SF作家 山本弘先生による「バトルシップ」は何故面白く見えるか

昨日は『バトルシップ』が盛り上がってたけど、なぜこの映画が面白く見えるのか、その構造をちょっと分析してみた。 結論から言うと、「異星人があんまり強くない」ってところがミソ。
2015-05-04 13:16:37
@hirorin0015 強大な敵を倒すことで、観客にカタルシスがもたらされる……というのが、この手の話の基本。当然、敵は強い方がいい。 ところが、あまり敵を強くしすぎると、主役側が勝敗をくつがえすことが困難になるというジレンマがある。
2015-05-04 13:19:07
@hirorin0015 そこで、これまでのこうした作品では、主役側が不利な戦局をひっくり返すための仕掛けを用意していた。 A「地球側がすごい超兵器を出してくる」 B「侵略者側にあからさまな弱点を設定する」 基本的にこの二択。
2015-05-04 13:23:30
@hirorin0015 日本の作品だとAのパターンが多い。巨大ロボット・アニメの多くはそうだし、『地球防衛軍』のマーカライト・ファープや、敵は異星人じゃないけど『海底軍艦』の轟天号もそう。
2015-05-04 13:26:18
@hirorin0015 アメリカ映画だとBが多い。古くは『空飛ぶ円盤地球を襲撃す』。もちろん『インデペンデンス・デイ』や、『スター・ウォーズ』のデス・スターとかもそう。
2015-05-04 13:30:27
@hirorin0015 『バトルシップ』はそのどっちでもない。確かに異星人が光に弱いという弱点は設定されてるけど、勝敗の決定的な要素にはなってない。 最後は砲弾とミサイルの撃ち合いで勝負が決まる。
2015-05-04 13:32:57
@hirorin0015あと、 異星人がビーム兵器を使わないのも特徴。あのパンジャンドラムとかも、冷静に考えてみると、実は地球の現用兵器と破壊力は大差なかったりする。 つまり、まともに戦っても勝てる可能性があるように、最初から設定されている。
2015-05-04 13:37:32
@hirorin0015 なぜ主人公側がピンチに陥ったかというと、ハワイ一帯がバリヤーで封鎖されて援軍が呼べなかったから。あのバリヤーがなかったら、たちまち地球側の総攻撃くらって壊滅してた。つまり、実はかなり弱い侵略者なのだ。
2015-05-04 13:40:16
@hirorin0015 それでも強そうに見えるのは、パンジャンドラムとかの絵的なインパクトで、「すごい科学力だ!」と観客に印象づけてるから。 すごい科学力だから強そうに見えて、「どうすれば勝てるんだろう」とはらはらしてしまうわけだ。
2015-05-04 13:44:05
@hirorin0015 だからあのパンジャンドラムにも、作劇上、大きな意味がある。絵が派手なので、本当はあまり強くない侵略者を、「強い敵だ!」と観客に錯覚させる効果があるわけだ。
2015-05-04 13:47:09
@hirorin0015 しかも、主人公側の逆転の秘策が、最新の超兵器なんかではなく、昔の戦艦というところが、上手い仕掛けだ。 つまり『バトルシップ』という映画は、従来のパターンのAもBも否定してるのだ。
2015-05-04 13:50:24
@hirorin0015 「強大な敵をどうやって倒すか」ではなく、「そんなに強くない敵をどうすれば強いように見せかけられるか」という発想の転換。
2015-05-04 13:52:39
@hirorin0015 まあね、確かにバカ映画だと思うよ(笑)。ラジー賞を総舐めにしたっていうのも分かるわ。いくらなんでもミズーリに実弾積んであるとは思えないし。そのへんは嘘と割り切って観ることを要求される。
2015-05-04 13:54:39
@hirorin0015 ただ、バカ映画ではあっても、かなり計算されて作られているのは確か。そのへんは素直に評価すべきじゃないかと思う。
2015-05-04 13:58:23
@hirorin0015 まあ、僕も小説の中でこれまで何度もバトルのシーン書いてきて、そのたびに「どういう展開にすれば最も燃えるか」で頭悩ませてきたからなあ。主人公側があっさり勝っちゃったら面白くない。ぎりぎりまで危機感を盛り上げたところで、どうやってひっくり返すかが難しい。
2015-05-04 14:02:25
@hirorin0015 だから『バトルシップ』の監督・脚本家も、かなり頭ひねって、ああでもないこうでもないと悩みながら、プロット組み立てていったと思うんだよね。
2015-05-04 14:04:03