傭兵鎮守府【Mission:孤立艦娘救助】1

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奈由坂 @nysk_ryona

「では、現在の状況を確認します。」 ギギギ、と船体の軋む音の中、古鷹の明朗な声が会議室に響く。同席者は、叢雲鈴谷熊野に船員の一部。そこに提督の姿はない。 「まず前回作戦で捕虜にした海賊が、更に隣の鎮守府と密通。これが反乱を起こしました。一週間前ですね。」 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:21:41
奈由坂 @nysk_ryona

「そして、その反乱に乗じて件の鎮守府も侵攻を開始。本拠地を奪われ、提督は行方不明。これが三日前です。」 「で、私達はなけなしの資源と武装、それと船1隻だけで流浪の身。これが現在の状況ってわけね。」 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:23:02
奈由坂 @nysk_ryona

明らかに苛立った様子で叢雲が口を挟む。実際、海賊なんぞの反乱に潰されるようではプライドもズタズタであろう。 「まあまあ、良いじゃん。こっちの方が自由の戦士!って感じで。」 「まあ、確かに得難い経験ではありますわね。今日明日の心配が出来るなんて。」 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:24:06
奈由坂 @nysk_ryona

対してお嬢様二人組は気楽なものである。危機感が足りていないとも言える。熊野は多少の危機感があるようだが、浮ついた様子は隠しきれていない。 「えーっと…で、どうしましょう?」 場の温度差に、古鷹が苦笑いをしながら仲裁を入れる。今彼女が居なければ、会議も糞も無いだろう。 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:25:07
奈由坂 @nysk_ryona

そもそも本来は秘書艦であった叢雲が会議の進行役であるのだ。その叢雲が現在精細を欠いているので古鷹が代理を務めているだけに過ぎない。 「鈴谷、情報集めとくように言っといたわよね。」 「はいはーい。鈴谷、ちゃんと仕事はしてますよっと。」 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:26:02
奈由坂 @nysk_ryona

そんなことに気付いているのか、お気楽に言いながら、鈴谷がそそくさと足元から資料を取り出す。 地図上に近隣の情勢、鎮守府や賊、深海棲艦の分布などが大雑把ではあるが纏まっている。 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:27:03
奈由坂 @nysk_ryona

「この辺りの海域はだだっ広すぎてよくわかんなかった。こっちは逆に大きめの島あって、鎮守府が深海棲艦とドンパチやってるみたいだね。あ、ちなみに皆の鎮守府があったのはここ。」 「で、今鈴谷たちがいるのがこの辺。」 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:28:02
奈由坂 @nysk_ryona

地図上の情勢をあっちこっち解説した後、鈴谷が一点を指さす。このまま進めば、群島にぶつかるかという位置だ。まず間違いなく別の鎮守府の勢力圏に突入する。 「どうする?この群島にいる鎮守府もきな臭い戦いしてるらしいから、戦力として歓迎してもらえるかもだけど。」 「……」 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:29:02
奈由坂 @nysk_ryona

そして場の視線は叢雲に注がれる。元秘書艦であり、最も実戦経験もある叢雲が、自然とこの場におけるリーダー格となっていた。そのことに、誰も、本人も疑問は持っていない。実際、場を率いることの出来る人材など他にいないのだから。 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:30:14
奈由坂 @nysk_ryona

「このままその鎮守府と合流すれば、私達の鎮守府はどうなると思う?」 「まず間違いなく吸収されますわね。わたくし達の鎮守府は存在しなかったも同義になりますわ。」 「そう。そして、私はそれを許容しない。こんな鎮守府でもね。鈴谷。」 「はいはい、ちょっと待ってねー。」 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:31:07
奈由坂 @nysk_ryona

にわかに調子を取り戻した叢雲に、周囲も少しずつ活気付く。 さて、熊野が答えたとおり、この鎮守府、鎮守府といえるかも怪しい船団の現状は非常に厳しい。なにせ拠点も無ければ戦力も巡洋艦3名に駆逐艦1名という貧弱さである。 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:32:08
奈由坂 @nysk_ryona

静に考えればさっさと何処かに身を寄せて庇護下に入るべきだ。しかしリーダーの叢雲はそれをしないと言い、周囲も、少なくとも艦娘達はそれを良しとしている。 「ん、あったあった。」 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:33:03
奈由坂 @nysk_ryona

そして鈴谷が取り出した資料には先程よりもより細かい情報が詰まっていた。そして古鷹は、彼女が後ろの船員からその資料を渡されていたところを見逃さなかった。 「えーっとね、この鎮守府は……」 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:34:07
奈由坂 @nysk_ryona

執務室に連絡が入る。ただでさえ面倒事に手を焼いているというのに、このタイミングで外部からの連絡とは更に面倒ごとの気配しかしない。 とはいえ無視すればさらにさらに面倒なものになって返ってくるのは目に見えているので、仕方なしに応答をする。 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:36:05
奈由坂 @nysk_ryona

「はい、こちら鎮守府司令室。」 <<ごきげんよう。こちら、…えーっと、傭兵鎮守府と申します。初めまして。>> 「初めまして。聞かない名前だな。それに随分と声が若い。」 <<そちらこそ、思ってたより随分とお若いお声ですわね。>> #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:37:03
奈由坂 @nysk_ryona

「世辞はいい。それで、そのお若い提督様が何の用だ。」 <<最近そちらの鎮守府で内乱が起きている、とお聞きしたので、そのお手伝いでもさせていただければ、と。>> 「…ほう?」 提督の表情がわずかに歪む。電話越しだが、一瞬考えてしまった。機敏だけは伝わっているであろう。 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:38:06
奈由坂 @nysk_ryona

「そちらの戦力は?」 <<航空巡洋艦が2、重巡洋艦が1、駆逐艦が1。>> 「話にならんな。戦艦くらい持ってこい。」 <<あら、これでも皆、戦艦以上の働きが出来ると自負しておりますわよ。舐めないでくださる?>> 「ふん、言ったな?じゃあ仕事をくれてやる。」 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:39:07
奈由坂 @nysk_ryona

「熊野、どだった?」 「お相手は食いついてくださいました。どうにか、戦力派遣の依頼という形に落ち着けられましたわ。」 「やっぱり交渉事は熊野に任せて正解ね。私じゃこうはならないわ。」 司令室の通信機の向こう側、古い船内の一室で、艦娘たちが第一目標の達成を喜んでいた。 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:41:06
奈由坂 @nysk_ryona

「それで、依頼内容は何なんですか?」 「【艦娘2名の保護】です。駆逐艦2名が警備していた島で武装蜂起が起きたので、鎮圧ついでに救出して欲しい、とのことですわ。」 「外からの襲撃じゃなくて内部からとか、この鎮守府やばくない?」 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:42:04
奈由坂 @nysk_ryona

「わたくし達の知ったことではありませんわね。まあ、この件が済んだら離れたほうが懸命かもしれません。」 「熊野さん少し怒ってます…?」 女三人寄れば姦しい。徐々に話題は逸れ、作戦の確認のはずが熊野の怒るツボの話になり、それが鈴谷古鷹にも飛び火する。 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:43:07
奈由坂 @nysk_ryona

無事独立勢力のまま依頼を取り付けられた安堵感でタガが外れていたのかもしれない。 そして、そのタガをはめ直すのはリーダーの役目である。 「はいはい、それじゃさっさと準備するわよ。この仕事をこなさないと意味ないんだから。」 #傭兵鎮守府

2015-05-23 02:44:04