#完全ノープラン艦これ与太話 【イン・ザ・ファイナル・デイ・オブ・オミナント】１２２５０３５５【コール・ザット・アボミナブル・ネーム】#1～#2

春魔解丼 @vespiking

●●●●●●●●●●●● #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

#完全ノープラン艦これ与太話 【イン・ザ・ファイナル・デイ・オブ・オミナント】１２２５０３５５【コール・ザット・アボミナブル・ネーム】#1 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

――１年前。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

技術交流でヨコスカアーセナルに勤務していた航巡筑摩はその日、オミナント空輸開発の新航空発動機の試験飛行に立ち会っていた。後の霊的発動機OR99『アマテラス』の偽装モックアップとも言うべきその発動機の正体を、彼女はまだ知らない。試験飛行は滞りなく完了した。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

そもそもトップレベルの軍機にあたる部分の多い件の試験飛行において、筑摩へ共有される情報は少なく、筑摩の招かれた理由は派遣技術者への民間製品の披露、ないし何らかの勢力闘争における形式的な意味合いが強かった。事実、その日の記憶はある一点を除き、彼女の頭にはさほど無い。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

筑摩が最も記憶しているのは、その日出逢った1隻の艦娘である。彼女はどうやら別件で同じくヨコスカへ訪れていたオミナントの艦艇であるらしく、彼女の属する集団はアマテラス試験飛行とは別働隊といった様子であった。故に筑摩と彼女が出逢ったのは、偶然だ。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

試験飛行に備え、資料室で探し物をしていた筑摩が目にした彼女は、有象無象のオミナント艦娘とは異質な、ある種の原初的な妖しさを纏っていた。資料室の奥で佇む彼女を目にした筑摩ははたと手を止め、思わず息を呑んだ。彼女は優しく微笑み返した。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

彼女はすうと立ち上がり、筑摩の探す資料の概要について澄んだ声で二、三の質問をし、白く美しい手を書棚にいくらか這わせ、目当ての資料バインダーをするりと棚から引き出した。アーセナルの関係者だろうか？否。ここに来て暫く経つが、彼女を見たのは初めてだった。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

資料を探し、手に取り、手渡されるまでの一連の所作を、筑摩は吸い込まれるように見ていた。動力部が加熱し、息が荒くなるのを感じた。一挙手一投足があまりに美しく、ほんの数秒の動きが、未だ録画映像のように鮮明に、瞳に焼き付いていた。「ド、ドーモ」「いえ、大丈夫です」 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

その日以来一度も逢う事叶わなかった彼女の素性を筑摩が知り得たのは、その数ヵ月後。もとの鎮守府に戻った後、前工廠管理室長、伊58から得た情報だ。――自我研修済の商用慰安艦娘、そのプロトタイプにしてオミナント・アドミニストレイターの一角。戦艦榛名、レデンハート。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

筑摩の執念とも言える、彼女の追跡が始まった。大本営直下、プロジェクト・サタンへの参入。それもまた足掛りに過ぎぬ。この地位を、オミナントとのパイプを維持する為ならば、誰であろうと蹴落とす。どのような非道にも従う。ただ1隻の慰安用戦艦を、オミナントから奪い取るまで。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

そして今日、１２月２５日。彼女の静かなる戦いが最終局面に到達した。時間が無い。最早、形振りなど構っておられぬ。何であろうと利用する。誰にも邪魔はさせない。必ず、榛名を救い出す。必ず、あのロケット発射を、止める。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－ #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

旧世紀のミサイルサイロと併設の軍事要塞を改造したロケット発射基地は、さながら暗黒の魔城めいた威容を湛えていた。軍事要塞跡の規模はネオヨコスカ近郊でも有数であり、用途を鑑みれば些か過大ですらある。だが、死の商人たる双頭の魔王が君臨せし玉座とするのならば、寧ろ過小か。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

入り込む異物は羽虫一匹すらも五分の魂魄ごと砕き殺す超厳戒態勢が敷かれた大要塞の頂に、双頭三脚の悪魔、原子力空母キョウリョク・カンケイは居た。腰でシャム双生児めいてサイバネ結合され、特殊構造の白衣を纏い、両手で台形を作る長髪の右半身キョウリョクは苛立ちを隠せない。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

「……先の報告は間違いないか。アンバランサー＝サン！」『ええ。聖なるゼロ戦を運搬中だったケムトレイル＝サンは件のテロリスト、ブラックフェザー＝サンの手にかかり、名誉の殉職を遂げられました。先に殉職されたスウィートポイズン＝サンと合わせ、2隻目の犠牲者です』 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

通信機の対岸から、飄々と平易な声が届く。それが尚一層キョウリョクの神経を逆撫でした。「……それで、ゼロはどうなった！ブラックフェザーの行方は！？」『ええ、ハイ。コーズニフェクト＝サンの助力もあり、ゼロは確保しました。ブラックフェザー＝サンとは、目下交戦中』 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

「奴の様相はどうだ」『消耗戦ですね。私の最も得意とする所。ですが、流石にミルグラム＝サンを殺めた相手。気を抜く訳にも行きませんので、生け捕りは期待しないで戴きたく存じます。一片の躊躇もなく全力で殺害せしめ、その後ゼロの輸送をば』「……果報を期待している」 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

「香取が落ち、マイヅル方面のパワーバランスが崩れた。好機となるか、危機となるかの瀬戸際。……『深雪』を喚び、大陸に至るのは、我々だ」『ええ、善処しますわ』アンバランサー、軽巡由良との通信を切り、キョウリョクは通信機を台座に叩き付けた。「おのれ！」「アイエエエ！」 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

眼鏡をかけた俯きがちな左半身、カンケイがびくつく。「……どこまでも、我々の邪魔をする……！ブラックフェザー！必ず殺す……！」キョウリョクはカンケイに構わず、内線を繋いだ。「レデンハートの準備は良いか」『ハイ！滞りなく！』担当妖精が怯えながら答える。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

「プロジェクト・サタンは我々の助力となりうる。必ず成功させろ。だが隙は見せるな。レデンハートが核となる以上、ヤルダバオートを掌握するのは我々だ。大本営は利用すべき駒だが、敵であると想定して動け。オミナントの社章を持たぬ者は全て敵だ！」『アイエエエ！わかりました！』 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

カンケイはひどく怯えた様子で、自身のニューロンネットワークを脊髄中枢から切断。ローカルネットワークに精神を閉じ篭めた。キョウリョクの思念からの逃避だ。彼女は忌々しげに妹の顔を睨み、すぐにUNIX画面へと視線を戻し、時々刻々と変動する情報を多角的に監視した。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

010110101101010101010010101 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

キョウリョクから隔絶されたカンケイのローカルコトダマ空間で、彼女は独自のIPアドレスを用いて社内VPNへと接続。ただ唯一の、己の腹心へと通信を繋いだ。 #KZNPLN

春魔解丼 @vespiking

「ドーモ、コーズニフェクト＝サン。カンケイです。ケムトレイルの始末、ご苦労様でした。基地へ一度戻ってください。……アンバランサーも、ブラックフェザーも、どちらも厄介ですから。潰し合わせ、生き残った方を迎撃する。先にレデンハートを殺します。宜しくお願いします」 #KZNPLN