リプで来た艦娘四肢切断してみた/メカバレさせてみた

黒江きよ @kiyo_kuroe

大洋の中、人類の勢力圏を離れた小島の小さな泊地にて。青白い肌に、黒革のような衣装の女性が二人、手術台を挟んでいた。手術台には別の女性がベルトで拘束されている。見るものが見れば、青白い肌の二人は深海棲艦だと人目でわかるだろう。人類から海洋の支配を奪った人ならざる何者か。（１）

黒江きよ @kiyo_kuroe

巨大な帽子を被った小柄な女が、手術台でもがく女を見ながら言った。「で、この頭の中を開いてみる、と？」鋭い雰囲気を持った、黒髪の女が答えて言った。「そうだ。練習艦とやらの秘密を探らねばならん」「もしかしたら死ぬだけかも」「その時は我々の仲間に入れてやればいい」（２）

黒江きよ @kiyo_kuroe

手術台の上で鹿島はもがいた。抵抗できぬように外された手足の先端で、アクチュエータが空しく駆動音をたてていた。やめて。そんなことをしても何も出てこない。叫ぼうとしたが、声帯もやはり外されていた。これも通信を防ぐためだ。（３）

黒江きよ @kiyo_kuroe

それは事実だった。訓練用の各種プログラムはソフトウェアとして組み込まれており、情報を読み解くには鎮守府の端末を使わねばならぬ。彼女の頭を開き、ハードウェアを見たところで何も得るところはないのだ。そんなことを知らない深海棲艦は、彼女の耳に手をかける。（４）

黒江きよ @kiyo_kuroe

プシュ、と圧の抜ける音がして、鹿島の頭蓋が前後に大きく開く。金属の頭蓋の中から、ヒートシンクに覆われた電子頭脳の中枢が露出する。鹿島という人格を生み出す、彼女そのものであった。「電子式か」「読み取れそうか？」「わからない」「外してみろ」（５）

黒江きよ @kiyo_kuroe

（外す？）鹿島は戦慄する。頭脳だけを稼働中に抜き取られることは、不可逆な記憶と意識の消失、即ち死を意味する。（やめて、助けて）叫ぼうとも、声帯は既にない。感覚器のないはずの脳に、手が触れるのを感じる。固定ネジを外すドライバーの無慈悲な回転音。（６）

黒江きよ @kiyo_kuroe

そして、手足のない身体をびくん、と一度震わせて、鹿島はその全機能を停止した。（７・了）