オカルト探偵あきつ丸 -湖水の怪-
はじめに
#落ちぬい二次 、始まります。本作は #不知火に落ち度はない 及び #人造人間あきつ丸 の二次創作であり、オフィシャルではありません。感想、指摘などは #落ちぬい タグまでお願いします
2015-02-17 22:16:56本編
山奥のとあるローカル線の駅前であきつ丸と憲兵中尉の大月は向かい合っていた。 ここはあきつ丸が普段勤務している鎮守府から新幹線で1時間、在来線に乗り換えて1時間ほどの所だ。あきつ丸は鉄路を使い、大月は陸軍駐屯地から借り出した自動車で合流している。#落ちぬい二次
2015-02-17 22:19:03「よくある話であります」 その地域に住む者が行方知れずになったり、旅行の途中にこの地域で消息を絶ったり、というのがこの数か月で都合十数件。それを怪しんだ大本営から憲兵に調査が命じられたのだ。#落ちぬい二次
2015-02-17 22:21:09「ですが、我々に命令が来るという事は大方、そういう事なんでしょう」 「面倒であります」 「これが仕事でしょう」 邪教だの反社会的組織だの、そういう怪しげな集団に対する手入れが大月たちの主な仕事である。#落ちぬい二次
2015-02-17 22:23:41「鎮守府にいれば日がな一日炬燵で蜜柑を食っているだけで給料が出るでありますよ?」 あのイルカ提督はチョロいであります、と。 「いや、それはどうかと」#落ちぬい二次
2015-02-17 22:26:39任務の概要を読み合わせていると、大月のポケットから着信音が鳴る。 「史料を当たらせていた部下からです」 「何かわかったでありますか」 無言で頷いて電話に出る。 「そうか、ではコピーを送る様に。追って指示する」#落ちぬい二次
2015-02-17 22:28:19大月は電話を切るとタブレットに送られてきた画像を開く。市立図書館に収蔵されている郷土史料のコピーだった。 それは土着信仰を扱った文献で、この地方の古くからある寺社の本尊や祭神について詳細が記述されていた。#落ちぬい二次
2015-02-17 22:30:42「お、これでありますか」 「のようですね。沼気(ぬけ)神社。あからさまに怪しい」 あきつ丸が指さしたのは湖のそばにあるといわれる古い神社の項だ。#落ちぬい二次
2015-02-17 22:33:08その神社の祭神は不明。神社というのは明治の廃仏毀釈の中で体系化され、土着神やマイナーな神からより権威のある有名な神に鞍替えした所が多いだけに祭神が不明というのは珍しい。 ただし、神体はある。 得体の知れない何かのミイラだそうだ。#落ちぬい二次
2015-02-17 22:34:41「自分、人魚のミイラを見たことがあるであります」 「上が猿で下が鮭のやつでしたか。あれはなかなか、そういうものだと思ってみれば立派でしたな」 二人は何が面白いのかくっくっと笑い合う。#落ちぬい二次
2015-02-17 22:36:54「他の所は普通だそうですから大方ここでしょうな。引き続き調べさせましょう」 大月は部下に電話をしてその沼気神社についてより深く文献を当たるよう命じた。 「では自分はここらで」 言うとあきつ丸はなぜか待たせていたタクシーに向かう。#落ちぬい二次
2015-02-17 22:39:17「どこへ行くつもりですか、あきつ丸どの」 「もう昼でありましょう?」 「昼ですな」 「ここらには店はない」 「ありませんな」 無人駅に毛が生えた程度の寂れた駅前である。 「だから食いに行くであります」#落ちぬい二次
2015-02-17 22:40:50「そう言うと思っていましたよ」 大月はがっしりとあきつ丸の腕を掴むと運転手に手を振り、申し訳なさを演出した顔で頭を下げる。運転手は無駄な時間を取られたとばかりに嫌な顔をしてさっさと行ってしまった。#落ちぬい二次
2015-02-17 22:43:04「さっきコンビニで買いこんでおきました。足りなければパック飯もあります」 乗ってきた車の後部席を指す。 「コンビニ飯などいやであります。田舎町の寂れた食堂の方がましであります」 しかしあきつ丸は口を尖らせて子供のように駄々をこねる。#落ちぬい二次
2015-02-17 22:44:46「まったくあきつ丸どのの奔放さには手を焼かされます。それはあきつ丸の艦娘の特徴なんですか?」 艤装に用いる船魂もカミである以上、分霊はできる。なので理論上は艦娘の量産は可能である。#落ちぬい二次
2015-02-17 22:46:39だがコストや運用の面から、同じフネの艦娘が複数いるのはほとんどが戦艦をはじめとする少数の主力艦に限られる。そも艤装だけあっても適合者がいなければ無用の長物なのだ。加えてごく初期の艤装はそれ自体がロストテクノロジー化しているため、艤装そのものの複製さえ出来ない。#落ちぬい二次
2015-02-17 22:48:18「大月は自分ではなく他のあきつ丸に乗りかえるつもりでありますか?」 「あっ、いや!決してそんなつもりでは!」 「あの夜、一生添い遂げると誓ったのは嘘でありましたか……」 俯いて肩を震わす。大月は慌ててその手を取って弁明する。#落ちぬい二次
2015-02-17 22:50:41「違います!あの言葉に嘘偽りなど、断じて!」 「では未来の妻の頼みは聞くものであります」 「それとこれとは別です」#落ちぬい二次
2015-02-17 22:52:22けろっとした顔でずけずけと言い放つあきつ丸の要求をノータイムで拒否する。大月は大分あきつ丸の扱いに慣れているようだった。 「ちっ」#落ちぬい二次
2015-02-17 22:54:19ちなみに、あきつ丸自身、他にあきつ丸の艦娘がいるとは聞いたことがない。加えて言えば艦娘になる前からこういう図々しい性格だったのは間違いない。#落ちぬい二次
2015-02-17 22:55:59あきつ丸は後部席からビニール袋を引っ張り出すとそれを抱きかかえて助手席に収まる。大月はナビを沼気神社にセットすると車を出した。 「沼気神社……ああ、すぐそばにそれなりに広い湖がありますな。沼の神を祀ったとか、そういうのでしょうか」#落ちぬい二次
2015-02-17 22:57:36「ミイラは沼の主でありますか。だとすれば大方、でかいナマズあたりでありますな」 上の空で言いながらあきつ丸はビニール袋を漁ってさっそく食い始める。コンビニ飯は嫌だと言っていたくせに、腹に詰め込むスピードはかなりのものだ。#落ちぬい二次
2015-02-17 22:59:58「あきつ丸どの、自分にもおにぎりを一つ」 大月が左手を出して言うが、あきつ丸はにべもない。 「もう食ってしまったであります」 むぐむぐと口を動かしながら。#落ちぬい二次
2015-02-17 23:01:35