黄昏町徘徊記、ある少女の記録

つけるのはなしをしんじるな @kinoakira

『その中の一人が、男の人に近寄った。「あなた…また連れてきたの。あの子はもういないのよ」あっ人違いでしたかそうですか。この人の様子からしてその子はもうダメな感じなんだろうか。「え、ああ…」ようやく手を離されてべちっと床に顔面から落ちる。痛い！』 #黄昏徘徊記

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『「ぼく帰りますね。ごめんなさい」じりじりと起き上がると、男の人はこっちをぐるんと見た。「怪物め」「はいぃ？」思わず右京さんみたいな相槌してしまった。「むすめを、かえせ」申し訳ありませんが存じ上げません。逃げようと扉の方を見ると鉄パイプを持った人たちに塞がれている』 #黄昏徘徊記

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『▽だが　まわりこまれてしまった！　向き直ると、男の人は火かき棒を大上段に振り上げてこちらを見ている。避けきれず、頭には当たらなかったけど思い切り肩を打たれた。激痛、肩を押さえると、今度は。』 #黄昏徘徊記

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『第十三日目：チャイムで目が覚めた。凄まじい既視感のある教室にいた。あのあと絶対頭をかち割られたな、これ。どっこいしょと立ち上がると右腕に違和感。右腕には赤黒い有刺鉄線のようなものが生えている。なんだこれ、棘？　なんかうにょうにょ動くし。第三の腕が出来てしまった』 #黄昏徘徊記

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『手の甲に巻きつけて殴ったりしたらいい感じのナックルになるのかな。それか、なんかの狩りゲーでやってたみたいに立体機動みたいなことをできるかな？　ぼく三半規管が弱いんだけどなあ。棘というか腕から生えた有刺鉄線というか茨というかそれをうにょうにょさせながら移動した』 #黄昏徘徊記

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『うろうろしていたら、プールが目に入ったので来てみた…はいいけど扉がしまっている。試しに、フェンスにうにょーと棘を伸ばしてロープがわりにクライミング！　あっぼく頭いいと思ったら右手に思いっきり刺が刺さった。そうだよね怪我するよね。最終的に頑張って鍵を壊して侵入した』 #黄昏徘徊記

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『プールの水は不気味なほどに澄んでいる。さっき入れたばっかり見たいだ。誰が入れたんだ、っていうか何のために。それになんで掃除した。汚れのないプールに漂う、薄汚れた上履きが、妙に気になる。「よし、入るか」体もベタベタしてるし。見てる人はいないし。』 #黄昏徘徊記

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『なぜかあまりボロボロになってない服をたたんで脇に置き、水に入る。「つめたっ！」当たり前だった、ずっと夕方だから水温が低い。でも、なんか落ち着く。鱗のせいか、いつもよりもうまく泳げる…というか水の中で息ができる、なにゆえ。ばしゃばしゃとそのまま潜ったり顔を出したり』 #黄昏徘徊記

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『「あ、上履き」忘れてた。ばちゃばちゃと泳いでキャッチ。結構使用感のある上履きだ。名前はえーっと「ウラミ…」上履きになんか恨みがある人だったのか…それとも。「これ、ぼくの？」覚えがない、忘れてるだけ…なのかな。思い出せない。水から上がって体を乾かしながら考える。』 #黄昏徘徊記

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『結局わからなかったのでとりあえず、プールサイドに置いておいて服を着る。ぼくはこんな学校に通っていた覚えはない。それは忘れてしまったのか、本当に違うのか。わからない。』 #黄昏徘徊記

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『第十四日目：プールでリフレッシュした後、中庭で仮眠をとる。水に入ると眠くなる現象の名前を誰か教えてください。もしくはつけてもいいよ。夕方なのでちょっと肌寒い気がしないでもないけれど中庭にはベンチがあって結構寝心地がいい。おやすみなさーい。』 #黄昏徘徊記

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『ふわり、と自分が浮き上がる感覚で目が覚めた。またこのパターンですかそうですか。バサバサという力強い羽音には聞き覚えがある。今度は中庭側から、三階の教室にシュートされた。こっちは教室に机と椅子が山積みになっていたので山の中腹に思い切りダイブする。』 #黄昏徘徊記

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『というかこの教室前と同じところだ。ガラガラと机をほって山から抜け出すと夕焼け色の瞳がぼくを見ている。「会うのは三回目だねえ」竜は答えない、相変わらずだんまりだ。「ねえ、仏の顔も三度ってことわざ知ってる？ぼくは仏様じゃないけどさ」』 #黄昏徘徊記

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『ぼくの演説もお構いなしに竜は大きな口を開けた。「今回で三回目だよ、ポイントが溜まっちゃったね。ざーんねん」ばくん、と丸呑みされた。 当たり前だけど中は真っ暗、物はよく噛んで食べろってお母さんに習わなかったのかなあ。ごくりと飲み込まれる途中で喉に引っかかる。』 #黄昏徘徊記

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『真っ暗だけど見えないわけじゃない、ぼくには猫の目がある。密閉されてるけど、ぼくには鱗がある。ぬるぬるするけど、ぼくには毛皮がある。出っ張りがなくても、ぼくには牙ある。もう、前のぼくじゃない。右腕の棘を鋭くする、大きくて硬いものに対抗するにはどうすればいいか？』 #黄昏徘徊記

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『牙で喉元に引っかかり、棘を思い切り振るって柔らかい肉色の内側を切り裂いた。正確には何度も殴りつけたり、削ったりしたから相当大変だったけど。ぐらぐらと首が取れそうな竜の内側から血まみれになりながら脱出した。「ドラゴンスレイヤー…みたいにかっこよくはいかないなあ」』 #黄昏徘徊記

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『ごぼごぼと首の裂け目から血を流す竜が校庭にどうっと倒れた。夕焼け色の光が消えて暗い瞳がぼくを見る。「君がもう少し話が通じたら、ぼくは友達になりたかったんだよ」倒した相手に何を言ってるんだか。血を浴びすぎたせいか視界がぐるぐると回り、僕は気を失った。』 #黄昏徘徊記

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『第十五日目：気がついたら町にいた。というか、尻尾が生えた。「えーっと」長い、具体的に言うと歩くと凄い引き摺る。魚の鱗が消えて、竜の尻尾が生えた。夕焼けを映したような色の鱗がキラキラと輝く。忍び歩きしにくくなった代わりに、尻尾は振ると鞭のようにしなった。』 #黄昏徘徊記

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『これで殴られたらそりゃあだめだよなあ…と思いつつ、気を取り直して町を歩く。川原は夕焼けに染まって綺麗だ。…向こう岸がよく見えないけど渡ったらちょっとダメな気がする。ズルズルと尻尾を引きずりながら歩いていると、お父さんと同じくらいの男の人が居た。』 #黄昏徘徊記

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『「こんばんは」「…こんばんは」人とまともに話をするのは久しぶりな気がする。横に歩いていくと男の人が少し右にずれてくれた。「綺麗だねえ」その人は髪を後ろに撫で付けていて、額にはもう一つ目があった。二つの目は夕日を見ている。三つめの目はぼくをみている。』 #黄昏徘徊記

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『「そうですねえ」とりあえず相槌をうつ。「消え行く魂の色のようだ」例えが抽象的すぎる。どう返事をしようか迷っていると、男の人は不意に大きな石を軽々と持ち上げるとぼくを殴りつけようとした。「やっぱりそっち！？」なんでいっつもこうなるんだろう。』 #黄昏徘徊記

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『体操選手のようにとんぼ返りで石を避ける。「あたったら痛いじゃないですか！」男の人は答えない。「…正当防衛！」人間を仮にもどうこうするのは気が引けるけれど今は非常事態だ。その場で勢いよくターンする、リーチはこっちのほうが長い』 #黄昏徘徊記

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『硬い鱗で覆われた竜の尻尾は柔らかく、そして勢いよくしなり、男の人の足を打ち払った。一回転して向き直ると男の人は三つの目を大きく開きながら、川原をごろんごろんと転がりながらどぼん、と川に落ちてしまった。 「…浮かんでこない」この川ひょっとしてヤバイ？』 #黄昏徘徊記

つけるのはなしをしんじるな @kinoakira

名前：内原裏観（ナイバラ・ウラミ） 職業：宗教家（巫女）/中学生 年齢：15歳 性別：女性 ステータス：魂10/力10/探索2 所持異形：毛皮（水耐性、探索+1）猫目(探索+1、力+1)牙（力+2）竜尾（力+5）/棘（力+2） #黄昏徘徊記