A.T.M.(アツスケタナカマツリ)かわら版『ふわおちよおれしあ』
- to_yo_yo_n
- 1430
- 0
- 0
- 0
掻き出し、かきだされる 塵と、埃と、砂粒たち。 ぼくらが運動場(グラウンド)から 毎日、まいにち運んできた 塵と、埃と、砂粒たち。 油びきの日になると 床や、廊下が すっかり生まれ変わる。 黒くなって強くなる。 @atsusuketanaka
2015-05-05 12:47:24ぼくらも日毎に黒くなる。 夏の日射しに黒くなる。 黒くなって強くなる。 つまずき、転んで強くなる。 赤チン塗って強くなる。 (私家版詩集『ふわおちよおれしあ』所収) @atsusuketanaka
2015-05-05 12:48:48オイルサーディン悲歌。 人生の旅の途中で みなの行く道を行くわしは 気がついたとき とあるイワシ網漁の かぐらき網の目の中にいた。 捕えられたわしを待っていたのは 思いもかけぬ、むごたらしい運命であった。
2015-05-05 12:57:44多くの兄弟姉妹たちとともに 首を切り落とされ ともに大鍋のなかで煮られて 油まみれの棺桶の中に 横に並べられ 重ねられ されど 幸いなるかな、小さき者たちよ。 @atsusuketanaka
2015-05-05 12:58:14光あれ! と 祈れば、たちまち わしらは、光の中に投げ出されるのだ。 されど、覚悟せよ。 ふたたび火にかけられ 煮られることを。 (私家版詩集『ふわおちよおれしあ』所収) @atsusuketanaka
2015-05-05 12:59:08糺の森。 ぼくが帰るとき いつも停留所ひとつ抜かして 送ってくれたね。 バスがくるまで ずっとベンチに腰かけて ぼくたち、ふたりでいたね。 ぼくの手のなかの きみの手のぬくもりを いまでも ぼくは思い出すことができる。 いつか 近所の神社で 月が雲に隠れるよりはやく
2015-05-05 13:12:39ぼくたち、月から隠れたよね。 形は変わっても あの日の月は 空に残ったままなのに あの日のぼくらは いまはもう 隠れることもなく 現われることもなく どこにもいない。 (私家版詩集『ふわおちよおれしあ』所収) @atsusuketanaka
2015-05-05 13:13:55お母さん譲ります。 「あのう、すみません。表の貼り紙を見て、来たのですが。」 呼び鈴が壊れていたのか、押しても音がしなかったので、扉を開けて声をかけてみた。 「また、うちの息子の悪戯ですわ。」 不意に後ろから話しかけられた。 女が立っていた。 「悪戯ですか。」
2015-05-05 13:39:28表で見た貼り紙が、くしゃくしゃにされて、女の手のなかで握りつぶされていた。 「どうぞ、上がってください。」 言われるまま、家のなかに入って行った。 「息子さんはいらっしゃるのですか。」 @atsusuketanaka
2015-05-05 13:40:22「奥の部屋におりますわ。」 女は、私の履き物を下駄箱に仕舞った。 「会わせていただけますか。」 「よろしいですわよ。」 案内された部屋に行くと、一匹の巨大なヒキガエルがいた。 @atsusuketanaka
2015-05-05 13:41:18──ピチョッ、 ヒキガエルの舌先が、私の唇にあたった。 舌先が、私の喉の奥に滑り込んだ。 ──おえっ、 ──パクッ。 私が吐き出した魂を、ヒキガエルが呑み込んだ。 @atsusuketanaka
2015-05-05 13:42:01* 外は、すっかり日が暮れていた。 「もう何年も雨が降らないですね。」 「雨はみんな、わたくしが食べてしまいましたのよ。」 女はそう言って、新しい貼り紙を私に手渡した。 (私家版詩集『ふわおちよおれしあ』所収) @atsusuketanaka
2015-05-05 13:43:05木漏れ日のなか。 きょうのように晴れた日には 昼休みになると 家に帰って、ご飯を食べる。 食べたら、自転車に乗って 賀茂川沿いの草土手道を通って 学校に戻る。 こうして自転車をこいでいると 木漏れ日に揺すられて さすられて
2015-05-06 12:37:09なんとも言えない いい気持になる。 明るくって あたたかくって なにか、いいものがいっぱい ぼくのなかに降りそそいでくる って そんな感じがする。 @atsusuketanaka
2015-05-06 12:38:10まだ高校生のぼくには しあわせって、どんなことか よくわからないけど たぶん、こんな感じじゃないかな。 行く手の道が スカスカの木漏れ日に 明るく輝いてる。 (私家版詩集『ふわおちよおれしあ』所収) @atsusuketanaka
2015-05-06 12:39:31コアラのうんち。 とってもかわいい コアラちゃん のんびりびりびり コアラちゃん ユーカリの お枝にとまって ぶ~らぶらん ぶ~らぶらん とってもかわいい コアラちゃん うんち ぴっぴりぴ~の コアラちゃん まあるいお腹は 調子をくずして
2015-05-06 12:54:24ぴっぴりぴっ ぴっぴりぴっ こっちを向いて ぶらさがる ぶ~らぶらん ぶ~らぶらん 黄色いお水が お尻のさきから ぴっぴりぴっ ぴっぴりぴっ 子どもが見てる 笑って見てる ぴっぴりぴっ ぴっぴりぴっ @atsusuketanaka
2015-05-06 12:55:16子どもが見てる 笑って見てる ぴっぴりぴっ ぴっぴりぴっ 20年以上もむかし、テレビのニュース番組で、動物園のコアラが、お腹をこわして下痢になった様子を放映していました。日本に来て間もなかったらしく、子どもたちの騒がしい声と、 @atsusuketanaka
2015-05-06 12:56:42その無遠慮な視線にまだ慣れていなかったために神経症にかかった、と番組のなかで解説していました。 (私家版詩集『ふわおちよおれしあ』所収) @atsusuketanaka
2015-05-06 12:57:52へびのうんこ。 へびって どんな うんこ するのかな へびって どんな うんこ するのかな まあるいの まんまる~いの するのかな ほおそいの ほそなが~いの するのかな いつか みた ぞうの うんこ ってね
2015-05-06 13:14:05ぼてっぼてっぼてって ぶっとくて まあるいの おっきくって とおっても くっさ~いの へびって どんな うんこ するのかな へびって どんな うんこ するのかな まあるいの まんまる~いの するのかな @atsusuketanaka
2015-05-06 13:15:00ほおそいの ほそなが~いの するのかな いつか みた ねずみの うんこってね まっくろけの ごはんつぶ みたいなの ちっちゃくって とおっても くっさ~いの ねっ みてみたいでしょ へびの うんこ @atsusuketanaka
2015-05-06 13:16:02ほおそ~いのか まんまる~いのか ねっ みてみたいでしょ へびの うんこ ほおそ~いのか まんまる~いのか (私家版詩集『ふわおちよおれしあ』所収) @atsusuketanaka
2015-05-06 13:17:02Siesta。 siesta お昼寝の時間 午後の授業は みんなお昼寝してる 階段教室は ガラガラの闘牛場 老いた教授は よぼよぼの闘牛士
2015-05-06 13:21:15ひとり 奮闘してるその姿ったら 笑っちゃうね もう (だけど、先生 いったい何と奮闘してるの) siesta お昼寝の時間 @atsusuketanaka
2015-05-06 13:23:33