Get Over

りえぷぅ @riem124blue

1 「そんなの、気の持ちようだろ？」 そんなの解ってるよ…。 「もうさ、やられたら、やり返すってやつ、やりゃいーじゃん。」 それができないから困ってるんじゃない…。 この人は悪い人じゃないし、こういうことだってこの人なりの優しさからくる言葉。 ただ理解してくれてない…。

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2 長い間１人で抱え込んでいた会社での人間関係。 そのストレスから体調を崩してしまい、とうとう同僚でもある彼に話した。 彼はちゃんと話を聞いてくれたけど、その応えはどうもピンと来なくて…。 結局また１人で考え込むようになって、そのうちだんだん馬鹿らしくなってきた。

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3 こんな体調崩して、通院・服用しながらまでも、しがみつかないといけないような会社？ わたし…そんなにこの仕事好きなんだっけ…？ いっそ辞めちゃえば、楽になるんじゃ…。 そう思ったら、それが最良な気がして。 わたしはすぐに辞める決心をした。 「良かったじゃん。」

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4 彼は優しく笑ったけど、なんだかそれもピンと来なくなっていた…。 長かった会社勤めも、彼との付き合いも…思い切って別れを選択した。 いわゆるアラサー…これからまたイチからのやり直し。 仕事もだけど、恋愛も…今からまた…って、わたし大丈夫なのかな…？ 正直すごく不安。

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5 「ご結婚の予定はないですか？」 会社の面接で必ず聞かれたこの台詞。 当たり前の質問なのかな…って、思ってたけど、最後に受けた会社で、そんな質問はされなかった。 「ウチの会社小さいし、社員は家族みたいなもんで、仲良くやってもらいたいんですけど、できる思いますか？」

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6 「なんやその質問。」 「大事なことやろ？」 「まぁ、そぉやけど。」 「なんかほれ、笑顔えーし、接客業やねんから、もーそんだけで合格やろ？俺にはピンときてん。」 「なんや、面接途中やのにそんなん言うんか？」 「あ、まー…そうか…。あー、えっと、採用かどうか、連絡しますね。」

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7 「あ、ほんで、どぉですか？仲良うできそうですか？」 「はい！」 できる、と思った。 この２人が上司なら、大丈夫だって。 根拠は全くなかったけど、不思議とそう思えた。 そしてわたしはこの楽器店で働くことになった…。

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8 同期の亮ちゃん、章ちゃんともすぐ打ち解けて、前の会社でのストレスが嘘みたいに楽しい毎日。 そして、早速開かれた歓迎会で、初めて彼に出会った。 丸山「いらっしゃいませー！！」 すごく素敵な笑顔だと思った。 社長たちの後輩らしい丸山さん。 すごく仲良さそう。

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9 丸山「それにしても、美人さんばっかりですねぇ♪」 なんて…お世辞だと分かってたけど、不覚にも少しドキッとしてしまった。 丸山「これ、おまけです♡良かったらどーぞ！」 アイスを持って来てくれた彼の笑顔にドキドキする…これって…。

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10 横山「おー、ありがとなぁ。どーや、親父さんの体調は？」 丸山さんはお父さんが病気で倒れたのをキッカケで、このお店を継ぐことにしたらしい。 丸山「まぁ、体がちょっと不自由なだけで、後は元気ですわ。まー、口煩い口煩い！毎日店はどうかって聞かれますわ！」

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11 色々大変なんだな…。 こんなに素敵な笑顔だけど…。 横山「店は繁盛しとるみたいやけど、順調なん？」 丸山「そちらも、お陰様で。まぁでも、物珍しさに来てくれとるお客さんもいはるから、こっからが勝負ですね！ランチ営業も考えとるんですけど、どうですかねぇ？」

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12 横山「おー、そん時は来るで！」 丸山「ホンマですか！ほんなら、本格的に考えますわ！ひとつ、御贔屓に♡」 ランチだったら…わたしも１人で来れるかな…？ って！…やだなぁ…わたし…。 これって…なんか恋しちゃったみたいじゃない…？

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13 ―――――― 丸山「いらっしゃいませー♡」 先日は社長がランチに連れて来てくれたけど、今日は１人。 社長がいなくても、丸山さんの接客はいつものように優しい笑顔で。 接客が長引いて遅い時間になったから、お店は空っぽ。 ◎◎「ランチの時間って終わりましたよね？」

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14 丸山「いやいや、大丈夫ですよ？」 ◎◎「いいんですか？」 丸山「えーよえーよ♪全っ然大丈夫！」 ◎◎「じゃあ…お願いします…。」 丸山「はいはぁーい♪」 わたし、一目惚れとかするタイプじゃなかったのにな…やっぱり彼の笑顔にドキドキしちゃう…。

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15 丸山さんのこと…ほとんど知らないのに…。 丸山「お待たせしましたぁ♪」 何故か２人分のランチを持ってきた丸山さん。 丸山「一緒に食べてもえぇかなぁ？」 ◎◎「え、…あ、はい…。」 店内を見渡す。 やっぱり、お客さんはわたしだけらしい。

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16 ◎◎「いただきます…。」 丸山「召し上がれー♡そして、僕もいただきまーす！」 カウンターに並んで食べる。 き…緊張する…。 丸山「今日遅かったんやね？」 ◎◎「接客長引いちゃって…。」 丸山「そーなんや。そっか、放ったらかして休憩入るわけいかんもんな？」

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17 ◎◎「はい…。丸山さんはいつもこの時間にお昼ですか？」 丸山「そ！お客さんおらんくなってから取んねん。そっからちょっと、休んで夜の準備。」 ◎◎「大変ですね…。すみません、遅くに来て…。」 丸山「気ぃ遣い屋さんやな～。むしろ一緒に食べれて嬉しいけどなぁ？」

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18 “気ぃ遣い屋さん”か…。 それだからダメだったんだよね…前の会社…。 わたしにしてみたら、普通の気遣いだったんだけど…。 丸山「会社、楽しい？」 ◎◎「えっ？」 丸山「横山先輩も村上先輩も、あと☆☆先輩も、みーんなえぇ人やろ？」 ◎◎「はい…とても。」

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19 丸山「なー？僕もめーっちゃお世話になってん！」 ◎◎「そーなんですか…。」 丸山「…会社ではあんまり気ぃ遣ったらあかんで？まー、全く遣わんのもあかんけどなぁ？」 そしてまたにっこり笑った。 なんか…わたしの過去を知ってるみたいなこと…。 そんなわけないのに。

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20 丸山「休みの時とかは何してはるん？」 ◎◎「そうですねー…特にこれというのはないですけど…街ブラブラしたり、逆に家でゴロゴロしたり…とか？」 丸山「そっかー。彼氏は？いてへんの？」 ◎◎「あー…はい、いません。」 気になる人なら、今、目の前に。

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21 丸山「お！やったぁ！ほんならデートとか誘いたいなぁ♡」 ◎◎「はっ？えっ？！」 すごくびっくりして焦る。 丸山「あかん？えぇやーん、デートぐらい、なぁ～？♡」 ニコニコしてじっと見つめられる。 デートって…。 誘い方軽いから、まぁ、本気じゃないんだろうけど…。

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22 ◎◎「…い、いいですけど…。」 丸山「ホンマぁ？！やったぁ♡ほんなら早速連絡先交換してもらってえぇ？」 一体どういうつもりなんだろう…。 ずっとニコニコしてるから、本心が逆にわからないなぁ…。 丸山「登録…よし！！ありがとぉ♡連絡するなぁ♪」

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23 ―――――― 錦戸「えっ？！丸山さんとデートぉ？！」 ◎◎「しぃーっ！！」 錦戸「はぁぁっ、ごめっ！」 安田「へぇー…丸山さんかぁ…。」 営業から帰ってきた２人に捕まって、白状させられた。 どうやらいつもと様子が違ったらしくて、問い詰められた結果。

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24 ◎◎「どう…思う…？」 安田「えぇ人そぉではあるけどなぁ？」 錦戸「なんかでも、いっつもニコニコしとって、怪しない？」 安田「でも社長の後輩やろ？悪い人ではないんちゃうー？」 錦戸「アホか！えぇ人でも、女にダラしないヤツもおるって！」 安田「まぁ…そぉか…。」

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25 ◎◎「・・・・。」 錦戸「やっ！でも、デートくらいえぇんちゃう？！」 安田「どっちやねん(笑)さっきのはどう聞いても反対意見やったで？なぁ？」 ◎◎「うーん…。」 錦戸「でもいきなりホテルにでも連れてかれんなら平気やって！」 ◎◎「ホテルって…。」