【レズボス鎮守府】プロジェクトD 【ドボク鎮守府】其の十一 神様こんにちは
「あ~、司令官とイブキ殿が気があった理由がこれですね。古典建設機械…。」 大潮が納得したように話す。 「そう、スチームショベルで鍬入れという訳だ。ただの鍬入れじゃつまらんだろ?」 #ドボク鎮守府
2015-06-22 23:34:00「さてと、ワシもやるかの」 比良坂提督が操縦席の初霜と変わり、ショベルに乗り込んだ。脇の機械室では若葉がセッセッとボイラーへ石炭を投げ込んでいる。 そして盛砂の前に一台の蒸気機械と一人の起重機船娘が立った。 #ドボク鎮守府
2015-06-22 23:41:08「ちょっちょっ、提督。鍬は?鍬!」伊勢が鍬が無いと騒ぎ出す。 「何言ってるんだ?アタシはクレーンだぞ。道具くらい持ってきてらぁ」 腰に着けた道具入れから真っ黒な鏨(のみ)先のようなモノを取り出す。 「穿初め(うがちぞめ)の儀式だからな?砕岩棒を持ってきた。」 #ドボク鎮守府
2015-06-22 23:49:00【龍驤のドボ知識】 起重機船や浚渫船の奴らが岩盤や構造物を破砕するときに、つこう巨大な鏨(のみ)。 それが砕岩棒や。持ち上げて落とす!迫力あるんやでぇ~。 八戸港 災害復旧 ケーソン取り壊し youtu.be/EMZnV1ppvb4 #ドボク鎮守府
2015-06-22 23:55:11<<それでは提督さん。穿ち初め~初めてくださぁい~>> 那珂の放送が会場に響く。なるほど司会向きであるな、彼女の喋り方は。 まずは比良坂提督からだ。 「んん~、っしょ!レバァが重いのう」 煙を上げ、蒸気ショベルのバケットが盛砂を崩す。 #ドボク鎮守府
2015-06-24 00:02:49砕岩棒
那珂の掛け声に応じて蒸気ショベルが盛砂を崩していく。 比良坂提督が安全帽を被りながら操縦している。魔女にも中々、黄色いメットは似合うな。 次は私の番である。 #ドボク鎮守府
2015-06-24 00:58:50盛砂の前に立ち、黒く輝く砕岩棒をフックに着け、ウインチを巻き上げる。 「いいか?伊勢、よぉく見とけ。これが岩を砕くという事サ。起重機戦闘術のちょっとした応用だ。」 「これ、地鎮式なんですが。」 #ドボク鎮守府
2015-06-25 20:26:11「起重機船三光!穿ち初めぇ、レッコォ!!」 舫を放す、錨を落とす事を「レッコ」という。物を放つ意味だ。 実際重量約60トンもの砕岩棒を巻き上げていたウインチのドラムブレーキが緩み、ワイヤーロープと鉄の巨大なノミが盛砂目掛けて解き放たれる。 #ドボク鎮守府
2015-06-25 20:35:34砕岩棒が砂を衝く!60トンの鉄の塊を巻き上げる!起重機船が砂を衝く!巻き上げ!レッコ!砂山が崩れる!60トンの鉄の塊を巻き上げる!!起重機船が砂を衝く! ガガン! そして起重機船が3度目に振り上げた時、砕石棒の刃先が欠けて跳んだ! #ドボク鎮守府
2015-06-25 20:42:52「あっ、やべ」 砂の山なのになぜ刃先が欠けたのか?入念に手入れをしたはずなのに…。 そして数十トンの砕岩棒の刃先が会場の見学ブースへ目掛けて飛翔する!ヒヤリハットどころではない労働災害、いや地鎮式災害。 #ドボク鎮守府
2015-06-25 20:48:04刃先が吹っ飛ぶ1分前… <<スタンバーイ…スタンバーイ…>> 地鎮式会場を島の中央部の山頂から高倍率スコープを睨む祥鳳がいた。 <<起重機の鏨、落ちるわ>> <<普通の鍬を使わないのかしら?>> 隣にいるのはサポートの鳳翔。二人共、レズボス側の艦娘である。 #ドボク鎮守府
2015-06-25 21:06:04祥鳳が無線越しに話す。<<お客様は重機ですから>> 鳳翔が答える。<<あれがドボクのやり方という訳ね>> 二人は地鎮式会場の警護役であった。弓使い故にスナイパーという訳である。 #ドボク鎮守府
2015-06-25 21:10:44<<砕岩棒ふっとんだぁあーー!!>> 司会の那珂のアナウンスの絶叫とともに、数十トンの刃先から逃げ惑う群衆。 「これだから変なモン持ち込むなって言ってるんですよっ!」 大潮の愚痴も吹っ飛ぶ。 そしてヒュルヒュルと空を舞う砕岩棒。 #ドボク鎮守府
2015-06-25 21:14:30砕岩棒があわや観客席に。伊勢とレズボスの榛名が砲を慌てて向け用途した瞬間、パァンと甲高い金属音のような音が響いて棒が砕かれた。 「やれやれ…ですじゃ」 ポカンとするドボク提督へ比良坂提督が言った。 「こういう突発自体に、わが艦隊の弓使いを備えておきましたからのう」 #ドボク鎮守府
2015-06-26 20:08:16比良坂提督が顔を向けた方向を見ると、奇岩が目立つ山の頂上で何やらきらめくものが見えた。…、なるほどあの距離で当てるか。弓使いということは空母で練度の高さが窺い知れた。敵に回したくはない艦隊である。 #ドボク鎮守府
2015-06-26 21:11:13なんで砕岩棒が折れたんだ…?使用前点検も行ったし、得意先の製鉄所との非破壊検査の立会でも傷等の異常はなかった。そういや砂の中になんか硬い感触があったな。 盛砂を手で掻き分けて見るとそこから石が出てきた。花崗岩…?花崗岩の箱だ! 石の箱が盛砂に中にあったのだ。 #ドボク鎮守府
2015-06-27 00:38:41「なんです、この石の蓋…?」大潮が覗き込む。 「…大潮。盛砂をここに盛ったときにこの石の箱はあったか?」 「…えっ、ないですよ。あったら報告してます。なんです、なんなんです、これ!?」 大潮は恐ろしくて足を震えさせている。 #ドボク鎮守府
2015-06-27 00:43:23「開けるべ」「え?ええ!?」「現場にこんなモン置いといちゃ危ない。中身を調べよう」 「まってまって!大潮、ココロの準備が…」 そんなやり取りをしていると、何時の間にか比良坂提督が箱に手を触れていた。 掌から小さな魔法陣が展開し石の蓋と箱の間の隙間をなぞっている。 #ドボク鎮守府
2015-06-27 00:52:57「フムン…、おおっ、おったおった…。眠っとるな」 比良坂提督は納得したように手を石から離した。 「なんか、中に居るのですか?」 「めんこい娘が寝ておる…いや生まれるのを待っとる…という方が正しいかの?」 #ドボク鎮守府
2015-06-27 01:20:20私はワイヤーの先のフックにクランプ状の石吊り用具を4個着けて、石の蓋の隙間に挟み込んだ。玉掛け妖精を繰り出して4点吊りで蓋を持ち上げる。妖精が片手を上に上げて手で輪をかく合図を出すと巻き上げ開始だ。自分のウインチが唸り、ゴリッと小さな音を立てて蓋があがる。 #ドボク鎮守府
2015-06-27 01:34:37玉掛け妖精が手笛で吹くピーピーという音色が響く以外は、皆黙って様子を見守っていた。 何十年のいや、何百年という間、箱を守ってきたような貫禄の石蓋が開き箱の闇の中に陽光が射す。 #ドボク鎮守府
2015-06-27 01:47:52