凡人にもできるイノベーションのコツ

イノベーションはアップルのジョブズのように天才にしかできないと考えられているが、それでは偶然に天才が登場するまで、日本は停滞し続けなければならないのだろうか?そんなことはない。凡人にもできるイノベーションがある。そのコツの一端を紹介したい。
14
shinshinohara @ShinShinohara

菓子メーカーに就職希望の学生。それをネタにしてみんなで話し始めた。 「どこが希望?」「ポテトチップスの会社です」「みんなで商品企画を考えようぜ」「ポテチを食べる時の気分は・・・」「飲み物が欲しいね。抱き合わせ販売したらいいかな」「コンビニならどっちも買えるよ」

2015-05-26 18:17:48
shinshinohara @ShinShinohara

「飲み物と一緒に買えない場所ってあるかな」「ポテチがある店には飲み物も必ずあるなあ」「自販機は飲み物しかない。自販機でポテチを売るのは?」「ポテチの袋は自販機だと難しいね」「ジュースの缶と同じ容器に詰めたら?」「おお!それならどこの自販機でも売れるね。ツマミにもなるし」

2015-05-26 18:20:34
shinshinohara @ShinShinohara

結局、その学生は別の企業に就職したので企画は実現しなかったが、「自販機にポテチ」は今でもなかなかよいアイディアではないかと思う。どこかやってみないだろうか?

2015-05-26 18:22:13
shinshinohara @ShinShinohara

こうした「茶飲み話」を、私は積極的に楽しむようにしている。「こんなのはどう?」という思いつきを面白がって話し合ううちに、思いもかけないアイディアが生まれる。そんな経験は、皆さんの中にも一つや二つ、あるだろう。

2015-05-26 18:23:25
shinshinohara @ShinShinohara

私はたまたま、これまで不可能とされてきた水耕栽培での有機肥料の利用を実現することができた。140年前に水耕栽培の技術が誕生してから、誰も成功したことがない技術だった。私はたまたま醸造学の知識があったので克服することができた。

2015-05-26 18:24:45
shinshinohara @ShinShinohara

だが、私は創造性の高い人間ではない。むしろ小さいころから創造性に欠ける子どもだと言われ続けて育ってきた。それでも独創的な仕事に成功することがある。もしかしたら、凡人にも創造的な仕事が可能になる、コツのようなものがあるのではないか。ここ数年のテーマでもある。

2015-05-26 18:26:36
shinshinohara @ShinShinohara

イノベーションは通常、スティーブ・ジョブズのような天才だけが達成できるものだと思われている。もしそうだとすれば、ホンダやソニーを立ち上げた創業者たちのような天才が現れないと、日本にはイノベーションが起きないという噺になる。そんなあやふやな偶然を待たなければならないのだろうか?

2015-05-26 18:28:09
shinshinohara @ShinShinohara

私はそうは思わない。凡人でも創造性の高い仕事は可能である。しかしそれにはコツがある。そのコツをつかんだ人が世の中に増えれば、イノベーションはあらゆる場面で発生するだろう。私なりに気づいたイノベーションのコツを、紹介したいと思う。

2015-05-26 18:29:38
shinshinohara @ShinShinohara

イノベーションのコツを示すたとえ話として、「こんにゃく問答」という落語を紹介したい。これはニセ坊主になりすましたコンニャク屋が、旅の修行僧にジェスチャーで問答を仕掛けられ、やはりコンニャク屋もジェスチャーで返したところ、修行僧が「参りました!」と退散してしまった噺。

2015-05-26 18:31:56
shinshinohara @ShinShinohara

横で見ていた友人は、二人が交わすジェスチャーの意味が分からないうちに修行僧が逃げ出したので慌てて追いかけた。すると修行僧は「あの人は大変学のある方。私がジェスチャーで仏の教えについて質問すると、たちどころにお答えになった。修行して出直します」と答え、立ち去った。

2015-05-26 18:33:19
shinshinohara @ShinShinohara

あいつ、実はすごい奴じゃないかと感心して戻ると、コンニャク屋はカンカンに怒っている。どうしたと聞くと「あいつ、俺がコンニャク屋だと見破って、こんにゃくが小さいんだろとか、値段をまけろとかケチをつけやがるんで、最後にアカンベしてやったんだ」と答えた。

2015-05-26 18:34:42
shinshinohara @ShinShinohara

この話は通常、修行僧がニセ坊主のコンニャク屋にまんまと騙されたという笑い話だと理解されている。しかし内田樹氏は異なる解釈をしている。修行僧は間違いなく、仏の真理に近づくヒントを学んだのだ、と。一体どういうことか?

2015-05-26 18:36:03
shinshinohara @ShinShinohara

「誤解が生むイノベーション」というものがある。コンタクトレンズの誕生秘話が典型的。欧米にコンタクトレンズというものがあると聞いた眼鏡屋の主人。しかし実物をどうしても見ることができなくて、やむなく自分で作ってみることにした。試行錯誤の結果できたのは、瞳のサイズの小さなレンズ。

2015-05-26 18:37:27
shinshinohara @ShinShinohara

今でこそ瞳のサイズのコンタクトレンズが市場を席巻しているが、当時欧米で普及していたのは、眼球全体を覆う巨大なガラスで、目の中に入れるのも大変苦労のあるものだった。コンタクトレンズのサイズを誤解したからこそ、瞳サイズのコンタクトレンズは生まれた。

2015-05-26 18:38:37
shinshinohara @ShinShinohara

もし眼鏡屋の主人が欧米で主流のコンタクトレンズの実物を見てしまったら、イノベーションは起きただろうか?「小さなレンズだと目の裏に入ったり危ないから大きくしているんだな」と勝手に納得して、瞳サイズのものを試作する気にもならなかったかもしれない。

2015-05-26 18:39:59
shinshinohara @ShinShinohara

知らなかったからこそ誤解し、誤解があったからこそ先入観を持たずに施策に取り組むことができ、イノベーションを起こすことができたと言える。「正確な情報」は正確だからこそ、イノベーションを阻害することがある。別のことをやってみる勇気が失われるのだ。

2015-05-26 18:41:34
shinshinohara @ShinShinohara

しかし正確な知識がなく、誤解したまま挑戦してみると、イノベーションに発展することがある。「誤解は発明の母」である。誤解をむやみに正すとイノベーションは窒息してしまう。意識的に誤解を利用するのも、イノベーションのコツの一つだ。

2015-05-26 18:42:49
shinshinohara @ShinShinohara

もう一つのイノベーションのコツはソクラテスにまつわる。ソクラテスの名前を知らない人はまずいない。しかし何をした人なのか、なぜ歴史に名を残しているのか、その理由を説明できる人はほとんどいない。私の考えでは、「無知同士の語り合いでも知を発見できる」ことを示したからだ。

2015-05-26 18:45:17
shinshinohara @ShinShinohara

「メノン」という本には、ソクラテスともう一人の数学の素養のない人物が語り合い、まだ誰も知らない図形の新しい公理を発見する様子が描かれている。ソクラテスはただその人に問いを発するだけである。「君はどう思う?」「ほほう、そうするとどうなるのかな?」質問された方は答えようとするだけ。

2015-05-26 18:47:41
shinshinohara @ShinShinohara

ソクラテスは若者に大変人気があった。その理由も「問い」を発するからだった。プラトンの書いた「饗宴」には、アルキビアデスという若者が次のように語る。「ソクラテスのそばにいるとコンコンと知恵が湧き、天才になれた気がするのに、離れるとアイディアが全然出てこない。」

2015-05-26 18:49:31
shinshinohara @ShinShinohara

ソクラテスは若者を教えるわけではない。むしろ若者に教えを乞うかのように、質問する。「君はこれをどう思う?」「それは面白い視点だね。もう少し掘り下げようじゃないか」「そうするとどうなる?」若者は必死になって答えようとし、頭脳が刺激される。

2015-05-26 18:50:41
shinshinohara @ShinShinohara

ソクラテスは、問いを発することで新しい知を発見する自分のやりかたを「産婆術」と呼んだ。自分がアイディアを出すわけではないが、問いを発し、対話を重ねる中で、赤ん坊が生まれるのを手伝う産婆のように、知が生まれるのを助けるのだ、と言った。

2015-05-26 18:52:09
shinshinohara @ShinShinohara

5W1Hと呼ばれたり、コーチングと呼ばれたりしている技術は、ソクラテスが世界史上初めて開発したものだと言ってよい。

2015-05-26 18:52:46
shinshinohara @ShinShinohara

ソクラテスと同時代人に、プロタゴラスという人物がいる。ギリシャきっての天才と呼ばれていたが、自分の知識をひけらかすばかりで、疑問を呈されても膨大な知識でまくしたてることで黙らせてしまった。これでは、彼の言葉をコピーしただけの出来そこないの「蓄音機」を増やすだけで終わってしまう。

2015-05-26 18:54:20
shinshinohara @ShinShinohara

しかしソクラテスの弟子からは、プラトンやアリストテレスなど、彼らだけでも世界史を変えてしまうような人物を輩出した。これはソクラテスが、自分の知識を押し付けるのではなく、問いを発することで若者の思考を刺激する「産婆術」を心掛けたからだろう。

2015-05-26 18:55:42