不知火に落ち度はない　40（海ぼうず）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

つわけで兵頭です。こっからは俺がお送りします。 さてさて、モグリ野郎の情報でバンの方まで走って行こうとしたんですが、えっらいことになってます。 何があったって？ あのさ。 連中バンの中で、すっげえ見たことある銃もってんの。 それもごく最近。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そう、AK47さんでーす。人なんて簡単に蜂の巣にできまーす。 でもって、連中覆面被りましたー。 どう見ても銀行強盗です本当にありがとうございました。 おい、ここ日本ですよ。 なんでこんなハリウッドになってんの。 よりによって病院の日に。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

なお、通行人で気づく人はおりません。 そりゃそうですよ、フツー車を注視して見る奴なんて居ません。 警備員さんもバンの中見てません。 ハザード炊いてるしなあ。 なんつーかさ。日本って平和だよねー。 これで全員モデルガンでした、なら最高平和なんだけどさ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

追いついてきたモグリも不思議そうな顔です。 ぽんぽん肩を叩くので、指差してみたら同じくワーオ顔。 ただいま対策会議立ててます、道路の向こうで。 「どうする？」 「AKは不味いねえ。住民にあたったら大惨事じゃん」 そうなんすよ。実際まずいんすよ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「えっとさ。銃持ってえねの？ そのポケットの膨らみは？」 「期待すんな、これだよ」 取り出してみせる。 「なんでちくわなの」 「帰りにつまんで帰ろうと思ったんだよ」 ちくわしかもってねえ、をリアルにできる日が来るとは思わなかったわ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「もしかして、今地球上で一番ついてないのって、俺達ってこたぁねえ？」 「ダイハードだよなあ」 深々ため息をつく。 と──気づいた。 「おい、モグリ」 「おう、見えた」 ATMのコーナーで、すごい見覚えある奴めっけ。 今一番ついてない男1位決定。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ギンブチ、なんでよりによってお前そこにいんの」 「あいつも病院だったんだろ」 おめでとうギンブチ。 お前がナンバーワンだ。 日頃翔鶴になんかしてるバチでも当たったんじゃねえの？ と、思ったら俺のスマホが振動し始める。 もちろん名前は、鷲塚である。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「はいもしもし、天国直通便です」 『訴訟しますよ。どっちですか疫病神連れてきたの』 俺達のせいじゃありませんのだ。 風評被害ですのだ。 「見えたかお前も」 『ええ。それはもう。一人で対処不可能なので翔鶴に連絡を取ってました』 「やっぱ無理？」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

『で、何か手持ちの武器はあるんですか？』 「ちくわが一個」 「イケメンが一人」 『どっちも役に立ちませんね。盾になってくれません』 「お前行けよモグリ」 「やだよ。面積お前の方が広いし、ちくわの可能性を信じようよ」 ちくわの可能性って何だいったい。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

『なお、もうそろそろ連中も覚悟を決める時間なのでしょう。ここから見るに素人ですね』 「お、そうなん？」 「そいや準備時間えっらい長いな」 『先制は私がやります。足止めしたらどうにかできますか？』 「何人居る？」 「ざっと５人。運転手はコマンダーだな」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「モグリ、お前一人で４人とかやれる？」 「あー……まあ、隙ができれば。ギンブチ居るおかげでどうにかなりそうだし」 「あいつ、なにやる気だろうね」 「あいつのことだからとんでもなく悪趣味な事だろ」 『聞こえてますよ。なお、失敗したら死ぬんで恨みますよ』 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「お前に恨まれてもな」 「ギンブチの恨みってなんかまあ、新鮮だけどさ」 『翔鶴が恨みます』 「はい、がんばろうかモグリくん」 「そうな。絶対ギンブチを無事で返そうな」 やばいです。 なんかあの子さ。 恨まれたら末代まで祟る大妖怪になりそうだし。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

『では作戦決行。連中が出てきたら最低２秒稼ぎますので、その間に仕留めてください』 「はいはい。つわけでモグリ、位置取りよろ」 「他仲間車両ねえの？」 「あったらこの世からおさらばだろ」 「うっわー、死にたくねー。お前は？」 「運転席の奴やるわ」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そうして、俺達はそれぞれの位置に移動。 それからさほどの時間も無く、バンのドアが開き覆面連中がツラを出す。 ずらりと四人勢揃いで銀行へ。 「動くんじゃねえ！」 お決まりの台詞でたたたたんたんたんと、発砲音が響き渡る。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そりゃ奥様大混乱です、って思うじゃないですか。 ざーんねん、そこまで混乱しないのです。 人間空白ができて、一人ぐらい撃たれないと撮影？ とか思っちゃうらしい。 ほら、見てごらん？ 誰一人周囲の人はわかってないご様子でフリーズ。 日本って平和だよね。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

その間に犯人４人はそのまま銀行へ走って行く。 うん。住民を撃たなくて良かった。 ついでにひっそり移動し、近くの柱の陰にいたモグリにも気づいてない。 そして、連中が銀行の自動ドアを開けるよりも早く──誰かが自動ドアをくぐって現れ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

それは、全裸であった。 あまりにも全裸で、まばゆいほどの全裸であった。 そして股間７５度でキープされてるところに、何故かネクタイが締めてあった。 誰がどこから見ても、大変な変態であった。 そしてその変態は、銀縁の眼鏡をかけたイケメンであった。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

おい、ギンブチ。 おい、ギンブチ。 何 故 脱 い だ。 し か も 何 故 ネ ク タ イ 。 あんまりすぎる理解不能な生き物が、銀行から出てきて言い放つ。 「静粛に。諸君はラピュタ王の前にいる」 やべえ、ム○カ様だ。 ジ○リに怒られろ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そして悠々自適に凍り付いてる強盗犯の前まで歩いて行く。 足取りはあくまで優雅で。 そして紳士的に。 流石社交界でも人気の王子様。 こういう時の空気の作り方は最高ってか？ おい、モグリ。お前までギンブチトラップで凍るな！ SAN値下がるけどさそりゃ！！ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「この大砲で私と撃ち合うかね？」 すぽっと指をAKに突っ込む。 未知との遭遇そこにあり。 ETよりもびっくりである。 やめろ揺らすな。その股間の大砲を揺らすな。 ういんういんと器用に動かすな。 公然わいせつプレイって知ってるかお前。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

ほらみろ、連中全員ガン見して動かなくなっちゃった。 ここだけの話、ギンブチな。 でかいんですご立派なんです。 男性劣等感を思いっきり引っ張り出す感じのパーフェクトな大砲持ちなんです。 男女とも釘付け。サラブレッドは股間までサラブレッドである。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

さて、体を張り、意識の空白を作ったギンブチは仕事を全うした。 実際に今十分２秒間は稼いでいる。 その間に『射程内』に完全に入った。 ここからは元オリンピック代表候補、長瀬零司選手の出番である。 フッ、と吐き出す呼吸音が俺の耳だけに聞こえた気がした。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

瞬きをするより早く、モグリのジャブが正確に四回、連中の顎を貫く。 それは音すらもなく、しかし一瞬で脳みそを頭蓋の中で叩きつぶす速度で揺らす。 そして手品のように、覆面の連中は地面に倒れた。 連中にはちんこ見て気絶した、という現実が残ったはずだ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そうして、さっとモグリはAKを回収。 ギンブチはゆっくりと銀行内に戻っていく。 おい、お前。いくらなんでもその当たり前って態度よせ。 通報する人も多分死ぬほど困るから。 そして一方俺はと言うと── 「ハロー。悪い子をお仕置きにしたちくわマンだよ」 #不知火に落ち度はない