失われた時を求めて(2)――『あなたは、なぜ、つながれないのか――ラポールと身体知』を読んで思ったこと

高石宏輔『あなたは、なぜ、つながれないのか――ラポールと身体知』を読んで思ったこと。
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倉沢 繭樹 @mayuqix

高石宏輔さんの『あなたは、なぜ、つながれないのか ラポールと身体知』を読み出したが、冒頭を読んで既に何か腹の底から湧き上がってくる感覚がある。この感覚を言語化するのが「フォーカシング」だが、とりあえずこの感覚を持ち続けたまま読み進めようと思う。

2015-05-25 20:48:04
倉沢 繭樹 @mayuqix

『あなたは、なぜ、つながれないのか』を読んでいるが、他者と同調するためのトレーニングとして、歩いている人と歩調を合わせるということが挙げてある。僕もたまにこれをやっていた。自分は歩くのが速い方なので、だいたい人に合わせる場合、ゆっくり歩くことになる。

2015-05-28 17:43:41
倉沢 繭樹 @mayuqix

『あなたは、なぜ、つながれないのか』読了。高石さん自身の体験と学習に根差した、とてもゆったりとした、しかし確信に満ちた語りを聞き続けた感じがする。たとえて言うなら、午後の室内楽を聞いているような。文章の運びが、彼の語りのペースと一致していると思った。

2015-05-31 00:10:37
倉沢 繭樹 @mayuqix

『あなたは、なぜ、つながれないのか』には、別に学者や理論への言及はないし、難解な学術用語も使われていない。とても平易に語られている。でも、少しでも心理学を勉強したり、心理関係のワークショップを体験したことがある人なら、そうした知見にしっかり裏打ちされていることがわかるはずだ。

2015-06-02 17:58:59

本文

倉沢 繭樹 @mayuqix

中学生ぐらいの頃からだろうか。僕は目的や結論のない話というものに、なぜか違和感を感じるようになっていた。だから、何気ない日常会話をしながら「どうしてこんな意味のない話をしているんだろう?」とどこかで感じていた。

2015-06-02 23:17:51
倉沢 繭樹 @mayuqix

そして「こんなどうでもいい話をしながら、みんなそれに疑問を持っていないようだけど、なぜだろう?」とも思っていた。僕は、誰が好きだの部活がどうだのといった話もいいけど、もっと話すべき大事なことがあるんじゃないのか、と漠然と感じていた。

2015-06-02 23:18:31
倉沢 繭樹 @mayuqix

僕のコミュニケーション下手は、この辺りで明瞭になってきたように思う。

2015-06-02 23:18:49
倉沢 繭樹 @mayuqix

そもそもさかのぼれば、小学校低学年のときに母が父と離婚し、母方の祖母を頼って福岡に引っ越した頃から、環境の変化に適応することを強いられていた。周囲に知り合いが誰もいない場所。コミュニケーションを取るためには、まず自分のことを説明することから始めなければならない。

2015-06-02 23:19:17
倉沢 繭樹 @mayuqix

宮台真司が、「片親家庭の子どもにいい子が多いのはなぜか?」という問いに「自分のことを周囲に説明する必要が生じ、コミュニケーション能力が高まるからだ」といった答えをしていた。僕の場合、片親になり、しかも環境がガラッと変わった。

2015-06-02 23:19:57
倉沢 繭樹 @mayuqix

当時はあまり意識していなかったが、精神的負担は重かったかもしれない。  数年福岡に住み、中学に上がり、小学校からの友達も周囲にいて、新しい環境にすっかり慣れたと思ったところで、問題が生じた。ひどいニキビ面になってしまった。思春期においては、かなりのコンプレックスだ。

2015-06-02 23:21:04
倉沢 繭樹 @mayuqix

これが原因で、女の子とあまりまともに話ができなくなった。いじめも受けた。高校は私立の男子校に進学したが、最もニキビがひどくなった時期で、いつも萎縮していた。人に積極的に話しかけることも少なかった。

2015-06-02 23:21:32
倉沢 繭樹 @mayuqix

こうした様々なことがジワジワと心に重くのしかかってきていて、大学に進学し、神奈川でひとり暮らしを始めたとき、一気に押しつぶされた。「燃え尽き症候群」的な状態になり、それでも一年生の夏休みまでは学校に行っていたが、夏休みに入ってから、まったく無気力になり、部屋にひきこもった。

2015-06-02 23:22:12
倉沢 繭樹 @mayuqix

高石宏輔さんは、大学の学生相談室で初めてカウンセリングを受けたそうだ。しかし、そこで出会ったカウンセラーは彼を受容しなかった。無難に仕事をし、精神科を勧めた。それから数年間、精神科通いの薬漬け生活が始まり、精神科医やカウンセラーをたらい回しにされ、

2015-06-02 23:25:14
倉沢 繭樹 @mayuqix

彼らに嫌悪感しか抱かなくなったという。しかし、そんな生活を何年も続けた末、親戚に紹介されてあるカウンセラーの元を訪ね、そこで真に受容され、回復に向かった。  僕は大学で、そうしたカウンセリングは受けなかった。と言うか、カウンセリングというものを知らなかった。

2015-06-02 23:26:33
倉沢 繭樹 @mayuqix

その代わり、僕を外へ連れ出したのは、新左翼の先輩方とバイトだった。僕は「現代思想研究会」というサークルに入っていたのだが、そこに新左翼のOBが出入りしていて、言わばオルグ拠点だった。かつて学生運動が挫折した後に生じたのが「政から性へ」の流れだったとすれば、

2015-06-02 23:27:19
倉沢 繭樹 @mayuqix

鬱屈した僕は逆に「性から政へ」向かった。また、生活の必要から、バイトには行った。大学では学部クラスに馴染めなかったが、バイトの人たちとは仲良くできた。  でも、今から考えれば、大学時代にカウンセリングなり心理療法なりを受けておけばよかったと思う。

2015-06-02 23:28:10
倉沢 繭樹 @mayuqix

なぜなら、根本的な問題は解決されないまま残り、大学を中退して福岡に戻って来てから、再び精神的に不安定になった。何度かの抑鬱状態と一度の睡眠薬多量服用、自律神経失調症で倒れて救急搬送されたことがあり、心療内科通いもした。そうした中で、R・D・レインや宮台真司の著書を読み、

2015-06-02 23:29:54
倉沢 繭樹 @mayuqix

社会的にひきこもり問題がクローズアップされたこともあり、自分に何かできないだろうかと、ひきこもり者の支援に取り組んでいるカウンセラーの講演を聞きに行くようになった。  ちなみに、R・D・レインの『ひき裂かれた自己』の実存的不安の分析にも感銘を受けたが、

2015-06-02 23:32:02
倉沢 繭樹 @mayuqix

最も印象的だったのは、速水由紀子『家族卒業』中のインタビューでの宮台真司の発言だった。「何かを苦しいと思うとき、苦しいと思う心があるだけなのか、自分を苦しめている環境があるのか。状況に応じてそのふたつの態度を使い分ける機会主義を推奨します」。

2015-06-02 23:32:37
倉沢 繭樹 @mayuqix

これは、社会心理学で、前者を「内部(特性)帰属」、後者を「外部(環境)帰属」という。人は行動の原因を、内部(特性)帰属で処理しがちだということが知られている。しかし、実は外部(環境)も大きく影響しているのだ。この宮台の言葉は、僕をハッとさせた。

2015-06-02 23:33:12
倉沢 繭樹 @mayuqix

さて、そのカウンセラーの講演に通ううちに、自分も何か支援活動がしたいと思うようになった。そこで、その旨を彼に伝えた。しかし、それなりに心理学を学んでいない人には頼めない、と断られた。それが、心理学を学ぼうと思うきっかけだった。ひきこもり者の家族や元当事者でつくる支援団体に入り、

2015-06-02 23:34:10
倉沢 繭樹 @mayuqix

当事者の集まりに顔を出すようになった。そしてまた、バイトでお金を貯め、通信制の放送大学で、心理学を中心に勉強した。  元小学校の教員のカウンセラーが開講している心理学講座に通っていた時期もあった。そこで声をかけてきた女の子と親しくなった。

2015-06-02 23:35:13
倉沢 繭樹 @mayuqix

しかし、彼女は「オルターカレッジ」というカルト的な団体の学校に所属していた。何とか脱退させたくて、「カルトの構造」を分析して、その文章を手渡した。しかし、彼女は「東京へ行きます。お元気で」とメールを残し、去って行った。

2015-06-02 23:35:46
倉沢 繭樹 @mayuqix

高石さんは、こんなエピソードを紹介している。「僕の友人にさまざまな新興宗教に潜入した人がいる。彼はその新興宗教を知るために完全に洗脳されるようにしていたという。彼は必ず、その教団のところに行く前に、机の中に手紙を残していた。

2015-06-02 23:36:36