加古鷹bot 加古改二実装前夜

加古鷹botの加古改二実装前夜のツイートがとても滾ったのでまとめてみました&中の人に描いたやつも挟んでおいてといわれたのではさみました_(:3」∠)_
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加古鷹_bot @kakotaka_bot

……うー。 もぞり、もぞりと寝返りを打つ。部屋の明かりを消してベッドに潜り込んでもうどれくらい経ったのか。とうに日付は越えたと思うのに一向に眠気はやってきてはくれない。これは我ながら異常事態だ。けれどこうなっている理由は解っている――今日、あたしは、二回目となる改装を受けるのだ。

2015-06-12 01:43:11
加古鷹_bot @kakotaka_bot

改二となるこの日が来ることをずっと待っていた。覚悟も、してた。先に改二となった古鷹に追いつける日をずっとずっと待ち望んでいた、のに。いざその日がやってきて、何故だかあたしはこうも落ち着かない。万全の状態で改装を受けるためにも寝なければと思うのに、ただ寝返りばかりを繰り返している。

2015-06-12 01:47:45
加古鷹_bot @kakotaka_bot

……改装を受けることに、不安はない。あたしはこれでもこの鎮守府で一番古くからいる重巡だ。練度は他の誰にも負けてない自負がある。だから改装もきっと成功するだろうという確信も持っている。 なら、何がこんなに怖いってんだ……? 目を瞑って繰り返す問いに答えは何も浮かばない。

2015-06-12 01:51:15
加古鷹_bot @kakotaka_bot

――ひょっとしなくても。 あたしは、変わってしまうことそのものが、怖いんだろうか。 漠然とした、カタチのない不安。先に改二となった仲間たちは多かれ少なかれ外見と中身が以前とは変わった。恐らくはきっと、彼女たちの望んだように。それまでと少しだけ在り方を前に進めたんだと思う。

2015-06-12 01:56:50
加古鷹_bot @kakotaka_bot

じゃあ、あたしは? そう自分へと問いかけて――答えに詰まってしまう。 あたしは、どんな風に変わるんだろう。いや、そもそも、変われるんだろうか……? (――皆と違って何も残せなかったのに?) 「――ッ!」 ぞわりと背筋に冷たいものが走っていくのを奥歯を食いしばって耐える。

2015-06-12 02:04:45
加古鷹_bot @kakotaka_bot

ああ、くそ。 結局そこに戻っちまうってのか、あたしは。 ……情けない、なあ。ちくしょう。 胸を掻きむしるような、もう届かないいつかから続く痛みに顔が歪むのがわかる。 何度も同じ痛みに打ちのめされては、ぐるぐる堂々巡りしている。 こんなんじゃ、待ってくれてる古鷹に顔向けできない。

2015-06-12 02:14:29
加古鷹_bot @kakotaka_bot

ゆっくりといつの間にか止めてしまっていた息を吐き出して、吸う。何度か繰り返すとようやく少しだけ落ち着けた。 「……はぁ」 寝返りと同じく、寝床に入ってからもう何度零したかわからない溜息が洩れ、さっきまでの気分をどうにか振り切るようにまた寝返りをうとうとして――ぎくりと、した。

2015-06-12 02:25:12
加古鷹_bot @kakotaka_bot

二段ベッドの上段からこちらを覗き込む人影があった。 黙ったまま、左の瞳からいつもより少し弱い光を零すその人影が誰かなんて考えるまでもない。ていうかここ二人部屋だし。 「な――に、してんの」 古鷹ってば、寝てたんじゃなかったの? そう、続けようとすると古鷹は顔を引っ込めた。

2015-06-12 02:35:20
加古鷹_bot @kakotaka_bot

「……古鷹?」 てっきりそのまま寝なおすのかと思いきや、古鷹は黙ったまま梯子を降りてきて。 「……えっ、えっ?」 そのままいそいそとあたしの寝床に入り込んできたのだった。 そうして、いつも一緒に寝る時にあたしがそうするように古鷹が片腕をあたしの頭と枕の間に潜り込ませる。

2015-06-12 02:40:58
加古鷹_bot @kakotaka_bot

ぎゅうっと古鷹の胸元に抱きかかえられるような体勢になって、それから今度は古鷹のもう片方の掌があたしの背中を優しく撫でる。 「――ふるた、」 「だいじょうぶ」 呼びかけようとしたあたしを遮って、古鷹は耳元で囁いた。 「だいじょうぶだから。ね、加古」 まるで、幼子にするみたいに。

2015-06-12 02:47:32
加古鷹_bot @kakotaka_bot

――ああ。 それだけで、どうして古鷹がこんなことをしてるのか全部、全部わかってしまって、口を噤んで瞼を閉じた。 それでも真っ直ぐあたしを見つめる優しい光を感じる。 とくん、とくんという古鷹の鼓動が、聞こえる。 背を撫でる古鷹の掌の感触が――古鷹の全部が、あたしを満たしていく。

2015-06-12 02:52:27
加古鷹_bot @kakotaka_bot

「……さんきゅ、古鷹」 うん、もう大丈夫――もう大丈夫だ。 そうだった、古鷹がいるんだった。あたしはひとりきりなんかじゃ、なかたたんだもんな。 未知への不安も恐怖も分け合える相手が、いてくれる。 変わろうと、変わりたいと願う何よりも強い理由が――今度こそ護りたい相手が、此処に。

2015-06-12 02:59:02
加古鷹_bot @kakotaka_bot

「……うん」 瞼を瞑ったままでもわかる、古鷹の笑う気配。 「加古ったら、こんな時にも素直に甘えに来てくれないんだから」 少しだけ拗ねたような響きで囁かれ、参ったなあと思う。 ……だってさ、格好悪いトコ見せたくないじゃんか。 「たまにはお姉ちゃんらしいこと、させてよ。……ね?」

2015-06-12 03:04:20
加古鷹_bot @kakotaka_bot

あー…もう、そんな風に言われちゃったら、降参だ。 「ん――じゃあ、古鷹。あたしが眠れるまで、こうしてて」 「……うん、よろこんで」 そう嬉しそうに頷く古鷹の声を聞き届けると同時に、さっきまであれほどやってきてはくれなかった睡魔が襲い来るのを感じる。 ……ったく、もう、本当に。

2015-06-12 03:11:45
加古鷹_bot @kakotaka_bot

「おやすみ、加古」 古鷹の声が遠い。 世界で一番安心するぬくもりに抱かれて、もうこれ以上一秒だって襲い来る眠気に勝てそうにない。 ……おやすみ、古鷹。 明日、起きて改二になったら――きっと。 言葉にならなかった想いを無くさないように握り締めて、あたしは眠りへと落ちていった。

2015-06-12 03:17:08