浜風、恋に悩む

竹村京 @kyou_takemura

「えっと、昨日の事なんですけど」 北原士長が切り出したのはやっぱりその件だった。というか、今の私と北原士長の間でそれ以外の話題が出たらそっちの方にびっくりする。#落ちぬい二次

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「実は昨日言ったことにちょっと嘘というか間違いというかが……」 いけない。ぶんぶん音がしそうなくらい大急ぎで言いたいことをまとめようとして、焦って口を開いてしまった。 けれど北原士長は私とは対照的に落ち着いていた。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「わかってますよ。兵頭大佐が好きなんですよね」 「な、なんで知ってるんです！？」 ずばっと指摘されて慌ててしまったけど、提督の愛人なんていう不名誉な噂が流れているのだった。でも北原士長はそのことを言っているのではなかった。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「好きな人が誰を好きかくらいわかりますって」 「それじゃ、やっぱり昨日言ったことが嘘だって……」 「や、大丈夫です。浜風さんのそういうちょっと不器用なところも好きですから」 「不器用って、随分はっきり言ってくれますね……」#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

私の抗議をさらっとスルーして、北原士長は一言ずつ噛み締めるように口にした。 「それで、一晩考えたんです。俺、この任期が終わったら辞めるつもりだったんですけど、やっぱり昇任試験を受けることにしました」#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

北原士長が語るのは一晩で変わってしまった彼の人生設計だ。その重要な決断の切っ掛けになってしまった事に少なからず責任を感じた。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「もともと入隊したのはちょっと金を貯めてでかいバイクでも買おうかなって軽い気持ちだったんです。でもそれって胸を張って言えるのかなって考えて」 決意するように少し間を置いて、続ける。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「で、決めました。まずは曹になって、それから尉官にも、いずれ佐官にだってなりますよ。そんでいつか浜風さんが惚れるくらいいい男になって、改めて告ります。その時になったら、もう一回考えてください」#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

私の目を真っ直ぐに見つめて語る北原士長に、私はどう答えていいのかわからない。たぶん、YESでもないし、NOでもないんだと思う。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「ま、その時に浜風さんが兵頭大佐とくっついてなければですけどね」 北原さんが、真面目な顔を崩してにっと笑う。 「浜風さんが兵頭大佐を落とすのが先か、俺が浜風さんが惚れちゃうほどの男になるのが先か、競争です！」 笑顔と勢いにつられて私も頬が緩んだ。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「競争とはちょっと違う気がしますが、そうですね、その挑戦、受けました」 北原さんは意外とノリ重視の性格みたいだ。こういう勢いがある人は、谷風みたいで話していて楽しい。もしかすると、もしかしちゃうかもしれませんよ、兵頭さん。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「ちなみに、なんですが。何で私の事を？」 実はずっと気になっていたのだ。私は人付き合いが得意ではないし、口下手でぶっきらぼうな性格だと思う。たぶん私が男の人だったとしたら、浜風という女をあまり魅力的とは思わないんじゃないだろうか。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

昨日はちょっとだけしか聞けなかったので、この機会に訊いてしまおう。 「あー。そうですね……」 北原さんはこめかみに指を当ててちょっと考え込んだ。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「最初は真面目で凄い艦娘さんだなとしか思ってなかったんですよ。でもたまに買い物袋ぶらさげて帰って来るのを見て食堂があるのに何でこんなに買い物するんだろって思ったんです」 むむ。改めて言われると三食タダで食べられる基地でわざわざ自炊するのは変かもしれない。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「それで気になり始めて、冬の初めに炬燵布団を背負って来たことあったじゃないですか。あれを見てすっごい笑ったんですけど、その時です。浜風さんが好きだって自覚したの」 「あの時笑ってたの、北原さんだったんですか！？」#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

配送料をけちらずに届けてもらえばよかったのだけど、それはそれとしてああも派手に大笑いされたのはかなり恥ずかしかったのだ。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「艦娘じゃなくって、浜風さんはちょっと変わった普通の女の子なんだって思えてなんか嬉しかったんですよ。まあ今でも思い出し笑いできますけど」 言って本当に思い出し笑いをしたらしく、北原さんはちょっと吹き出した。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「もう、北原さんなんて嫌いです！」 「えっ！？」 「あっ、いえ、嫌いじゃないですけど！」 「じゃ好きですか？」 「す……ってそういう好きとか嫌いじゃないです！からかわないでください！」#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

朝から騒がしくなってしまったけれど、うん。悩みが消えて、新しい友人ができた。 今日はとても良い日だ。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

おしまい #落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

ご存知の通り浜風が大好きで、レベル99にしたはいいものの単にレベルキャップ突破のためだけにケッコンカッコカリにはどうしても踏み切れず、その気持ちの整理をつけるために書かせていただきました #落ちぬい

竹村京 @kyou_takemura

落ちつけ………… 心を平静にして考えるんだ…こんな時どうするか…… 落ちつくんだ…「カルピス牛乳」を飲んで落ちつくんだ… 「カルピス牛乳」は浜風が愛する至高の飲み物……わたしに勇気を与えてくれる #落ちぬい