ミイラレ!第三話:青行燈のこと(実況付き)

怪異に好かれる少年と退魔師の少女がなんかするお話。何やら物騒な怪異が接近中。 こちらは実況付きとなります。
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鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

【ミイラレ!第三話:青行燈のこと】 #4215tk

2015-06-09 20:33:03
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

ギィィィィィ……!暗くなってきた空の下、軋みのような断末魔が木霊した。もっとも、これを異常に思う人間はこの場にいない。声の主は崩壊していく怪異であり、その前で油断なく構える三人の男はすべて退魔師だったからだ。その中の一人の手により、周囲には結界が張られている。1 #4215tk

2015-06-09 20:36:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「抹消確認」先頭に立つリーダー格の男の一言に、左右に控えた男たちの肩から力が抜けた。「お疲れ様でした」「お疲れさんッス!」顔を見合わせて笑い合う。「気を抜くな。まだ巡回は始まったばかりだぞ」リーダー格の一言に、二人はバツが悪げに振り向いた。「すいません」2 #4215tk

2015-06-09 20:39:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

彼らは最近になってこの街に送り込まれた退魔師だ。夕暮れ時にこうして街中を巡回し、不穏な怪異を早期殲滅するのが主な任務である。「けど最近、本当に怪異が増えましたね」巡回を再開してから間もなく、一番若い少年が口を開いた。横を歩く青年も同意するように頷く。3 #4215tk

2015-06-09 20:42:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「やっぱりあれが原因なんですかね?最近こっちに来たっていう……」「憶測で滅多なことを言うな」リーダー格の男が嗜める。「件の少年が怪異に好かれやすいのは事実らしいが、それとこの大量発生を結びつけるのは早計だ」「そりゃ、そうかもしれませんけど」少年が口を尖らせる。4 #4215tk

2015-06-09 20:45:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「結局、彼と同郷の子が警護についてるんでしたっけ?」青年が言う。「それで問題なければいいですけど」「同感だ。過激派どもに狙われるような羽目にならなければいいが……」リーダー格が呟いたそのときだ。彼の懐から着信音。退魔師たちの表情が引き締まる。「もしもし」5 #4215tk

2015-06-09 20:48:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

リーダー格は迅速に電話対応した。今、彼らは異界の中にいる。その中でくる連絡といえば本部からのものしかありえない。後方の二人が固唾を飲んで見守る中、リーダー格は相手の情報に耳を傾ける。「……妖怪が接近?こちらに?」妖怪。その言葉が出た瞬間に三人の間に緊張が走った。6 #4215tk

2015-06-09 20:51:15
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「わかりました、迎撃の準備をします。相手の特徴は」残念ながら彼はそれを聞き出すことができなかった。突如として眼前に出現した大質量が、彼を上空に跳ね飛ばしたのだ。「え?」呆然と声を上げる少年の腕を、青年が引いて退避させる!そのすぐ後を『それ』が通り過ぎた。7 #4215tk

2015-06-09 20:54:11
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

『それ』は屋形付きの牛車のような何かだった。牽引する牛の姿はなく、車輪は片側しかついていない。にも関わらずそれは見事にドリフトを決めて退魔師の後方に静止した。走行跡に青い炎がちろちろと燃え上がる。「どこの誰だか知らんが、道の真ん中に広がるのは困りもんだねえ」8 #4215tk

2015-06-09 20:57:24
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

嘲るように言ったのは、屋形の内側で胡座をかいた怪異。白い着物に紺色の羽織を着こむ、薄青い肌をした鬼女だ。「な……」少年がようやく状況把握した。彼は目を怒らせ、得物の札を取り出す!「なんだテメエはッ!」振るわれた札は瞬時に伸び、刃へと変化した。怪異は目を細める。9 #4215tk

2015-06-09 21:00:03
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「なんとまあ無礼な。相変わらず退魔師ってのは野蛮で困るね」懐から取り出した扇子で顔を仰ぐ鬼女は、じろりと少年の隣に立つ青年退魔師を睨む。彼が逃亡防止の結界を張ったことに勘付いたのだ。「さっさと結界を解きな。あたしゃ忙しいんだ」「断る」青年は低く答えた。10 #4215tk

2015-06-09 21:00:43
コセン・ニンジャ @kosn_ninja

ヒキ・ジツだ!もしや、初めての戦闘?楽しみだ。 #4215tk

2015-06-09 21:02:43
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

『それ』は屋形付きの牛車のような何かだった。牽引する牛の姿はなく、車輪が片側しかついていない。にも関わらずそれは見事にドリフトを決めて退魔師の後方に静止した。走行跡に青い炎がちろちろと燃え上がる。「どこの誰だか知らんが、道の真ん中に広がるのは困りもんだねえ」8 #4215tk

2015-06-10 21:02:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

嘲るように言ったのは、屋形の内側で胡座をかいた怪異。白い着物に紺色の羽織を着こむ、薄青い肌をした鬼女だ。「な……」少年がようやく状況把握した。彼は目を怒らせ、得物の札を取り出す!「なんだテメエはッ!」振るわれた札は瞬時に伸び、刃へと変化した。怪異は目を細める。9 #4215tk

2015-06-10 21:04:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「なんとまあ無礼な。相変わらず退魔師ってのは野蛮で困るね」懐から取り出した扇子で顔を仰ぐ鬼女は、じろりと少年の隣に立つ青年退魔師を睨む。彼が逃亡防止の結界を張ったことに勘付いたのだ。「さっさと結界を解きな。あたしゃ忙しいんだ」「断る」青年は低く答えた。10 #4215tk

2015-06-10 21:06:11
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

怪異はその一言で退魔師たちの戦意を感じ取ったようだった。はあ、と大仰に溜息。「どうにも……退魔師どもの増上慢にはうんざりさせられる」「てやあッ!」少年が跳んだ。一直線に怪異目掛けた彼は上段から刃を振り下ろす!「たかだか十年足らずの修練で……」11 #4215tk

2015-06-10 21:09:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

動じることもなく、怪異は閉じた扇子でそれを受けた。一瞬、それぞれの武器が交錯する。「……あたしみたいな妖怪に勝てる気でいやあがる」「ぐ……こいつ!?」「まったくもって片腹痛い!」目を見開いた鬼女が押し返した。少年が跳ね飛ばされる!彼は宙に浮いたまま懐を探った。12 #4215tk

2015-06-10 21:12:15
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

そして取り出したもう一つの札を刃へと変じさせ「このぉッ!」両手のそれを怪異に向け投擲!「ああ、小うるさい」怪異はうんざりとした様子で飛びくる刃を弾き飛ばす!無傷!……戦況を見据えながら、青年退魔師も行動を開始していた。まず落ちてきたリーダーを結界で受け止める。13 #4215tk

2015-06-10 21:15:09
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