四月の終わり 間と狭間

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@aima0022

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2015-05-31 13:33:38
狭間 駿 @c_yu_n

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2015-05-31 13:38:37
狭間 駿 @c_yu_n

狭間】日の射す場所を歩くと、もう暑く感じる。陽射しは、なんだかだんだん、年ごとに強くなってゆく気がする。カラン、とドアベルが涼しげな音をたてる扉をあける。そっと踏み入れて、しずかな空気に一瞬ひたる。

2015-05-31 13:44:34
狭間 駿 @c_yu_n

狭間】一瞬だけ、その空気を深く、吸い込むような表情をしてから、「……、」きょろ、と周囲に目を向ける。目当ての人がいるかをさがして、

2015-05-31 13:54:23
@aima0022

いつもと変わらず、仕事場であるアクアリウムショップで水草の手入れをしている。……外で夜遊びをしているときは派手な出来事を好み、騒がしい街中を歩くのが好きだが、 この場所は、とても静かだ。静かで、のどかで、それがどことなく気に入っている。

2015-05-31 13:42:15
@aima0022

魚を移動させた水槽の中に腕を伸ばし、生えている水草の古い下葉を切り取る。赤い色の金魚草がふんわり揺れた。

2015-05-31 13:45:17
狭間 駿 @c_yu_n

【四月も終わる頃…やがて初夏とよばれる時季】

2015-05-31 13:39:42
@aima0022

入口のドアが開くベルの音が耳に入る。顔をあげればそこに立っていたのは日の光に照らされた白髪に、金の瞳を携えた少年。見知った顔だ。店内では奥に置かれているCDプレイヤーから流れるジャズピアノの曲と、水槽の水の落ちる音が静かに響いている。

2015-05-31 13:50:30
狭間 駿 @c_yu_n

@aima0022 狭間】「 、」こんにちは、と口を開けかけて、店内の静かな空気に飲まれたように、声は出さずにぺこりと頭をさげる。ちらちらと、水槽のきらめきが空気に星のように散っているように思う。

2015-05-31 13:56:17
狭間 駿 @c_yu_n

狭間】水槽の手入れをしているのだろう、水のなかにひたる腕の、ひとの肌のいろを見ながら、紫水晶の鉱石をふうっと連想する。照明に照らされて、水の表面がちらちらと砕けたように光っている。

2015-05-31 13:59:37
狭間 駿 @c_yu_n

@aima0022 狭間】そばに近づいていこうか、それともひと区切りがつきそうな頃合いまで待とうか、ちょっと迷ってから、

2015-05-31 14:02:16
@aima0022

@c_yu_n @c_yu_n  頭をさげた少年を見て「…いらっしゃい」と静かに口を開いた。いくつか切り取った水草を掴み、水から腕を引き上げる。水の波打つ音とともに、ひんやりとした水の温度。長くのびる指にその感覚が残っている。「…今日はどうしたの…?」

2015-05-31 14:03:24
狭間 駿 @c_yu_n

@aima0022 狭間】「…こんにちは、」ゆったりとした、雰囲気によく似合った声がこちらを向いたので、ふたたびぺこりと頭を下げる。こぽぽ、こぽ、とエアーのはじける音。「…近くまで、来たんで。」適当なことをいいながら、二歩、三歩、こちらに目を向けた相手の方に歩みを進めてみる。

2015-05-31 14:09:20
狭間 駿 @c_yu_n

@aima0022 狭間】「……水槽の掃除、ですか?」数秒の沈黙を挟んだあと、ふっと気付いて、訊いてみる。

2015-05-31 14:12:27
@aima0022

@c_yu_n  「ん、魚入れてる水槽の中の水草も……手入れしないと苔とかで、汚くなっちゃうからね…」そう言いながらガラスの蓋を締める。

2015-05-31 14:16:37
狭間 駿 @c_yu_n

狭間】通りに面したディスプレイケースのガラスを通して、日の光がそそいでいる。けれどそれが、ガラスに満ちる水を通しただけで、濾過されて穏やかな、どこか夜のような気配に変わっている、気がする。喧騒や排気ガスや塵芥の気配がなんだか遠い。静かなジャズミュージックの音色。はじけるあぶく。

2015-05-31 14:18:27
狭間 駿 @c_yu_n

@aima0022 狭間】「なにか俺、手伝います?」数歩の距離まで近づいて、背の高い、整った青年の顔を見上げる。へら、と笑ってみせる。

2015-05-31 14:20:17
狭間 駿 @c_yu_n

狭間】腕の中ほどから、つい今まで彼が手を浸していた水槽の、水のしずくがまとわっている。なんとなく、不可思議な気分になる。爪の先で小さく揺れる雫に、ぼんやり意識を惹き付けられる。

2015-05-31 14:23:23
@aima0022

@c_yu_n  見上げた少年の穏やかな瞳が見える。「……手伝いしたい?」問いかけながら、少年にできるようなことは何かなとぽつぽつ考え、

2015-05-31 14:23:42
狭間 駿 @c_yu_n

@aima0022 狭間】「どうでしょう。お邪魔だったら別に…、」逆に迷惑になってはいけないな、と思う。生きものが売物の店だ。

2015-05-31 14:26:06
狭間 駿 @c_yu_n

狭間】ただ、彼の長い指先が水に浸っていた光景には、漠然とした…なんだろうか、羨ましさのようなものを感じた。その感覚は、なんだろうなあ、と、口元に笑みをたたえたまま考える。指先の雫から、ふたたび相手の瞳に目をうつす。水の循環する音。

2015-05-31 14:27:40
狭間 駿 @c_yu_n

狭間】単純に、綺麗な色の瞳だなあ、と、あらためて感じる。深い海…というより、宝石のようだな、と。

2015-05-31 14:29:32
@aima0022

@c_yu_n 「ん、別に大丈夫だよ」尻すぼみになった少年の言葉にふ、と笑いかける。「ちょっと待ってて、」と傍にある洗い場に足を運び、先ほど切り取った水草をビニールに入れてから銀の蛇口をひねった。

2015-05-31 14:28:31
狭間 駿 @c_yu_n

@aima0022 狭間】「………、」その動作を、その場に立ったままじっと眺める。きらり、きらり。この店にいると、ちいさく切り取られた光のかけらが、ちらちらとちりばめられているように思う。蛇口の銀の反射。ほとばしる水の反射。じい、っと、意識しないまま青年の背を見ている。

2015-05-31 14:32:28
@aima0022

一度手を洗ってから、洗い場の正面に描けてあるタオルを手に取り水分を拭き取る。

2015-05-31 14:30:30
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