クメールルージュが作った革命思想宣伝映画が拷問だった話

Banjoe　ヘール・ヤッターレ！ @Banjoe1971

リティ・パニュ監督「消えた画　クメール・ルージュの真実」を見る。クメール・ルージュ統治下のカンボジアで家族が次々殺される中、運良く生き延びることができた監督自身の体験に基づくセミドキュメンタリー。過去の情景は回想ドラマではなく、手作りの土人形で表現されているわけだが。

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映像も写真も残されていない平和だった頃・クメール・ルージュの過酷な支配で次々いなくなっていく家族の情景が土人形とジオラマで表現される様は、一味違った生々しさがある。内容は素晴らしい……が、本題とは微妙にずれるが作中で一部使われた「クメール・ルージュ製作の宣撫映画」が興味深かった。

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にわか農民にされた都市住民への革命思想宣伝のため、労働の終わった夜に見せられたそうだが、その映画が実にひどい。ごく数分が使われているだけだが、それだけでお腹いっぱいになるレベルのひどさだった。プロパガンダ色が強すぎてひどいとかじゃなく、純粋にダメ映画というかなんというか。

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見た感じ、劇映画として撮られていたようで「革命戦士が超人的な活躍をするアクションもの」みたいな感じだが、中学校の学芸会か！と見まごうレベル…いやもっとひどいかも？役者の演技もひどいが、カットを割るという観念がないのかこれは。

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まあ、革命前の映画関係者からなにから皆殺しにしたのでろくな人材がいなかったのはわかるが…。一例を上げると、クメールルージュ側の兵士が矢を一本射ただけで山中行軍中のロン・ノル兵の一列縦隊がバタバターっと「わあやられたー」って倒れるんだが…。明らかに前の奴が倒れたのを見て倒れてる。

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他にも、普通に矢で射られて死ぬ別のシーンでは、地面に置いてあった矢を拾って自分の胸のあたりに突き立てる動作して、「うわあやられたー」ってしゃがみながら手足バタバタさせたもがき苦しんで死んどる。……こんなのを、労働で疲れたところに見せられたらしい。遠回しな拷問だろ、それ。

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強制労働を強いられ、家族とは引き離され、その家族も次々死に追いやられ、常時飢餓状態。その上たまにクズ映画を見せられ、その内容を批判することも許されない。なんだこの地獄。クメール・ルージュはあらゆる面でカンボジアを滅ぼそうとしたんだな、と改めて感じる。

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リティ・パニュ監督も「多くの人が途中で寝た。私も寝た」と言っているが…。むしろ、そのクメール・ルージュ謹製の革命劇映画、全編見てみたくはある。いや、一度だけで十分すぎるとは思うが。

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考えてみれば、プノンペンの都市住民て革命以前にカラーテレビ見てたし欧米の映画見てたわけだから眼は肥えていただろうにな。そこに学芸会以下の生フィルムより価値が低そうなブツを「映画だ！」って見せられたらたまらんわ。

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てなわけで、「消えた画　クメール・ルージュの真実」お勧めです。ユーモラスな土人形で表現された不思議な生々しさで映画自体も素晴らしいですが、中で使われてるクメール・ルージュ製革命戦士映画にも興味がわきます。一粒で二度美味しいデス。