ニンジャスレイヤー二次創作『銃弾とストレート』
(これから流すのは、一応ニンジャスレイヤーの二次創作SSでございます。が、設定等捏造も多く色々と人を選ぶ内容なので適当にスルーなりミュートなりしていただければと思います。タグは #cr819_ss がありますので感想等を書いていただけると大喜びします。艦これの時と共通です)
2015-04-26 16:00:02「クソッ、撃つな!研修生!」シンゴがそう叫び、必死に彼の暴挙を止めようとする。だが彼の鍛えられた引き金の方が速く、路地裏に乾いた銃声が響く。その狙いは正確無比であり、そこには一切の迷いもなく、銃弾は犯人めがけて重金属酸性雨を斬り裂いて飛んで行く。 1
2015-04-26 16:00:29ネオサイタマ市警には、出向研修制度という新人のための研修制度がある。警察学校での基礎的な研修を終えた後に、その後の各種の業務に柔軟に対応できるよう、最初の半年間で各部署やいくつかの地域を回るというものである。そして今、研修生の彼がいたのは、トコシマ地区の殺人課である。 2
2015-04-26 16:02:20そこで彼の教育に当たることになったのは、その課でもベテランのデッカーであるシンゴ・アモという中年男性だ。一見するとどこかくたびれた風な外見であったが、初対面時からその眼は油断なく自分の一挙一動を観察しており、まさに難事件を相手にしてきたベテランデッカーの眼そのものである。 3
2015-04-26 16:03:56そんなシンゴに連れられて、彼はトコシマ地区の一角にある小料理屋『フラワー・ムラ』へとやってきていた。比較的治安がいいとされるトコシマ地区はどの店も活気があるのだが、一本奥に入った場所にあるこの店は、そういった喧騒とは別の、どこか空白地帯のような静かな佇まいであった。 4
2015-04-26 16:05:20「いい店ですね」外観と同じような落ち着いた静寂に満ちた店内の雰囲気に、思わず、彼はそんな感想を口にしていた。この街に、こんな場所があるなど考えたこともなかった。「だろう?まさに隠れ家的店ってわけだ」「デスネー」彼の言葉にシンゴと、その部下である若いデッカーのタバタも頷く。 5
2015-04-26 16:06:44だが突如、その静寂は荒々しい声によって破られることとなった。「邪魔するぜ!」乱暴に入り口の引き戸が開けられ、いかにもガラの悪そうな三人組が店内に入り込んでくる。右頬に『危険な男』と刺青を入れたリーダー格に、痩せぎすと太っちょのコンビ。この店に似つかわしくない剣呑な雰囲気だ。 6
2015-04-26 16:08:06「あの話、考えてくれただろうなあ、女将よぉ!」リーダーの刺青男が、卑下た笑みで入り口のワータヌキを叩きながら声をかける。「悪い話じゃないと思うぜ実際。こんなシケた店と引き換えに一攫千金。その後の臨時収入もある。万々歳じゃねーか」「お断りします」女将はきっぱりとそう言い切った。 7
2015-04-26 16:09:31「話のわからねえ女だな」そう言いながら、刺青男は顎で後ろの二人に合図する。その時だった。「悪いがこの店は今日は新人歓迎会で貸し切りなんでな。話はその辺にしてもらおうか」座敷席から降り、シンゴがゆっくりと刺青男へと語りかける。「ああン?なんだテメエは、見せモンじゃねーぞ!」 8
2015-04-26 16:10:49「知ってるよ、そんなもん頼んでもいないしな」もちろん、シンゴはいまさらそんな怒号で怯むような人物ではない。「それに、そういう芸を披露するならもっといい場所があるんだが、今から行くか?」言いながら、中年デッカーはさり気なく胸ポケットから警察手帳をちらつかせる。「えっ!?」 9
2015-04-26 16:12:10それを見た刺青男の顔が一気に青褪める。「お、憶えてやがれよ、また来るぞ!」そしてそんな捨て台詞を残し、刺青男と手下は一目散に店を出て走り去ってゆく。「まったく、せっかくの新人歓迎会だというのに、おちおち食事もできんな、この街は」ため息とともに、シンゴはその背中を見送った。 10
2015-04-26 16:13:32「一体何事だったんです?」一方でタバタは、呆然とした表情のまま固まっている女将にそんなことを尋ねている。「あっ、いえ、彼らはただの地上げ屋です。それより、まさか警察の方だったなんて……、こんなことになって申し訳ありませんでした」少し震えながら、そう言って女将は頭を下げる。 11
2015-04-26 16:14:53「いやあ、謝るべきはむしろああいう輩を御しきれない自分ら治安機構の方ですよ。しかし、この店を地上げとは……。あいつら、いつからここへ?」シンゴやタバタの目の色が変わったのは、新人の彼にもわかる。それはまさに、正義に燃える刑事の目だ。こんな街でも、正義はまだ死んではいない。 12
2015-04-26 16:16:16そして店に残った三人の客は、事のあらましを女将から聞き出していた。ここに別の店を作りたいということ。そこのオーナーも任せるということ。そのためにこの店を潰すということ「そう悪い話でもないのでは」シンゴがあえて尋ねた言葉に女将は首を振った。「非合法施設にしたくはないですよ」 13
2015-04-26 16:17:38「なるほどそういうことですか」確かにこの一本奥まった立地条件は、そういった施設にはおあつらえ向きだ。「最初は穏便だったんですが、すぐにああいった人たちが来るようになって……、普段は弟に助けてもらったりはしていたのですが……」言葉に詰まる女将に、シンゴは優しく肩を叩いた。 14
2015-04-26 16:19:00「それじゃあ、また何かあったら連絡ください。飛んできますんで」そんな挨拶を残してデッカーたちは店を出る。「大丈夫ですか?あんな安請け合いして」「今日の輩は親玉も含めてどう見ても三流の雑魚だ。政治的な配慮も必要ないし、ポイント稼ぎに持って来いだ。暇そうな奴に回してやればいい」 15
2015-04-26 16:20:21シンゴの苦笑に、彼はどうにも反応できず黙りこんでいた。政治的配慮、ポイント制度、それに伴った縄張り意識。そんなものに飲まれながらこの街の警察機構は回っている。それへの反発は学生気分が抜けていないからだろうか。自問自答するが答えは出ない。あるのは気に食わないという感情だけだ。 16
2015-04-26 16:21:42「……待て」突如声を潜め、シンゴが後ろの二人を止めた。「なにが……うっ」一度意識すると彼も気付く。小雨となりつつある重金属酸性雨に混じり、鉄のような匂いがある。それが何かはまだ経験の浅い彼にもわかる。目を上げ、二人のデッカーを確認する。シンゴも、タバタも、黙ったまま頷いた。 17
2015-04-26 16:23:03懐のデッカーガンを確認しながら、シンゴが角に張り付いて様子を伺う。「新入りは後方を警戒しつつ待機。タバタ=サンは前を頼む」「了解」シンゴの前を抜け、タバタが銃を構えて角の奥へ突入する。だがすぐにその動きは止まった。「あー、シンゴ=サン、大丈夫ですよ」「なんだ?」 18
2015-04-26 16:24:24「ほら、これ。もうブッダですよ」そこにあったのは3つの死体。痩せぎすと太っちょ、そして、右頬に『危険な男』と刺青を入れた男だ。「ふん、食ってきたばかりだってのに随分食欲をそそる光景だな、おい」悪態をつきながらも、シンゴは手際よくPVC手袋を嵌め、現場検証に入っている。 19
2015-04-26 16:25:45「もうポイントも稼げねーな」「デスネー」「で、なにか変わった点はあるか?」シンゴがそう尋ね、タバタが死体の確認を行う。それを後ろから見ている彼には、目の前の死体は変哲のないものに見えた。人型を保っているだけ、この街ではまだまともな死体かもしれない。だがタバタの見立ては違った 20
2015-04-26 16:27:10「それぞれナイフでブスリ。普通に争って普通に殺された感じですが、三人共、舌が切られてますね」「舌?」「ほらこれです。キング・エンマにでもなったつもりなんですかね?」ほとんど風化した道徳規範を口にしながら、タバタはその切られた舌を拾い上げて証拠保存用のタッパーへとしまいこむ。 21
2015-04-26 16:28:32「……犯人は誰なんでしょうか」「ツジギリ、にしちゃあ犯行が丁寧すぎるな。切った舌を残していったあたり、殺したことを誇示するのが目的だろう。普通はこういったものは戦利品として持ち帰るもんだ」「デスネー」「あとこれは俺の勘だが、こういう場合、たいてい原因は殺された側にある」 22
2015-04-26 16:29:53「……あの店が関係あるんですかね?」新人の言葉に、シンゴは重々しく頷いた。「まあ、そう考えるのが自然ではあるな。他になにかわかったかタバタ=サン?」「この刺青のフォント、店で見た時からずっと気になっていたんですよ」「ああン?」タバタの場違いな発言に、シンゴが顔をしかめる。 23
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