ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/12/30

ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

#twnovel 蛤の酒蒸しが食べたくて目が覚めた。何故、急に蛤の酒蒸しなのかはわからない。夢の中で食べる直前だったのだろうか。はて、と首を傾げたところで、正解に気付く。付けっぱなしで寝ていたＰＣに、「蛤の酒蒸しが食べたい」という呟きで埋め尽くされたＴＬが表示されていた。

内藤みか（作家） @micanaitoh

「好きです」と言えない。「がんばってください」という言葉に変換してみたけれど押し付けがましい気がしてさらに変換。「お身体大切に」。 これだと、オカンみたいでちょっと違う。結局無難に「良いお年を」になった。彼は今日も私の気持ちに気づかない。 #twnovel

@sobatoyou

この黄金のスプーンは、千人の報われぬ恋をした乙女の涙を掬い取る事で、魔法を得たスプーンです。このスプーンでかき混ぜた紅茶には乙女の涙が混ざり、恋の味が致します。そして口にされた方は目の前の方に恋してしまうのです。お代は結構。ただし、貴方の涙を一雫頂戴致します。 #twnovel

ショートショート @shortxshort

「星占いを聞きませんか」占い師に声をかけられた。「この星の未来を占いました。残念ですが20年後にトラやゴリラが絶滅します。50年後にアマゾンの森が消滅。100年後に世界の半分は海に沈むのです」「当たりますかね」占い師は微笑する。「力をあわせれば、きっと外れます」 #twnovel

an @isukadasuka

バリバリに働いていた君が「魚になりたい」と言って家に閉じこもってから数ヶ月が経つ。魚は痛みを感じない。清潔だった君の部屋は、今や密林を模したアクアリウムだ。暗い部屋のゴミに埋まったソファの隅で、私は君の手を握る。君の痛みが分からなくても、私はずっとここにいる。 #twnovel

Gabb-- @itisnot

ひらり、ひらり、と紙が舞い落ちるのを見ながら、冬に浸る。そこにあるのは木。枝にはいくつもの紙が結び付けられていて、それが自然と、勝手に解けて落ちていく。ひらり、ひらり、と最後の一枚になるまで続く。僕は、僕の名前が書かれた紙が落ちるのを見届けた。僕は、喰われない。 #twnovel

ナナポナ / ななぽな @nanapona

#twnovel 動物の集う酒場は団体の虎で賑う。「俺達の年は始まったばかりだぞォ!」「兎なんぞ怖くない!」12時になると、「本日は大変混雑しておりまして、他の団体様と同席でも構いませんか」「ガハハ、構わんよ」「恐れ入ります―兎様ご一行こちらへどうぞォ!」喧騒が一瞬にして止んだ。

冬木塔 @haguru_ma

40のアイロンが並んでいる光景は中々に哲学的だった。けれど40のアイロンを甲板に載せ40日間の航海をするうちに、その哲学はどこかへ消え失せてしまった。さてこのアイロンをどうしようか、と思いつつ空を眺めていた。どこからか傘が降りてきて、結局、空も消えてしまった。 #twnovel

miminari_ @miminari_

メシを炊き始めて8分後に風呂のスイッチを入れその7分後にレンジでレトルトを温め出す。5分後同時に3つのブザー音が鳴る。ゆっくりと湯に浸かりながら作りたてのカレーを食い始めた。 #twnovel

久生@低浮上 @karasu_u

「いいですか、君たちが好き嫌いなくご飯を食べて強い身体を持ち、目上の人を大切に、大声で元気な挨拶をし、沢山お勉強して、優しく正しい心を持たなきゃいけない理由は仕事をする為です。仕事をしても壊れない健全な心身を伸び伸びと育てる為に学校はあります。学校は大人工場です。#twnovel

しーな @xsheeenax

私は不安に取り憑かれている。仕事をしているときも、食事をしているときも、遊んでいるときも、あなたといるときも。病めるときも、健やかなるときも。見えない不安が私を押し潰す機会を眈々と狙っている。私はその影に怯えることしか出来ずに、今夜も眠れない憂鬱な時間を過ごす。 #twnovel

クリントン大西 @klinton_onishi

#twnovel 「わたしの名は年末年始マン！」「具体的に何をやるんですか年末年始マン」「“さん”をつけろよデコスケ野郎。わたしが居ることで１年の区切りを皆が認識するのだぎゃっ」──年末年始マンは即座に射殺された。人々は暮れ正月の行事に煩わされる事なく、幸せに暮らした。

@QuaibunPocket

暗い境内を歩いていてさテキ屋の裸電球が風に揺れる拍子にキラキラするわけ、でなんとなく触ったの、未だ仄かに熱を帯びているというかぬるい。その指をきみが口もとに導いたじゃない吐息の次に直に唇に触れたアレなんつうかグッときたよね。 #twnovel

@hinoe000

#twnovel 仄暗い部屋で、朝の麗を識るひとときの静寂は何にも代え難い時間だ。然し陽差しは一向に部屋には及ばない、全ては緞帳の閉め切られた向こう側の事だ。雀の姿を観る事も陽の光を浴びる事もない、この部屋で識る朝は仄暗い。そして静寂は気の狂れるに事足りて居る、幸福な朝だった。

@giraffe_kirin

朝。何かの気配で目を覚ますと、目の前に見知らぬ女性が立っていた。起こしちゃったねと言いながら、彼女は朝ごはんを作ってくれていた。ご飯にみそ汁、目玉焼き。おいしかったって礼を言うと、彼女は目を細めて笑いながら、音も立てずに消えていった。少し、母の笑い方に似ていた。 #twnovel

Shimada Yuichi @chimada

#twnovel クリスマス・プレゼントに『クリスマス』を貰った。だから僕はクリスマスの日を繰り返している。目が覚めると、枕元にはまた靴下の中に『クリスマス』が入っている。あと何回繰り返せば、僕はお正月を迎えられるだろう。ジングルベル、ジングルベル。ほら、鈴が鳴っている……。

@bowlinger23

#twnovel 「俺は負けず嫌いだ。そして、何をやっても誰にも負けない自信もある。しかし、世の中には番狂わせや万が一という事がある。勝つ自信は勿論あるが、無駄な勝負事は極力避けた方が良いに決まっている。」男は負けない為に逃げ続け、やがて出来た独りきりの世界で晴れて１番になった。

@K_Ichida

#twnovel 大きな古時計の針が零時を回る時に殺人のからくりが動く。完全犯罪。憎い妻とはさよならだ。その夜ひとりで部屋にいたが、なにも起こらない。おかしいな、と思っていると、妻が鼻歌を歌いながら部屋に入ってきた。「おおーきなのっぽの古時計…いまはもう動かない」壊れてたの！？

(｡･ω･｡) @AWACS004

二人並んで電車に揺られながら、車窓を流れていく町並みを見ていた。君が不意に｢どの家が好き？｣と尋ねる。悩みつつ緑の屋根を指差したら、｢ずいぶん尖った屋根だね、きみの心みたい｣だなんて。私は君と、あんな家に住みたいなって思ったのよ？お城みたいなとんがり屋根の家。 #twnovel

内藤みか（作家） @micanaitoh

「別れてください」と言えない。「今までありがとう」という言葉に変換してみたけれど涙が出そうな気がしてさらに変換。「お前の心身の健康が一番だ」これだと、オトンみたいでちょっと違う。結局無難に「愛してるよ」になった。妻は今日も私の不倫に気づかない。 #twnovel

Dan Kogai (小飼 弾) @dankogai

慰謝料いくらにしようか。今切り出すよりもう少しためておいた方が額が増えそう。「お前の心身の健康」?どう考えても私の方が長生きするわよ。「愛してるよ」?あの女の次にね。夫は今日も不倫に気づいていることに気づかない。 #twnovel < @micanaitoh

すわぞ @suwazo

#twnovel 家の外から幾つもの足音が聞こえた。ダンスでもするような軽快な音だ。窓から覗いたが誰もおらず、よく見たら靴だけが歩いていた。何百もの靴が同じ方向へ踊るように進んでゆく。私の靴たちも勝手に外へ飛び出していった。一足も残ってない。私はもう歩くことはないのだと悟った。

夢名 七志 @mumei7c

テレビ番組の録画が溜まっていた。休みの内にと見始めたが、寝ずに連続再生をしていても半分も消化していない。このままだと年を越してしまう。二倍速にしてみた。早口で忙しなく動くがまだ遅い。三倍速で流す。 #twnovel 疲れ果て空腹で食事に出た。世の中は師走なのにのんびりとしている。

ミドリハだったもの @midoriha

今朝、今年買ったばかりの白いコートに焼けた跡を見つけた。たぶんタバコ…たぶんあなた…。あなたに少しでも｢かわいい｣と思ってほしくて買ったコートだったのに…。気持ちを整理する暇もなく時計は予定時刻を過ぎていく。私は白いコートをベッドに投げすてて、黒いコートを着た。 #twnovel

やまね公開リストと#twremix遠慮中 @yamaneyamane

#twnovel イブはチキンとケーキを焼いた。夫は美味しいとたいらげた。手編みのセーターをあげ琥珀のペンダントをもらった。うれしかった。でも、皿を洗いながら泣いた。昔もらった万年筆、インクが乾いて文字が書けない。聖夜、黄ばんだ原稿用紙の前で私はサンタに願った。才能をください。