迷惑な訪問者

ようやく終わった。長ぇ。と言ってもこれっぽっちですが。もっと風呂敷を広げたかったけれど、手におえないので最後は尻すぼみに。いくつかの矛盾は回収できず笑、それでも最後の辻褄合わせのためラストは予定のネタを全面的に考え直しました。 でも翔タイの会話は予定通り。これを読んだ方がそれぞれの方法で彼らを招いて下さる事を願って。またどこかで出会える事を願いながら。
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はぜらん(終) @hazeran_extra

「その土地勘を頼りたいのだ」リーベルトはほっと息をついた。 「でも、なんだかボンヤリしてて、掴みどころがないっていうか…」 「そうなのだ。相手が手練れすぎて、移動の気配を悟らせぬ。私もフレイド殿の助力を得ながらどうにも捉え切れぬのだ」 翔悟は眼を丸くする。「やばくないそれ」

2015-05-21 08:16:26
はぜらん(終) @hazeran_extra

「すぐに動ける適合者として、僕を呼んで下さったんですが」とタイロン。 「最初の降下地点はリーベルトさんが突き止めたんですが、そこから先が。とにかく人がものすごくて」 「多い。それと、妙な瞬間移動を繰り返していて目的がサッパリつかめんのだ」 「でも俺、新宿も詳しくないし…

2015-05-21 08:19:38
はぜらん(終) @hazeran_extra

…それにボーンの存在感はアッチにもわかるでしょ。どうやってつかまえるの」 「私とて空間属性のエキスパートだ。何とか裏をかいてみせる。それに貴方方ふたりもいるしな。 翔悟は主に探知に注力、あと地上路について」 「中々日本のルールを覚え切れなくて…」タイロンが申し訳なさそうに添える。

2015-05-21 08:24:15
はぜらん(終) @hazeran_extra

「俺もあんまし役に立たないよ。けど分かった、すぐ着替えてくるから待ってて。タイロン、リーベルトさんにお水だけでもあげたら」 2人が苦笑する。「ありがとう」「ございます」 *

2015-05-21 08:25:52
はぜらん(終) @hazeran_extra

* 「ふはぁ…ここは息がつける」 3人は緑地帯の広がる公園に辿り着いていた。周囲を遥かに(無駄に)屹立する高層ビル群に囲まれたそのポイントは、ネポスからみれば貧弱すぎる箱庭にすぎなかったが、オアシスである事に違いはなかった。 「コルウス、パン美味いな」とベントーザ。

2015-05-22 08:16:53
はぜらん(終) @hazeran_extra

「……他所のメシはどうせ得体が知れねぇからあえて素材は尋かん」とウルーラ。 「アレルギーが無くて幸運にござる」 「しかし地球人てのはとくにムダ好きみたいだな、この緑地にしろ中途半端だしよぅー。屋敷のひとつも建ちゃしねぇ、獣の群れも放せねぇ」 コルウスは苦笑する。

2015-05-22 08:22:52
はぜらん(終) @hazeran_extra

「拙者も狭すぎるとは思うが、植物の育成ぶりに関しては些か称賛の念も禁じ得ぬ」 「コルウス殿は異星植物学にも傾倒しておられたな」ウルーラはもぐもぐと口ごもりながら、 「だがジンの一尾もおらんとは殺風景なものよ。似たようなほら…翅のある単純なやつなら結構飛んでるが…」

2015-05-22 08:31:53
はぜらん(終) @hazeran_extra

頭上にはカラスがカーカーと騒ぎながら飛び回っている。 「…あれ等は拙者のボーンの兄弟で」 「あのちっぽけなのが?」 ネポスのクロウ類はヒナでもオオワシくらいの大きさである。 「賢さは劣らぬよ」 「で、コルウス殿、目的は何処に」 コルウスは売店のおばちゃんに分けて貰った茶を噴いた。

2015-05-22 08:37:53
はぜらん(終) @hazeran_extra

「俺が説明したじゃねーか」 「あれが説明になっていたか?!そもそもコルウス殿、地球人について些か詳しすぎるではないか。一体、どういう経緯なのか、次第を聞かせて貰おう」 「…そ、それは…」 ベントーザが肘でウルーラを小突き、頭を動かさずに目配せした。

2015-05-22 08:45:44
はぜらん(終) @hazeran_extra

並びのベンチの向かいに座った上品そうな一団が、地下道の人々と同じようにこちらを伺いながらヒソヒソ話を交わしている。 「フン、野次馬どもめが」 ウルーラは天を仰いでうめいた。 「…現地装束を手に入れよう。コルウス殿、心当たりはあるのだろうな?」 提案は尤もにみえた。

2015-05-22 08:50:53
はぜらん(終) @hazeran_extra

「うむ、ないこともない」 コルウスがふと傍らを見た。一羽のカラスが側に舞い降り、ツツと近づいてきた。 「?」 暫しあって、やおらコルウスが立ち上がった。 「図らった。しからば行くぞ」 膝からパンくずを払う。 *

2015-05-22 08:57:19
はぜらん(終) @hazeran_extra

* 「駄目だ、またダミーだ」 リーベルトが悔しそうに言う。明治神宮前である。 「直接ここへ来ていれば間に合ったかもしれない…すまない、2人とも」 「リーベルトさんが見つけた順に辿っていこう、って言ったの俺だし。 ごめんねこちらこそ」 翔悟なりに考えての追跡も見当外れだったようだ。

2015-05-22 19:15:57
はぜらん(終) @hazeran_extra

相手は四谷の交差点から新宿伊勢丹の地下に顕れ、地下鉄づたいに新宿御苑へ入り、さらにグリーンベルトを神宮方面へ向かったらしい。 「訳がわからないよ」 口にこそ出さなかったが、翔悟とタイロンはある思いを共有していた。 (ただの方向音痴じゃないか?)

2015-05-22 19:20:19
はぜらん(終) @hazeran_extra

「いったい、どこへ向かうつもりなんだろう…」 リーベルトは力なく首を振る。「これほど距離を詰めてなお煙に巻くとは。さすがアイアンボーンのクロウ様は並ならぬお方」 「えっ、追っかけてるのってカラスの人だったの」 「言わなかったか?」 「僕は最初に聞きました…」 「教えてよ!」

2015-05-22 19:24:15
はぜらん(終) @hazeran_extra

「ほか、クラーケンのベントーザ様、オウルのウルーラ様」 「ねぇ?…その3人、追いかけ…るの…俺たちだけで??」 * * 「…なぜか、微妙にちがう気がするんだが」 「拙者のイメージだと、地球の日本の基本はこの地にあるのだが…」

2015-05-22 19:31:48
はぜらん(終) @hazeran_extra

3人は、静かな展示室内の、ガラスケースの前に立って声をひそめていた。 「お前なぁ〜」 ベントーザの額に青スジがはしる。「ここの王朝滅びたのいつか考えてみろよ」 「や、滅びてはおらぬが…」 ウルーラはどうでもいいと思ったが、ベントーザの剣幕にだんまりを決めていた。

2015-05-22 19:42:13
はぜらん(終) @hazeran_extra

「で、ではもう少し、若年向けの場所へ行こう。拙者の目的地にも近いゆえ」 「だから、目的って何なん…」 ウルーラの言葉は虚空に吸い込まれ、3人の闖入者の姿は闇に消えた。 薄暗がりの明かりの下、束帯の復元模型は変わらず美しい姿で佇み続け、無人の収蔵室は再び静寂に包まれた。

2015-05-22 19:59:59
はぜらん(終) @hazeran_extra

迷惑な訪問者 後編 * 「えらい騒々しい村だな」 陽も高く明るいというのに、街のあちこちが発光していた。色もさまざま。青、黄、緑…そして赤ランプ。 通りは、何方を向いても人間がぎっしり。 なぜか、大通りでも無さそうな、雑な石畳の脇道ほど、ウンカのごとき人で埋まっているのだった。

2015-05-23 20:59:26
はぜらん(終) @hazeran_extra

尤も、これまでの場所と較べ、人々の装いは、格段にバラエティに富んでいた。 なかにはネポスでも馴染みそうな姿や肌の色もちらほら歩いており、少なくとも、3人が注目を浴びる気配はカケラも無かった。 「この地区は特に寛容なのでごさる」 「最初にココ来いよ!」 確かに溶け込み過ぎている。

2015-05-23 21:08:06
はぜらん(終) @hazeran_extra

雑多で濃厚な空気感は、むしろ異星人がエクェスの庇護を受けて自由に行き交う、ネポスのターミナルやフォーラムのそれに似ていた。 「これはこれで落ち着くな」とベントーザ。 「で、服はやっぱガメるのか」 「店が豊富にあるのだから、荷物倉庫へ入り込めば選び放題だろう」とウルーラも頷く。

2015-05-23 21:17:34
はぜらん(終) @hazeran_extra

「いや、それは難しい」とコルウス。「この辺りの店は殆どバックヤードというものを備えておらぬゆえ、狭すぎて直接移動も儘ならぬのだ」 「じゃあ適当に取り出してこいよ」 コルウスの眉間のシワが深まる。「拙者の能力とて物質の色形までは把握できぬわ」 「ちっ、しゃーねぇな」

2015-05-23 21:24:37
はぜらん(終) @hazeran_extra

何やら白いとぐろをまいたものを手にして通り過ぎる地球人少女たちの後ろ姿を目を丸くして眺めていたウルーラの脇腹をこづき、ベントーザは目の前の下り坂をアゴで示した。 「オラオラ、歩けとさ。とにかく内部を探索と行こうぜ」 「お、おう」

2015-05-23 21:29:53
はぜらん(終) @hazeran_extra

地形に沿って隆起した舗装路とデコボコの建物群の谷を、3人は人をかきわけかきわけ進みはじめた。 * * 3人はぜいぜいと息を切らしていた。 「ここまで近接しながらなお…」 「それさっきも聞いたよ!」 翔悟らはまだ、神宮正門前で立ち往生していた。 タイロンが日傘を傾ける。

2015-05-23 21:32:15
はぜらん(終) @hazeran_extra

縁石に腰かけたリーベルトが彼を見上げて力なく微笑む。 「はい、リーベルトさんに抹茶」 ソフトクリームを買ってきたのである。 「タイロンサンキュー」翔悟もバニラを受け取る。 「どういたしまして」 リーベルトの笑顔が曇る。 「何しに来たのかわからんな」 「休んだらまたやりなおそうよ」

2015-05-23 21:37:15
はぜらん(終) @hazeran_extra

どうやら、コルウスは一帯のカラスをどうやってか味方につけ、ボーンの付属物である「鴉羽(クナイ)」をばらまいたらしい。カラスがクナイを一つずつ咥えて、あちこち飛び回っているのである。 「おかげで撹乱されている」 「そんな事できるんですか」 タイロンがチョコソフトを齧りながら唸る。

2015-05-23 21:46:30
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