野尻抱介の文章のすごさについて

オキシタケヒコさんのインタビューにもあるが、ほんとう、野尻抱介の文章は寒気がするほど凄い。俺なんかとても敵わない。『太陽の簒奪者』(長篇版)を読んだとき、これは日本SF史上最高の散文だと思ったし、いまもそう思っている。
2015-05-28 19:10:42
しかしあの凄さはどれくらい認識されているのか。批評家はわかっているのだろうか。実作者でなければわからないのではないか。そう思って『サリバン家のお引越し』のハヤカワ文庫解説を志願したのだった。
2015-05-28 19:12:33
オキシさんが音を上げている、野尻作品の文章の技法を(限られた枚数ではあったが)ミクロからマクロまで、作例をたくさん出して徹底的に追いかけてみた。文は人なり、ではないが、あくまで文章に即して作家像を彫り出してみるこころみだった。
2015-05-28 19:18:20
引用"船尾の不吉な物音を聞くと、マージ・ニコルズは反射的に『隔壁閉鎖』のスイッチを押した。計器に目を走らせながら、右肘で傍らの男を小突く。 「起きてください。社長!」
2015-05-28 19:21:53
社長——ロイド・ミリガンは緩衝席をめいっぱいリクライニングさせて眠っていた。床に雑誌が落ちると、無節操に開ききった大口が現れる。"(引用ここまで)さて、これをどう見るか。いろいろやりかたはあるだろうが、その解説ではこうやってみた。
2015-05-28 19:22:57
"まずは異常発生の瞬間からはじめる手際のよさ。船尾、隔壁とあるだけで場面は宇宙船内だと分かる。オーナーとパイロットが並んでいるから大きな空間ではない。女パイロットは異常を敏感に察知するだけでなく「反射的に」(とあるのはなぜか、考えてみようね)対処する。
2015-05-28 19:23:58
" マージとロイドへいかにも自然に画面のフレームを移し(なんたって肘は「矢印」型ですからね)対比をきわだたせるだけでなく、有能で突っ込み役のマージと、その突っ込みを平然といなすロイドの大きさ、という
2015-05-28 19:24:47
"一貫した人間関係を要領よく予告もしている。(おまけに操縦装置から手が離せない、という情況さえも!) たった五行のこの濃密さ! なのに読み味はさらりとよどみない。これだから「書き込みが弱い」とか「展開が速すぎ」とかそそっかしい読み手に言われてしまうのだろう。
2015-05-28 19:25:02
"しかし、たいていの場合、書くべきことはすべて(ここまで書かなくてもと思うくらい念入りに)書いてある、というのが飛の実感だ。"
2015-05-28 19:25:15
もちろんこれは小手調べで、ここから先、本格的に踏み込んでいくわけなのだが、『フェイダーリンクの鯨』と『太陽の簒奪者』を取り上げた部分は、まじ、多くの人に読んでほしい。星雲賞文庫解説部門があれば、自薦したかったくらいである(いやもちろん自薦制度なんかないけどな)。
2015-05-28 19:27:24
あと、さらにその少し前は、「ハードSFはリーダビリティが多少低くてもしかたない」という認識もあったんだよねー。
2015-05-28 19:40:19
あ、ついでに、インタビューで挙げさせてもらった野尻さんと飛さんには、共通する三つの思いを抱いていることを記しておきます。ひとつは崇敬です。二つめは「こんなの真似できねぇ」という諦観です。三つめはたぶん皆さんも同じでしょう。 「いつんなったら新作読めるんすか!」です。
2015-05-28 19:54:49
昔、アメリカSF作家協会の『SFの書き方』という本で、ハインラインの短編の冒頭部分が紹介されていて、目からウロコが落ちたな。/野尻抱介の文章のすごさについて - Togetterまとめ togetter.com/li/827634 @togetter_jpから
2015-05-28 21:00:54
野尻抱介先生といえば思い出すのが富士見版クレギオン1巻の冒頭のシーンでロイドがマージの生着替えをチラ見して喉を「ゴクリ」と鳴らす描写があったのに、ハヤカワ文庫版だと単にマージがロイドの視線を感じるだけという風に変わってたとこかな…
2015-05-28 21:13:02
星雲賞最多受賞は伊達じゃない/野尻抱介の文章のすごさについて - Togetterまとめ togetter.com/li/827634
2015-05-28 21:16:44
おそれいります(^^;ゞ .@foxhanger さんの「野尻抱介の文章のすごさについて」をお気に入りにしました。 togetter.com/li/827634
2015-05-28 21:26:42
確かに、小説書く仕事を続けることにしたとき、「クラークやニーヴンばかり読んでちゃだめだ、手本はハインラインのジュブナイル」と思っていろいろ読んだんだった。会話から始めるのもその影響。ハインラインはほんとに小説がうまい。
2015-05-28 21:32:27