「私は艦娘を見たことがある。」

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Any / エニー @Any512

私は艦娘を見たことがある。 私が住んでいる島には中学校がなかった。 その頃、私は毎日本土の学校まで小さな定期船に乗って 通学していた。

2015-05-03 00:43:04
Any / エニー @Any512

2013年4月、人々は初めて深海棲艦の恐ろしさを知った。 非常事態宣言が出され、テレビからは毎日新たな災害の 特番が流れていたが、どこか遠い世界の出来事だと 思っていた。 そんなはずはないのに。

2015-05-03 00:43:35
Any / エニー @Any512

最初、海面に浮かぶ黒い染みだと思った。 突然の轟音と、傾く船体。 一瞬であ、これは死んだなと思った。 溺れて死ぬのは苦しいだろうな、お父さん お母さんごめんなさいと謝ったのを覚えている。 実際はそんなことにはならなかったが。

2015-05-03 00:44:54
Any / エニー @Any512

海の上を人が滑走していた。 まるでアイススケートのように。 へんてこな格好だと思った。 一見学生の制服を着ている人、胴着のような服装の人もいる。 でもそんな事よりも、皆とても人の力では持ち上げられないような鉄の塊を纏っていた。

2015-05-03 00:47:09
Any / エニー @Any512

どうやら武器らしい。 吹き出す煙と砲撃音、爆発音が続いてキーンと耳鳴りが鳴る。 船の近くに巻き上がっていた水柱はいつしか収まり、 次第に船に乗っていた人たちの歓声に変わった。 私は彼女達が艦娘と呼ばれるものだと知った。 喜ぶ私達に手を振ってくれている。 素直に、格好良いと思った。

2015-05-03 00:49:35
Any / エニー @Any512

自分の生死がかかっている状況にも関わらず、 海上に毅然と立ち、彼方に見える正体不明の敵を見据え、身長ほどもあるような弓を引く姿に見蕩れてしまったのでした。

2015-05-03 09:28:40
Any / エニー @Any512

その後調べた所、艦娘とは未成年の女性に軍艦の記憶を宿し、深海棲艦に対抗する戦力として組織された人達の総称らしい。細かい原理は国家機密だそうだ。 精神的肉体的に適正が必要で、希望すれば適正試験を受けられるらしい。合格すれば専門教育を受けた後、前線に配属されるとパンフに書いてある。

2015-05-03 00:54:32
Any / エニー @Any512

試験について両親に話すと猛反対された。まだ合格したわけでもないのに。 そんな危険な事はして欲しくないという。唯一味方だったのはお爺ちゃんだった。もう自分の事は自分で考えられる歳だと言ってくれた。ごめんなさい、正直勢いだったかもしれない。二人をなんとか説得し、受験することができた。

2015-05-03 00:58:13
Any / エニー @Any512

適正試験に合格してしまった。 その頃になると熱が覚めて少し怖くなってきたが、言い出した手前引くに引けなかった。それは驚きの速さで専門教育機関へ転入手続きがされ、合格通知の次週には荷物を纏めて家を出る羽目になった。出発の時、お父さんから背中を叩かれ気合を入れられた。正直逃げたい。

2015-05-03 01:05:24
Any / エニー @Any512

専門機関での教育は想像してたものの上のさらに上だった。殺す気か。昼は座学と体力作り、夜は寮で山積みの課題。でも同年代の仲間と一緒に頑張るのは楽しかった。そう思うことにしておく。家族には毎月手紙を送っていたが、機密保持上内容は検閲されてたらしい。

2015-05-03 01:08:29
Any / エニー @Any512

と言う間に専門教育も最終段階に移り、練習用艤装が配備され、実地訓練の割合が増えていった。座学の内容も、基礎的な概念から、陣形、弾薬、燃料など実務的な内容になった。最終試験もなんとか合格できた。下から数えた方が良い成績だったが。

2015-05-03 01:11:39
Any / エニー @Any512

そして今日、私は艦娘になった。専用の艤装とそれに見合った名前が与えられた。横須賀鎮守府に配属される事なり、提督に挨拶をしようとしている。提督室の前で深呼吸し、不安と期待と使命感とともに扉をノックする。

2015-05-03 01:12:35
Any / エニー @Any512

吹雪型駆逐艦1番艦、吹雪です。どうぞよろしくお願いします!

2015-05-03 01:13:02