村上先生と初めてのお泊り(エイトで学園シリーズ)

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∞すみれ∞ @magic88word

1 「渋やんもまだやったんやー」 なーんや、俺はもうてっきり… あからさまにほっとする俺のことを 可笑しそうにわろて ジョッキを空にする渋やん いつもの店で並んで飲んでる 新学期でバタバタしとったから 結構久しぶり

2015-04-21 23:49:18
∞すみれ∞ @magic88word

2 "俺も歳くったんかなぁ~ 昔ほどがっついてないっちゅーか あいつに合わせたったらええなって" 教師を目指してる彼女は 渋やんの口添えで助手として 週に何回か手伝いに来てる "あいかわらず生物室で 茶飲んでるだけやねんで… でもそれが心地ええっちゅうか"

2015-04-21 23:49:30
∞すみれ∞ @magic88word

3 「いやわかるで」 卒業するまでガマン!って ずっと思ってたけど せやからって 卒業したからすぐ…っていうのも なんかちゃうし 今までみたいに 学校で顔合わせへん分 会える時間も減ったし 「大学で新しい出逢いも あるんちゃうんかな…って」

2015-04-21 23:49:40
∞すみれ∞ @magic88word

4 おまえにしてはえらい弱気やん …ってまた渋やんが笑う "向こうもそう思てんのんちゃう?" 「そーかな」 "しっかり捕まえとかな… 明日逢えるんやろ" ごちゃごちゃ考えんと早よ寝え 渋やんにそう言われて 早々にお茶漬けを頼んだ 明日 楽しみにしてくれとったらええな

2015-04-21 23:49:52
∞すみれ∞ @magic88word

5 電話する言うとったのに 遅なってもうた 「起きてるか」 帰ってすぐLINEしたら ほんまにすぐ電話が鳴った 「もしもし…悪い、遅なって」 『ううん眠れなかったから…』 「どした?なんかあったんか?」 『違う…楽しみで、明日』 「んふ、そっか」

2015-04-21 23:50:04
∞すみれ∞ @magic88word

6 かわいいこと言うから… 気持ち悪いけど 部屋でひとりにやけてまう 「どこ行きたい?午後からになるから あんま遠くは行かれへんで」 『ドライブがしたい』 おとなしい彼女が ちょっと食い気味に言うから驚いた

2015-04-21 23:50:14
∞すみれ∞ @magic88word

7 「ええけどどこ行く?」 『場所はどこでも… 先生が運転してるところ見たいな』 え?そんなんでええの 『だめ…ですか?』 「だめちゃうちゃう! ええよ、ほなドライブしよか 部活終わったら連絡するからな」 これ俺の方が 寝られへんくなりそうや

2015-04-21 23:50:22
∞すみれ∞ @magic88word

8 次の日は朝から上の空 目が覚めたから 早いうちからグラウンドへ行ったけど サッカーどころちゃう いつもやったら率先して動くのに 紅白戦やれー言うて ベンチで空見上げとったら 生徒におでこ触られた 「な、なんや!」 "先生調子悪いんっすか?" "熱でもあるんじゃ…"

2015-04-23 02:19:43
∞すみれ∞ @magic88word

9 「熱もあるかわからんわな」 思わず緩む頬をおさえる俺を 気味悪がる生徒達 明日の練習試合に備えて… とかなんとか言うて お昼ぴったりに終わらした さっとシャワーしてから 彼女にメールすると 最寄駅まで来てるって言う

2015-04-23 02:19:54
∞すみれ∞ @magic88word

10 そんな早よ会いたかったんかな ぷっ!あほちゃう?俺 自分でつっこんでまう 落ち着けほんま エンジンをかけて気づいた… ミュージックや 今から筋トレでもするかのような テンション高い曲ばっかり 仮にもデートやで せめてミスチルかゆずぐらい 入れといたらよかった

2015-04-23 02:20:01
∞すみれ∞ @magic88word

11 仕方なくFMをつけて駅へ向かう… 駅前のロータリーで佇む彼女 中から助手席のドアを開けたとき とんでもなく悪いこと してる気持ちになったけど おじゃまします…って 乗ってきた彼女の笑顔で 全部ふっとんだ

2015-04-23 02:20:08
∞すみれ∞ @magic88word

12 「とりあえず…高速乗って 行けるとこまで行ってみよか」 『うん』 よっしゃって走り出したとたん ラジオから "シングルベッド"が流れる 気まずいがな、これ 考え過ぎ? 他の局にしてみたりするけど なんか違う

2015-04-23 02:20:20
∞すみれ∞ @magic88word

13 「ごめん、どんな曲聴くんか 聞いといたらよかったな」 じゃ…て言うてスマホを出して 曲をかけてくれる 音楽はアプリで聴くらしい 時代は変わったな 『お父さん以外の車に 乗せてもらったの初めて…』 かしこまって座る彼女が 愛しくてたまらんくなった

2015-04-23 02:20:41
∞すみれ∞ @magic88word

14 ふたりとも昼ご飯のこととか すっかり忘れとったって気づいて 一番最初のサービスエリアに 立ち寄った わざわざレストランに入らんでも フランクフルトやらカレーパンやら うまそうなもんがいっぱいで サービスエリア巡りをしながら 西へ向かった

2015-04-26 23:54:10
∞すみれ∞ @magic88word

15 よう考えたらふたりだけで 遠出したの初めてやったな ご当地グルメの屋台をのぞいたり おみやげを見たり ノープランのドライブやけど 思てた以上に楽しくて このままどこまででも 走り続けたいと思った…

2015-04-26 23:54:20
∞すみれ∞ @magic88word

16 いくつめかのサービスエリアの だだっ広い展望テラスで 夕日が落ちかけるのを眺めてる 「もうそろそろ戻らなあかんなー」 『あのね…先生…』 言い出しにくそうに彼女が切り出す 「ん?」 『いっこお願いが…』

2015-04-26 23:54:38
∞すみれ∞ @magic88word

17 「ん?アイスもう一個食べたいん?」 『ちが…あの、来週の金曜…』 「ふん」 『…先生んちに泊まってもいい?』 「…へっ?な、なんて!?」 いきなり予想外のこと言われて うろたえる 運転しとったら危なかったで コーヒー飲んどったら 吹き出すとこやった

2015-04-26 23:54:49
∞すみれ∞ @magic88word

18 「い、いきなりどしたん?」 『来週大学のオリエンテーションで 一泊旅行があるの』 「ふん」 『金曜日に帰ってくるんですけど』 「ふんふん」 『次の日彼氏とディズニーに行く友達 が一緒に行くことにしてほしいって』 「はぁ…要はアリバイ作りか」

2015-04-26 23:55:00
∞すみれ∞ @magic88word

19 『でも私も先生と一緒だったら…』 友達づくりにいちいち旅行する 最近の大学にも 日程をちょろまかして親に嘘ついて 彼氏と旅行に行くやつにも 正直ちょっとあきれるけど それとこれとは別の話や 「それやったらお互いさんやな」 下向いてた彼女が ぱっと顔をあげる

2015-04-26 23:55:11
∞すみれ∞ @magic88word

20 「…ええよ」 『ほんと?』 「学校やし次の日も部活やから どっこも行かれへんけど…」 『やったー!』 「おわっ!コーヒーこぼれるがな」 『ご…めんなさい …怒られるかなって思ったから』

2015-04-26 23:55:22
∞すみれ∞ @magic88word

21 コーヒーをそばのテーブルに置いて 今度は俺が彼女を抱き寄せた 「嬉しいに決まってるやん …わっるい教師やな」 恥ずかしそうに頷く彼女が めちゃくちゃ 勇気振り絞ったんやろなーと思たら ちょっと感動してもうた

2015-04-26 23:55:39
∞すみれ∞ @magic88word

22 風が吹いて 彼女の髪が鼻をくすぐる すっかり日が落ちて 少しひんやりしてきた 「もう戻らな、なあ…」 さっきから何度目かの 言葉を口にするけど 足が動かへん それは彼女も おんなじみたいで 展望台の柵を 握りしめたまま黙ってる

2015-04-28 01:59:18
∞すみれ∞ @magic88word

23 「寒ないか…?」 パーカーのファスナーを開けて 後ろから包み込む あれ?…思てた以上に 全身が密着する…やばっ 彼女も身体をこわばらせて じっとしてる 妙に熱い息がかかってもうたんか 彼女が『あつい…』ってちょっと笑う

2015-04-28 01:59:28
∞すみれ∞ @magic88word

24 身体を離してこっち向いた頬を すかさず捕まえて唇にチュッとした 『…あ』 驚いた彼女がなんか言おうとしたけど 構わず唇を押しつけて 細い身体を抱きしめて もうめちゃくちゃにキスした 『…せん…せ…ここ…外…』 「はぁ…かまへん…暗い…し」

2015-04-28 01:59:37
∞すみれ∞ @magic88word

25 ちゅうか外やなかったら 歯止めきかんかったかも… 名残惜しいけど ほんまにもう帰ろ 「今度来るときはもっと遠くまで 行けたらええな…」 『うん』 「よっしゃ帰るで」

2015-04-28 01:59:47