新防衛大綱の抱える問題点
【同盟弱体化】第6部 新たな試練(上)中国刺激する演習控えろ(http://bit.ly/eiwe02) ・新たな試練(中)実態無視し理念つまみ食い(http://bit.ly/eKsotO)・新たな試練(下)つけ込む中露、欠いた世論戦(http://bit.ly/hFuFfx)
2010-12-23 11:48:36産経のこのシリーズは良く調べている。特に(中)で森本氏が指摘している問題は新大綱の「動的防衛力」の課題として注意すべきである。陸自を機動運用する方針は決まっているが、高速輸送艦などのそれを実現する手段の裏づけがないのだ。ISR強化の話も中途半端である。全ては予算の問題なのだ。
2010-12-23 11:51:08AWACS追加調達、無人偵察機(グローバルホーク)導入、空中給油機の増加、高速輸送艦の調達、その他の揚陸用装備の調達…「動的防衛力」は方針は正しいが財政の裏づけがなければ絵に描いた餅だ。だから防衛関係費は思い切った増額が今後、強く求められるのは必至なのである。避けようがないのだ。
2010-12-23 11:53:12追加的に言えば産経記事は見落とされがちな論点もきちんとフォローしている。つまり安防懇報告書では集団的自衛権不行使の憲法解釈見直しについても言及があったのに、現政権はそれをまるっきり無視してほったらかしにしていると言うことである。論理的に言えば集団的自衛権行使の必要性は明白である。
2010-12-23 11:55:19その点は四年前の安保法制懇の報告書を見ればいいことだからいちいち細部に言及しないが、憲法解釈見直しの必要性は有識者レベルでは殆どコンセンサスの採れている話である。「やるかどうかではなく、いつやるか」が問題であるに過ぎない。武器輸出三原則等緩和や非核三原則もこれと同じである。
2010-12-23 11:56:56武器輸出三原則等緩和の話は安防懇報告書の最大の目玉であって、防衛省や民主党の外交安保調査会でさえ緩和は日本の防衛に必要と積極的な提言をしていたものだったが、土壇場で社民党との協調に舵をきった菅首相の「政治判断」で防衛大綱に盛り込まれなかった。国益よりも党益重視の判断であった。
2010-12-23 11:58:58非核三原則の話はこれと比べるとやや敏感だが、安防懇報告書は当初案で「米国の手を一方的に縛るようなやり方は良くない」旨の記述を行っていた。暗に有事の際の「核持込」を容認すべきとの「非核二・五原則」への修正を提言していたと言ってもいい。だがこれも土壇場で官邸の圧力で修正が加わった。
2010-12-23 12:00:40つまり記述自体は残ったもののその前に「現在直ちに修正する状況にはない」とする旨の記述が新たに加えられたのだ。有識者委員会の報告書内容に政府が手を加えるのなら有識者委員会の存在意義は果たしてどこにあるのか(「第三者委員会は社内で作る」と言うようなもの)という印象を持たざるを得ない。
2010-12-23 12:03:32要するに現在の大綱は「基盤的防衛力」から「動的防衛力」への変化という意味で評価できる点は多いものの、抱えている問題もまた大きいということだ。予算制約を前提としているから方針が絵に描いた餅で終わる可能性は高いし、政府方針の変更など本当にバイタルな部分への踏み込みが乏しいのである。
2010-12-23 12:06:21