二日目、逢魔時 - 今様に落つる怪奇譚

2015/04/11から2015/04/14までの、人間とあやかしの語らいの様子です。
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蓮田 颯丞 @hasterMissing

きっと細かな違いはあるのだろうが、それは最早別次元などとは呼べない。 理解しようと思えばできる程の、些細な違いでしかない。 ――それを、夕奈は初めて知る。 彼女が怖いと思っていたもの。その究極系であったあやかしの女は、共に雲の形を、星の事を語れる相手だった。それだけのこと。

2015-04-13 01:15:11
蓮田 颯丞 @hasterMissing

「……ええと。…お名前、ごめんなさい。水藤さん…でしたよね?」 昼間、誰かが言っていた様な気がする。 「今様って…どんなひとなんですか? ……あ、いや。人じゃ、ありませんけど」 意を決して、という程の覚悟も決めないまま。 けれど少しドキドキしながら、夕奈は尋ねた。

2015-04-13 01:16:33
白堀之水藤 @sirafji

尋ねられた言葉はなんだ、そんな事かと。 それを聞くためにあれ程ちらちらと悩んでいたなんて…いや、彼女も彼女なりに葛藤はあるのだと納得して無駄な一言は言わない。 「今様…というのは、一言で言えばあたしらあやかしの長。この日本だけじゃない、世界に生きる怪奇や何やら全ての長だ」

2015-04-13 02:22:37
白堀之水藤 @sirafji

日本のあやかしである…つまり妖怪の長は誰しも一度は耳にしたことがあるであろう、かの有名なぬらりひょん。夜行の先頭を歩む者。 …それすらを凌ぐ存在。日本では高位だの威張ることが出来る己からしても遠い存在。 どんな性格だとか見た目だとか、そういう事ですらない、存在。

2015-04-13 02:24:05
白堀之水藤 @sirafji

「何というのかな…一種の概念みたいなものだ。 …あやかしは何か、というのは昨日話したな? あやかしは人間達の希望や願い、畏れといった思いから生まれたもの。 今様は…その畏れそのものだ」 己等は畏れといった思いから生まれたもの。 今様はその畏れ自身。

2015-04-13 02:24:35
白堀之水藤 @sirafji

似てるようで遠く異なるそれ。 己等は所詮思いの一つ一つが形になったもの。 原初でもあり概念でもある今様はその根本的な理論、意識、原因、核。 「災厄でもあり、影そのもの。光あれば影は出来るし、光なくとも影はある。…その意味は分かるか?」 ただ語るように彼女へ顔を向けて微笑む。

2015-04-13 02:24:57
蓮田 颯丞 @hasterMissing

途方もない事を語る水藤に気圧されず、けれど何とも言えない顔をして固まった。 問い掛けられても沈黙し、眉間には皺が寄る。 そうしてしばらくすれば、首を横に振って。 「……あんまり、わかりません。光があれば影は見えるだけで、生まれるわけじゃないって事ですか?」

2015-04-13 02:52:42
白堀之水藤 @sirafji

首を振る様を見ても溜め息をつくわけでも叱ることなんてなく…それどころか、笑みを零す。 「…そうだな、光は世界だとしよう。人々は世界の色々な事柄に照らされ様々な思いを持つ。そうして生まれた思いを影としよう」 コツコツと床を叩く。そこにあるのは星光によって生み出された己等の影。

2015-04-13 04:01:39
白堀之水藤 @sirafji

「光が強くなるほど影は強く濃くなる。世界の事柄が大きくなるにつれて抱えるものも大きくなる。例えば『今晩の食事』という事柄に対する思いは『メニュー』とか『楽しみ』とかまぁ微々たるものだ。けれど『世界規模の食料不足状態の食事』となると思考が…深刻さというか、そういった重みが強くなる」

2015-04-13 04:02:09
白堀之水藤 @sirafji

「あやかしはそうやって影が強く濃くなり具現化したもの…人の思いが強くなったものだ。けれど今様は影そのもの。少光でも生まれ、人間やら生物のような光を浴びるものがいる限り其処にいる。人間が影から離れることがないように、今様は生物がいる限りすぐそこに存在する」 もう一度、影を叩く。

2015-04-13 04:03:47
白堀之水藤 @sirafji

「影が集積しなければ、あやかしは生まれない。ならば影がなければあやかしは生まれない。影は誰が作るかそれは光浴びる人間だ、けれど人間だけではない建物植物何かがある限り今様はそこに存在する。…浴びる光自身がなくなった、その時は今様がそれさえ食ってしまった証だよ」 そこまで言って一息。

2015-04-13 04:05:02
白堀之水藤 @sirafji

あやかしの世界を見てしまったのが昨日が初めてなら、これは途方もないことだということ。 「ムリに理解しなくてもいい。こればかりは…今様は理屈で通る存在じゃあない」 なんせあたし自身もそこまでキッチリと知らないからな、とくっくっと喉を鳴らす。

2015-04-13 04:05:37
白堀之水藤 @sirafji

「分からないから恐れ、大きすぎるから畏れる。頭なんて小さな世界では理解しようのない、どうしようもなく大変な存在…それが今様だ」

2015-04-13 04:06:03
蓮田 颯丞 @hasterMissing

「影が集い大きくなったのがあやかし。今様は…影そのもの?」 見えずとも、私達のすぐ傍にあるもの。強大なるもの。 自分にとっては強大な、目前の水藤をして完全に知れぬ、強大であるものと言わしめる存在。 今度こそ、夕奈は本当の"遠いもの"を知った。

2015-04-14 02:17:21
蓮田 颯丞 @hasterMissing

別格。別次元。運上人。そういうもの。畏れるべきもの。 ――かつて人類はそういったものを、神と呼び、崇めていたのではなかったか。 「……凄いん、ですね」 実感があるのかないのか。自身でも定かでないままに口をついて出たのは、そんな正直な感想。

2015-04-14 02:19:09
蓮田 颯丞 @hasterMissing

「私には想像もつかない」 強大過ぎる今様とやらの考える事など、それこそ自分にはまるで理解できない。 できない、けれど。それでも夕奈にとっては先程の水藤と変わりはない。 話してみれば、そんなものかと思う程にあっさりと縮んだ距離。

2015-04-14 02:20:22
蓮田 颯丞 @hasterMissing

もしも今様が、自分が思うよりも近しいものだとするのなら。 「今様は……なんで私達を引き合わせたんでしょうか。そんなに凄いなら、どうとでもできたでしょうに」 仮に消えゆくあやかしを憂いていたのなら、人の側を操るなり、服従させるなり幾らでも手段はあったはずだ。

2015-04-14 02:22:05
蓮田 颯丞 @hasterMissing

少なくとも自分に関しては、そういったものに何ら抵抗する手段はない。 だから、弱い少女は思うのだ。 「…案外、ロマンチストな方なのかもしれませんね」 人とあやかしが絆を深めるところを見たい、と、もしも思っているのだとすれば。 それは夕奈にとってあまりにも物語的で、素敵な事だ。

2015-04-14 02:25:02
白堀之水藤 @sirafji

彼女の答えに目をぱちりと。…面白い奴だ。そしてすぐに、ふっと笑みを零した。 「…案外そうかもな。ロマンチストとしては少し強引かもしれんが」 あやかしは長き時を生きる。 人間に溶け込み生きるあやかしはその中で様々な事に干渉し、触れ合い生きてきたのだろう。

2015-04-14 04:04:43
白堀之水藤 @sirafji

だが己のような認識されぬあやかしは違う。 側にいても話しかけても認識されない。あやかしにすら認識されぬ者もいる。…高位であればあるほど、それらを見る力を持つものが限られてくるからだ。 悠久の孤独。退屈でつまらない日々。ただじっと時の流れを見ているだけ。

2015-04-14 04:05:07
白堀之水藤 @sirafji

だからこそ変化を求めたがる。違うものを、何かに紛れてそっと見ていたくなる。 まるで物語を読むように劇でも観覧するかのように、外からそっと見ていたくなる。 たった少しの干渉で、そこから演者がどう考えどう動くのか。 ――三の朱を通った後に ――三の朝を迎える前に

2015-04-14 04:05:37
白堀之水藤 @sirafji

その中で、何が起きるのか。何が生まれるのか。 死を待つのみのあやかしと、鍵を握る攫われた人間。 …きっと、今様は。 「……もしかしたら、新しい世界を見てみたいのかもしれないねぇ」 人間とあやかしが共に生きる世界。いるだいないだなんてそんな話ではない。しかと認識できる世界。

2015-04-14 04:06:03
白堀之水藤 @sirafji

完全な推測。いや、己の希望。 「……お前は、誰と新しい世界をみてみたい?」 あやかしが側にいるという、景色。 見たくない、今のままでいい、という答えは予め拒絶する意地悪な問いだとは思う。 「今すぐ答えなくていい。けれどもうすぐ全てが決まる。三の朱を通った後に。三の朝を迎える前に」

2015-04-14 04:06:44
白堀之水藤 @sirafji

そこまで言って其れは再び空を見上げる。星は変わらず瞬き続けている。 …空気が冷えてきた。 中に入るのならそれでよし。眠るのならそれもよし。 己は今まで通り、時の中で流されるだけ。

2015-04-14 04:07:21
蓮田 颯丞 @hasterMissing

「誰かと…じゃないと、いけないんですか?」 惜しい、気がした。とうかと触れ合って、水藤と空を見上げて。やっと慣れてきた。 あのねぶるというあやかしとも、きっと仲良くなれるという確信がある。

2015-04-14 04:33:15
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