ユルスナール引用集

いやしの本棚@文フリ京都1/14 @ayagonmail

ユルスナールの『火』は、まるで割れた硝子の破片をごく細いワイヤーで繋ぎ合わせてグラスのかたちに復元した、ピーター・アイビーのオブジェのように、美しさと苦悩がユルスナールの筆先で、信じられない繊細さで拮抗している。そのバランスは危ういように見えて、毅い。

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彼等の二つの孤独はまさに接吻しあう二つの唇のようにむすびつく。 ―ユルスナール 多田智満子 訳『火』より 写真：George Seeley「The Burning of Rome」 pic.twitter.com/Wyn50zhhhK

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ユルスナール「姉アンナ…」を読み、もうすっかり彼女の作品世界に魅了され、ぜひ『アレクシス』も読んでみようと注文。先刻ふと『ユルスナールの靴』を手にとると、須賀敦子が『アレクシス』や『火』について、深く丁寧に洞察していた。確かにそれを読んだはずだったのに、まるで忘れていた事に驚く。

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「所有するとは識ると同じことだ」―ユルスナール『火』より。積ん読について心が痛むときは、この言葉を拠りどころにしよう。…まったく文脈違うけど。

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彼等が手をさし出せば、それら魅惑的な乞食の貪慾さは神々の悪徳なのだった。 #1ふぁぼごとに部屋にある本の106ページ3行目を晒す

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追憶の潮流は夜の放心を横切って執拗にながれ、私を一種の死海へとつれて行く。眼瞼の分泌物のように塩で飽和したこの水の中に沈むすべはない。私は漂う、瀝青にうかぶミイラのように ―ユルスナール 多田智満子 訳『火』より pic.twitter.com/zTQSjM5V8t

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怖れることはなにもない。私はどん底に触れた。あなたの心よりも低くは墜ちようがない。 ―ユルスナール 多田智満子 訳『火』より 写真：Aela Labbe ”Jeanne” pic.twitter.com/T4GNZZ7G9l

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ユルスナール『アレクシス―あるいは空しい戦いについて』白水社版、『とどめの一撃』岩波文庫版が届く。須賀敦子『ユルスナールの靴』は、河出文庫の全集で読んだけど忘却の彼方。全集カバーのルイジ・ギッリの写真に惹かれるあまり写真集も買った。 pic.twitter.com/j9Y8Udgcpp

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【アレクシスあるいは空しい戦いについて (1981年)/ユルスナール】ユルスナールの、最初に発表された小説。同性愛、官能の問題をテーマとしている…らしいのだけれど、それはつまり肉体と魂の相克、異端、疎... →bookmeter.com/cmt/47078591 #bookmeter

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そして死は、もしかしたら魂の出産にすぎないのかもしれない。 ユルスナール『アレクシス』より。この一文、皆川博子「水の琴」の中の言葉を思い出させた。「死者が、卵生なのよ。つまり、あなたは、卵の中。卵が割れたとき、生まれる。それを、あなたたちは死と呼ぶのよ」

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夢は希望ではないのだ。夢みるだけで人は満足する。それが不可能に思える時には、なおいっそう甘美にさえ感じられる。というのもそんな時には、いつかある日その夢を実際に生きることになるかもしれぬという不安がないからだ。 ―ユルスナール『アレクシス―あるいは空しい戦いについて』より

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人よりも余計に苦しむ時、自分が人より秀れていると考えないのは難しい。そして、幸せな人々を眺めていると、幸福というものに吐き気を覚える。 ―ユルスナール『アレクシス―あるいは空しい戦いについて』より

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人は、クリスタルに閉じこめられたかのように、孤独のなかでもがく。 ―ユルスナール『アレクシス―あるいは空しい戦いについて』より

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生はわたしたちの唯一の宝であり、唯一の呪いなのだ。 ―ユルスナール『アレクシス―あるいは空しい戦いについて』より

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いっさいの沈黙は、口に出して言われなかった言葉から成っている。 ―ユルスナール『アレクシス―あるいは空しい戦いについて』より

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「女性の生活ほど秘密に満ちたものはない」―ユルスナール『アレクシス』序文より。白蓮『踏絵』は高く評価された歌集だと思うけれど、赤裸々な心情を詠った彼女の歌より、やはり奥ゆかしさの中に激情が仄見える、片山廣子『翡翠』のほうが好きだ。言葉の狭間に、秘した情念の香がたちのぼるよう。

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ユルスナール『アレクシス―あるいは空しい戦いについて』、読み始めたら面白い。面白いよこれは。「私の少年時代は、あげて大きな不安の縁の、大きな静けさだったように思われる。そしてその大きな不安というのは人生全体にほかならなかった」

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【青の物語/マルグリット ユルスナール】『東方綺譚』に眩惑させられ、どことなく通ずる気のする表題作を読んでみたくて買ったのだけど、やはり、かなり好みの小品だった。筋と言えるほどのものはなく、散文詩のよ... →bookmeter.com/cmt/46895961 #bookmeter

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月はのぼったと思うとすぐに、墓地に並んだ円錐形の墓の上をあたかも女の吸血鬼のようにさまよいはじめた。空はセイレーンの尾のように青い。 ―ユルスナール「青の物語」より 絵：Gaston Hoffmann「Sirene」 pic.twitter.com/85d7nm3Bi0

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地下の中央部には、水のとても澄んだ湖があった。イタリアの商人が深さを測ろうと硬貨を投げると、その落ちてゆく音は聞こえず、水の表面に沸き立つような泡が立った。まるで不意に目覚めたセイレーンが、青い肺を満たしていた空気をすっかり吐き出したようだった。 ―ユルスナール「青の物語」より

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勢いでユルスナール『青の物語』を買った。表題作を読んだのだけど、かなり好みの小品。筋と言えるほどのものはなく、散文詩のような。何となく、山尾悠子の短篇を思い出させる部分もあった。「女たちの宮殿」での描写など。著者は赤や白の物語も書こうとしていたという。ぜひとも書いてほしかった。

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その男たちはやっと自分の肉体から意識を引き剝し、幸福は肉体の内奥にはないということを、今不意に理解したのだ。 ―ユルスナール「初めての夜」より

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あなたに逢うと、すべてが澄みきってくる。私は苦しむことを受け容れる。 ―ユルスナール 多田智満子 訳『火』より 写真：Victoria Audouard pic.twitter.com/AUPyhIlHJv

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恋人よ、私の非情な偶像よ、私の方にさしのべるあなたの腕は翼の骨組みをもっている。 ―ユルスナール 多田智満子 訳『火』より 写真：Laura Makabresku「Self portrait with death」 pic.twitter.com/gO7Ks9G5b8

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唯一の栄誉は役に立たないことだ。私を好きなものにしてごらんなさい。映写幕だろうと、良導体の金属だろうと。 ユルスナール 多田智満子 訳『火』より 写真：Edward Weston,Portrait of Ruth St.Denis pic.twitter.com/k1p1gPprot

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