【本当のこと】 福間健二 #2factory91

福間健二 @acasaazul

月曜日の朝。三人のおばさんが意見を一致させてもりあがっている。気温二十三度の、国立市東二丁目の道端。そうよ、そうよ、そうなのよ。だれかが非難されている。本当のこと。この題は、いま思いついた。歩いてきた両足がチリチリして、もう四本目のわかば。（本当のこと１）#2factory91

福間健二 @acasaazul

きのう、遅い昼ごはんをひとりで食べ、食器を洗っているとメリメリッと音がして揺れがきた。川口にいる姪のところに行っている妻にメールした。すぐに電話があって「二人で手を握りあっていた」と妻は言った。姪は臨月。お腹の赤ちゃんもびっくりしただろう。（本当のこと２）#2factory91

福間健二 @acasaazul

昼は水やお茶をたくさん飲み、夜はアルコール類。水だけで酔う。ドゥルーズから盗んだ主題だが、ぎりぎりまでやっていない。アルコールはよけいな気がする。大声を出しながら、都会の、田舎の、どっちでも見すてられた子どもたちのいる穴倉に届かないのでは。（本当のこと３）#2factory91

福間健二 @acasaazul

こんにちは。ちょうど、ひどい暴力を受けて十字路で泣いている人の肩に手をおく想像をしたところ。そこに行く。驚かせないステップで。そのためにもまず生きなくてはならないが、必要以上に食べている。いまもチョコレートムースのデザートと比較文化論まで。（本当のこと４）#2factory91

福間健二 @acasaazul

失うべきなにかをもつ。そのためにもまず生きなくてはならない。わかりにくい散歩からでもここに出る。炎、あるのだ。光、あるのだ。きのうの自分を引きずっているのだとして、そしてそいつは行く手をふさぐ以外にはたいしたことしないのだとしても、ここに。（本当のこと５）#2factory91

福間健二 @acasaazul

第二部、パタニスカス。妻の得意なポルトガル料理。もどした干しダラを使ったかき揚げのようなもの。パンに挟んで食べよう。第三部、ユニパラス。一度に卵を一個だけ産むこと。引き算を使わない簡潔さのために。第四部、告発と跳躍。炎と光がまだ残っていれば。（本当のこと６）#2factory91

福間健二 @acasaazul

使う。使わない。どっちでもまだぎりぎりになっていない。やはりポルトガル料理の、ひよこ豆とタラのサラダ。小松菜のスープとパン。きのうのお昼。デザートにかぼちゃオイルをかけたアイスクリーム。少々の食べすぎはしかたなくても、第一部が終わっていない。（本当のこと７）#2factory91

福間健二 @acasaazul

月曜日の朝。やりなおしだ。地震を回想するのではなく、記憶は余震に吸いとらせて、キャロル・キング。ひとりぼっちの闇で歌いながら大地が動くのを感じる子どもになって。きのうの自分を引きずる自転車には何がないのか。口をふさぐ手にかみつく場面からだ。（本当のこと８）#2factory91

福間健二 @acasaazul

ミランダ・ジュライの「十の本当のこと」。語り手が言うのは一個だけ。あとの九つはそれの関連事項だって。パフォーマンス。映画。小説。ジャンルをまたいでも問うべきは複雑なひとつ。この世界はどうだめなのか。一番さびしい穴倉に届くようにそれが言えるか。（本当のこと９）#2factory91

福間健二 @acasaazul

「詩人のふりをしているが」と書いた谷川さんについてぼくはなにか言った。なんだったろう。本当のこと。本当は、本当じゃなくてもいいくらい。大事なのは、それを言う相手がいること、かな。さがしている人のじゃまをしないように音なしで夜のページを開く。（本当のこと10）#2factory91