そういわれて思わず山姥くんのほうを見る燭台さんだけど、彼は動じず黙々と部下と彼が連れてきていたボディーガードを縛り上げていた。自害させないように猿轡までかけている徹底振り。 「なんだ。わかってたんだ」 「なかなか胡散臭い依頼人だったから事前に調査はしていますよ。あなたみたいにね」
2015-07-01 20:17:38次男が言うように実は燭台さん、部下の動向を怪しんで極秘に動向を探っていた。敵対組織と繋がりあれこれ情報を流していたらしいが、決定的な証拠がつかめずにいたのでぼろを出すまで泳がせておいたのだ。 「何のために君の弟を雇ったのかは謎だけどね。暗殺したいならそう依頼したらいいのに」
2015-07-01 21:34:12「暗殺は高く設定しましたからね。かといってこのまま引き下がったら余計に怪しまれるし、忠誠心を示して疑いを避けたかったんじゃないですか?」 「ああ、あのふざけた料金プラン」 「悪人には妥当ですよ」 暗殺とか裏切りを匂わせるメニューはあらかじめ部下が削除していたが、おそらく国の半分は
2015-07-01 21:43:55買える法外なものだったのだろう。 「あのふざけた契約書は火の粉を避けるためかな?」 「こっちも軍の幹部を暗殺したなんて言いがかりはつけられたくないんで」 「でも会話くらいは許して欲しかったな。彼は頼もしかったけど居心地が悪くてさ」 「おかげで悪人をつれてよかったじゃないですか」
2015-07-01 21:51:06しれっというお兄さんに燭台さん苦笑。 「だったら刃を向けなくてもよくない?あのさっきは相当だったよ?」 「だからテストって言ったじゃないですか。判断はよかったですけど反応はイマイチでしたね。僕たちを餌にするならもう少し速くならないと逃げ切れませんよ」 「肝に銘じておくよ」
2015-07-01 22:06:39「(ここまであっさり侵入できたことや情報収集能力とあの太刀筋。さすがは暗殺の達人、堀川国広というべきか)」 頷きながらも分析は忘れない職台さんだった。 その頃山姥くんは縛り上げた裏切り者たちを燭台さんがあらかじめ手配していた警備兵に引き渡していた。 「兄弟、話は済んだのか」
2015-07-01 22:16:21「これからだよ兄弟。迷わず僕にも刃を向けれるようになったね」 「一瞬の迷いは命取りだといったのはあんただろう」 「よく覚えてたね、えらいえらい」 子ども扱いするなと怒る山姥くんにニコニコ笑う堀川くん。さっきのテストには弟も含まれていて、過保護に見えてしつけはしっかりしているらしい
2015-07-02 06:22:59燭台さんに見られていることに気づき、子ども扱いされているのが恥ずかしくなったのか布を被って顔を隠す山姥くん。 「もう隠さなくていいじゃないか。綺麗なのに」 「綺麗とか、言うな」 もったいないと思いつつも堀川くんの殺気が恐ろしいことになっているからこれ以上は触れないことにする。
2015-07-02 06:26:40燭台さんが引っ込むと堀川くんも殺気を消して、何もなかったかのように話を進める。やっぱりこの兄は過保護である。 「本題に入りましょうか。え~と光忠さん?契約主はさっき僕が倒しちゃったし、改めてあなたが兄弟を雇う。ということでいいですか」 「そういうことだね。できれば仕事中はずっと」
2015-07-02 06:35:28「兄弟、それでいい?」 「問題ない。むしろ隙が多すぎるからこれくらいがちょうどいいだろう」 外で待機していたはずなのにそんなことを言う山姥くん。 「君、いつ見ていたの?」 「あんたの部下に小型カメラをつけさせてもらっていた。それと一通りの護衛でだいたいはわかる」
2015-07-02 06:43:03自分も観察されていたことに舌を巻く燭台さん。 「弱くはないんだろうが自信がありすぎるんだ、あんたは。並のやつには殺されないと高をくくっている。確かにあの裏切り者どもは倒せただろうが、もし金に糸目をつけなかったらあんたは俺か兄弟に殺されていたぞ」 「随分いってくれるね…」
2015-07-02 06:50:18ずばずば言われて少々へこむ。単純と思っていたけど戦場を駆け抜けてきただけあって彼は凄腕だった。しかし燭台さんは切り替えが早い。こんな頼もしい傭兵を味方にできたのだから安泰だ。何より彼の後ろには暗殺者ともう一人の兄もいる。 「この観察眼と強さでこれからも護衛を頼むよ」
2015-07-02 07:05:48「契約期間内はな」 握手を求めるけど山姥くんが応じる前に堀川くんが分厚い紙束を差し出してまた阻まれた。 「握手より先にこれに署名してくださいね」 ことごとくガードしてくる堀川くんに若干殺意を抱きながらも契約書を読み返す。 「今度は会話はOKなんだ」 「どうせ破るんでしょう?」
2015-07-02 07:38:05「ああ。どうせなら仲良くしたいからね」 そういってちらり山姥くんを見るけどぷいと顔をそらされた。 「(布を取ってくれるまでの仲になりたいっていったら、暗殺されるんだろうな)」 正直な話、国広兄弟を敵に回すことを恐れてはいなかった。契約変更も裏切り者の欲をかきたてて襲撃させるために
2015-07-02 07:44:24わざと言ったのだ。いざとなったら、国広兄弟にすべての罪をかぶせるつもりだったし自分が殺されたときの対処は万全である。 でも暗闇の中で一人で敵をほぼ倒した山姥くんと堀川くんの侵入でそれは間違いだと気づいた。仮に二人を陥れても最後の一人の長男が自分を、いやこの軍自体を壊滅させる。
2015-07-02 07:48:56あったことも噂すら聞いたことがないけれど、山伏国広はきっと彼らより強い。 という軍人としての判断もあるけど、本当の理由はもっと別にある。 「(傭兵にしておくにはもったいない美貌だよ、あれは)」 そう。燭台さんは面食いで、山姥くんの素顔を見て一目ぼれしてしまったのだ。
2015-07-02 07:56:16戦う彼は確かに壮観だ。 しかし布を取り、薄汚れた格好を着替えさせたらどんなに様になるだろうか。 金で切れる護衛ではなくて直属の部下としてそばに置きたい。今は顔とその強さと少し単純な性格しかわからないが、いずれその心の奥底まで知り尽くしたい…… 「光忠さん!署名はしないんですか?」
2015-07-02 11:12:33「あぁ、書く!書くけどもう少しスマートな契約内容にしてくれないかな。読み終わるまで時間がかかるよ」 堀川くんに現実に引き戻され、慌てて読む作業に戻る燭台さん。 「面倒なら署名してから読んだらどうです?」 「詐欺師みたいなことを言うね、君」 「兄弟を詐欺師呼ばわりするな」
2015-07-02 12:27:33「君は少し黙ってて」 落とすにはまずブラコンをなんとかしないと思いつつなんとか読み終える。 「読めました?」 早く署名してと急かされるけど燭台さんペンを握る前に堀川くんに耳打ち。 「……最後の項目って必要なの?」 「重要項目です。嫌ならこの話はなかったことに」 迷ったけど燭台さん
2015-07-02 12:33:09とうとう署名しました。 「はい。兄弟、契約は済んだよ」 「やっとか」 自分の契約のことなのに暇そうにしていた山姥くん、居住まいを正して燭台さんに向き合う。 「これで改めてあんたは俺の雇い主だ。契約が続く限り俺はあんたを裏切らない。この身を捨ててもあんたを守ろう」
2015-07-02 12:38:38頼もしく宣言する彼に燭台さん手を差し出す。 「頼りにしてるよ。ただ命まではかけなくていい。君とは長く付き合いたいからね」 今度は邪魔は入らず、ようやく固い握手を交わす。というか堀川くんの姿がない。 「あれ?」 「兄弟は忙しいからな。次の仕事にいったんだろう」 「それで済むんだ」
2015-07-02 12:49:53「兄弟は俺に嘘をつかない」 無条件で兄弟を信頼している山姥くんに苦笑する燭台さん。次男の堀川くんであれなら長男の山伏さんはそれ以上。攻略できるのはかなり骨が折れそうだ。 「(ま、気長に行こうか。無理矢理手を出して暗殺されたくないし、同意ならOKとこじつけられる内容だったからね)」
2015-07-02 12:56:24「どうした?」 「なんでもないよ。ところでこれからは本部でも護衛をしてもらうわけだし、もうちょっと打ち合わせしておこうか」 方針を決めたから焦りは禁物と、まずは仕事の話を進めることにする。 夜通し今後の方針から堀川くん侵入を受けての要塞の警備の穴について、ひたすら議論したという。
2015-07-02 21:02:39ちなみに契約書に書かれていた重要項目とは 《弟に手を出したらその場であなたを敵とみなしあらゆる手段でもって潰します》 なんともまあ過保護なブラコンらしい一文である。 ここから始まる軍パロしょくんばを私は読みたい(長い前置きだな)
2015-07-02 21:07:26燭台さんは昔戦場で目に傷を負って後方支援に周りそこから指揮官として頭角を現したエリートで山姥くんはとあるテロリストにとらわれていたのをほかの兄弟に助けられた傭兵という前提を入れ忘れていたことにふと気づいた(´・ω・`) 雑多なつもりがひとつのプロットになってしまっていた…
2015-07-02 22:03:27