れ女でありますなあ……面倒であります」 言葉こそやる気がなさそうではあるが、その目には先程までの悲しそうな陰はもう無かった。#落ちぬい二次

2015-03-31 02:15:22

あとがき

竹村京 @kyou_takemura

帰り道で桜を見て、ああ花見ネタいいなって思いつきで一気に書き上げた代物でした。お蔭でだいぶ短くまとまりまして。ちなみに作中であきつ丸が歌っていたのは陰陽座の「桜花ノ理」。激しくも哀しい名曲です #落ちぬい

2015-03-31 02:20:37
竹村京 @kyou_takemura

書いてみて邪魔だったで省いてしまいましたが、濡れ女は「画図百鬼夜行」や「化物づくし」にある三町もの長い尻尾を持つ恐ろしい女の妖怪です。民間伝承の赤子を抱いてほしい、ってやつじゃないです。あきつ丸的には手負いを狩るより正真正銘の化け物を退治する方が気が楽、ということで #落ちぬい

2015-03-31 19:05:58