ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/11/04

今日読んだついのべの中から独断と偏見で味のある作品をセレクトしてみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短い短い物語です。 過去のまとめ http://togetter.com/id/laybacks
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@yumimurata

四番目の抽斗から出した玩具のピストルの埃を払って、ベランダから北東の白い六等星に向けて撃つ。命中して撃ち落された星がトリガーを引いた左の人差し指にぶつかって、指先に埋まった。電燈を消した部屋の中で、人差し指は蒼白く光っている。 #twnovel

2010-11-04 00:02:40
@K_Ichida

#twnovel 朝起きると姉の足をなめる。甘酸っぱい匂いで死にそうになる。日によってわずかに違う姉の匂いを嗅ぎながら、舌をそろりとはわせる。頭がしびれて意識が遠のく。息ができなくなるほど苦しくなる。それから、なにくわぬ顔をして再びふとんに入る。姉はなにもなにも気づかない。

2010-11-04 00:07:22
@K_Ichida

#twnovel 小説の神様は意地悪だ。近づく者に、金、名声、自己実現をちらつかせてしもべにする。神様に魅入られると友達も家族も目に入らなくなる。ひたすら書き続ける。神様はめったに小説を読んでくれない。読んで気に入らないと全てを奪って捨てる。それでも神様を慕う者は後をたたない。

2010-11-04 02:33:07
@dorobe56u

#twnovel 前の客の陰毛が歯に挟まったままキスをすると彼女は黙って僕の歯に手を伸ばしてくれた。裸で抱き合っているのにキス以外しなかった。真剣な顔で、好き、と言われると僕も笑って同じ台詞を返した。彼女は会う度同じことを繰り返した。何度凝視しても記憶から抜け落ちる顔をしていた。

2010-11-04 07:04:50
@sakuranuko

昼間の水族館、何度目のデートだろう?並んで水槽を眺めながら彼が口を開く「実は俺 結婚してるんだ」眼鏡の奥の瞳は水槽を見つめたまま。突然の告白にさほど驚きは無かった。大海原を泳ぐ魚達をこの狭い水槽に閉じ込める事を罪と言わないのなら、誰が私達を責められるだろう。 #twnovel

2010-11-04 07:56:27
@shortshortshot

そろそろ戻らなければ行けない事を急に思い出して、世話になった礼を両親に言いに行った。二人は唖然としていたが、俺の頭がどうかしたと考えたらしく、オロオロし始めた。時間が来たので気体化して外に出る。回収船が空中に浮かんでいる。周りを見ると至る所から煙が上がっていた。 #twnovel

2010-11-04 09:24:03
@Lico_citrus

週末の待ちあわせ。電車とバスを逆算して家を出る時間を決めて、もっとさかのぼって起きる時間も決めて。早く到着したら、彼の来る方向も予測して、むしろ反対を向いて待ってたりなんかして。…そんなシュミレーションの時の笑顔を、彼の前でもできるといいな。 #twnovel

2010-11-04 12:48:24
@inosekai

「なんだこの成績は!」上司に叱責され出かけたオフィス街。空を見上げていると、突然女の子が降ってきた。思わず反射的に受け止めてしまう。気絶しているようなのでビルの脇に寝かせる。またやってしまった、帰ったら説教に逆戻りだ。「おまえは死神会社の社員だ!なんてところか。 #twnovel

2010-11-04 13:57:31
@bttftag

#twnovel 「母上の離乳食はおいしいな、兄者」「そうだな。もぐもぐ…むっ!」「どうした兄者」「この米を炊いたのは誰だー!」「母上だろう。何か問題が?」「これはあきたこまちではない!」「米の違いが分かるとはさすが兄者」「気を遣ってもらいたいものだ…もぐもぐ」「結局喰うのか」

2010-11-04 14:10:48
@tokoya

#twnovel 男は虫の居所が非常に悪かった。商店街を歩くとまだ11月初旬なのにクリスマスソングが流れ、男は更に不機嫌になった。12月になってからやれよ、バカじゃないのか?と思いながら帰宅すると、男の怒りは一瞬でとけた。愛娘が一生懸命に、ピアノでジングルベルを練習していたから。

2010-11-04 14:16:57
@kaiteimokugyo

#twnovel 『カレー』 にんじん「私は絶対必要だよ」たまねぎ「いや味の決め手は僕だ」じゃがいも「分かってねえ。俺の存在感」にく「バカヤロー皆で盛り上げるんだ!」…とまあ皆楽しそうで。まさかルーの自分がスルーされるとは夢にも思いませんでした。隅で一人ディスコですよ、ええ。

2010-11-04 14:34:51
@leopichi222

#twnovel 「自慢じゃないんだけど」と話し出す人で自慢話をしなかった人はいない。「私は傷つきやすいの」と言う彼女に僕は何度も傷つけられた。いつものカフェで飲むコーヒーが美味しく感じられない。彼女と会うのはこれきりにしよう。僕の決心は彼女の食べるプリンよりもろくて甘い。

2010-11-04 14:38:14
@WakasugiTomoya

帰宅して直ぐ、むかつく友達の悪口を云った。すると母が「鏡で顔を見てご覧」と云う。鏡を見た。自分の顔が少し歪んで見えた。醜かった。そしてそうやって少しずつ歪んだらどうなるか想像した。背筋がゾッとした。私は冷水で顔をさっぱり洗い食卓に着いた。母は黙って牛乳を出した。 #twnovel

2010-11-04 15:09:27
@karasu_u

#twnovel この山間の廃線、飢饉の時代には生活苦を訴える農民が鈴なりに寝転んで念仏を唱えていたという。酷い時には、向こうも見えなかったとか。だからここは、鈴鳴り峠って呼ばれてるんですよ。鈴が鳴るように線路が軋む音を聞きながら、唱える念仏が静かに響くから。

2010-11-04 18:24:53
@ideimachi

#twnovel 「今のラヴェルが紅葉の森? 綺麗ね」感想に、彼はいつも通り微笑んだ。「弾いたのは君。僕は絵にしただけだよ」音に色が見える共感覚。演奏ごとにも彩りが違うと彼はいう。「もう一曲、弾いてくれないか」奏でる儚い音たちが、カンバスに描かれてゆく。とても不思議で美しい記録。

2010-11-04 18:30:03
@laybacks

『ツイッター社サービス終了のお知らせ』プレスリリースを出した。もう地球人の考えていることは十分に分かった。程度の低い生き物だということも。次の星の調査を急がなくては。この数年間を振り返ってみる。下らない呟きばかりで正直うんざりしたが #twnovel だけはなかなか面白かったな。

2010-11-04 19:22:03
@shortshortshot

十年振りに高校の友達と再会したのだが、整形してとても美人になっていた。「すごい変わり様。ビックリ」素直に言うと「そうね、あなたよりはマシになったかな」と意地の悪い答え。「性格悪いの変わってないね」と返したら「うん、でも大丈夫。性格悪いのは隠せるから」と微笑んだ。 #twnovel

2010-11-04 19:32:20
@Kami_Chikuwa

#twnovel 近所で祭りがあるというので、どんなものかと一人で行ってみた。しかし、行ってみて後悔した。周りがのカップルだらけだったのだ。帰ってきた僕は、リア充への怒りから非リアが集まる祭りを企画した。リア充門前払いの素晴らしいお祭りだ。そして祭りの日が訪れた。誰も来なかった。

2010-11-04 20:27:55
@gm617

20年前の俺に、2010年の事をドヤ顔で教えてみた。「手のひらに載るような機械で、遠く離れた人に手紙や電話ができるようになるんだ」「本当に?!」「地球の裏側へも一瞬だぜ」「すごい!」でもメールや電話をする相手が殆どいない寂しい大人に成長するとは言えなかった。 #twnovel

2010-11-04 20:39:10
@shortshortshot

帰宅すると妻が猛烈に怒っていた。息子の部屋でHな本を大量に見つけたらしい。「年頃だから許してやれよ」「いいえ!一冊ならまだしもこんなになんて異常よ!」「しかし」「私がこういうの嫌いなの知ってるでしょ!」わかってるよ。だからあいつに頼んで隠してもらってたんだよ…。 #twnovel

2010-11-04 20:55:10
@TAKUYA11

#twnovel 僕らはただの遺伝子の乗り物だそうだ。タクシードライバーみたいなものだ。僕は自分の遺伝子に話しかける。「君達は何処へ向かっているんだい?」「行き先は知らない。次の世代に進む事だけが私達の使命だ」客が行き先を知らないなら、僕らが常に迷い彷徨い続けるのは当然だ。

2010-11-04 21:51:22
@mumei7c

ふと夜空を見上げると月が二つ出ていた。唖然としているのは俺だけ。周りの人達は当たり前のように歩き去って行く。錯覚じゃない。「綺麗な月だね」と二人の話し声すら聞こえた。誰に問うこともできず、急ぎ足で帰り玄関を開けた。二人の妻が揃って「もう一人はどうしたの」と言う。 #twnovel

2010-11-04 22:43:08
@Kyota_WJ

ある朝、目を覚ますと、兄が一つのbotになっていたことに気づいた。何となくTwitterを開いて、みつけたのだ。脈絡のない話に #twnovel タグをつけて垂れ流している。部屋に篭りパソコンに向かってばかりいた兄の、これが望んだ姿だったのかもしれないと思うと、悲しくはなかった。

2010-11-04 22:51:20
@xsheeenax

シートから一錠ずつ出すのが面倒になり小瓶にまとめるようになったそれをラムネみたいにざらざらと取り出して飲み込む。水で、珈琲で、あるいは酒で。それを見た嫁が何か言った。俺は酔っていた。「ここまでして働いているのは誰の為だと思ってるんだ!」そして、俺は一人になった。 #twnovel

2010-11-04 23:12:19
@itisnot

公園でパンくずを撒いていると、鳥とおじさんがやってきた。チュンチュンと、成人男性の声を放つそいつは紺のスーツ姿で地面をついばみ、鳥を蹴散らす。僕は手を止めどこかに行ってもらうよう交渉する。「チュン?」首を傾げるその姿。不快さに足を振るうとおじさんは避けて、空へ。 #twnovel

2010-11-04 23:50:54