ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/05/23 (キスの日)

layback @laybacks

彼の描く絵の中の人物はいつも顔のパーツが一つだけ欠けている。目のない少女。鼻のない少年。口のない農夫。だがどの人物を見ても、耳だけはちゃんと付いていた。どうして？　わたしはたずねる。彼はよく通る声で歌うように言った。だって、可哀想だろう？　音楽が聴けないなんて。 #twnovel

とおる7th @windcreator

窓拭きを生業にしている。たまたま背中に翼が生えていたので、高いところで活躍するこの道を選んだ。空を飛び回っているからかついつい見下ろすことに慣れきってしまっているのだが、久しぶりに上を見上げる仕事になった。空高く青に映える真白い塔。多くの笑顔を実らせる「木」だ。 #twnovel

だりむくれ @darimukuretyu

衣装を買ってきた。来月の舞台用だ。照明が反射しないように、きらびやかな素材は一切使えない。だからこそデザインのよいものを選ばないといけない。幸い満足のいくものを見つけることは出来た。後はこの衣装に合う脚本と、演出家と、キャストと舞台を見つけ出さないといけない。 #twnovel

七歩 @naholograph

星を砕いてザラメにする。今日はお祭り。きらきらの綿菓子を作る。天の河で捕まえた金の魚を水槽に放ち、林檎の代わりに隕石をコーティング。我々は模倣する。消滅したあの惑星を偲んで祭りを擬える。今年の手本は日本という地域。美しいね、美しいね。口々に言い合って、地球を弔う。#twnovel

おこげ @okoge_ver2

ある国の姫が通りすがりの亀に恋をしました。けれど悲しい事でもあったのか、亀はうな垂れて元気がありません。姫は亀の頭に、元気になってとキスをしました。すると亀は元気を取り戻し、たちまち立派な青年になりました。キスと言う名のラブレターが、亀の呪いを解いたのですね。 #twnovel

よしのちほ @chiho_yoshino

死体の爪が伸びると聞いて、不謹慎かもしれないけどゾッとした。身体の先まで死が伝わるには、どのくらいの時間がかかるのか。だとしたら本当の死って、どの瞬間なんだろう。つなぐ手を求めながら、指先が冷える。サヨナラを言われて、私の恋は確かに死んだのに。指先は、まだ。 #twnovel

ておまさお @teomasao

「おじいちゃ～ん！」少年は天望回廊から手を振っていた。老人は満面の笑みで少年を見つめる。「あの子がお孫さんかい」「ワタシに似て賢いんですよ。あれができたおかげで、盆と彼岸以外にも孫の顔が見られるようになったんですからね。まさに天にも昇る心地ですよ、神様」。 #twnovel

七歩 @naholograph

「昔は『恋文』といって紙に気持ちを記して伝えるという手段もありました」ここテストでますよと強調する。「ありえない」「証拠になるよ」「どんな責任おわされるか」恋愛の終わりすら裁判沙汰な時代、どちらから恋愛を始めたかなんてはっきりさせないのが通常だった。時代は変わる。#twnovel

竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 小さい頃、近所に金髪の可愛い女の子が住んでいた。ある日、彼女に手紙をもらった。英語の意味は解らなかったけど、最後に大きな×印が書かれていた。嫌われたんだと思って話もしなくなった。でも、大人になって知った。彼女の国では×はキスの代わりだということを。

紺屋 @ysga1002

キスの味って甘酸っぱいんだって。誰が言い出したのかその話は、瞬く間に教室中に広まった。小学生の頃の話だ。そして、初めてキスしたのが中三の夏。「で、どんな味だったの？」興味津々な友人には申し訳ない気持ちになる。「……塩素臭かった」わたしの初キスはプール味だった。 #twnovel

すわぞ @suwazo

#twnovel 白紙の蝶を探している。密林の奥にいるという。もし捕まえられたら、その白紙のDNAに好きなものを書き込むことができるのだという。白紙の蝶を捕らえたら、僕はそこに姉を書き込む。あまりに早く逝ってしまった姉をもういちど取り戻して、森の奥で二人で静かに暮らすのだ……

あかね @akane2003

キスをしたいと思ったが、狭くて汚い俺の部屋に対象物はなかった。仕方なくぬいぐるみにキスしてみた。もそっとして埃が口に入ってきて違うと思った。ゲームの中の彼女がキスをねだる。画面は固くて冷たくて何より目を閉じても眩しかった。本当のキスってどんな味だろうな。 #twnovel

水木ナオ @nayotaf

運命の相手に会いにいくわと、娘は亀に跨った。のろのろ進む亀の背で、まだ見ぬ相手へ恋文を綴る。「なんて書けばいいかしら」「愛しい貴方」「愛しい貴方、と」のろのろと亀は進む。「まだなの！」「じゃここで」娘が降りると、亀は首を伸ばして娘の頬にキスをした。「愛しい貴女」 #twnovel

七歩 @naholograph

貴方が落としたのは金の恋文ですか？銀の恋文ですか？泉の女神は俺に問う。「違うよ紙の恋文だ」そう答えると「貴方は正直者ですね。褒美に全てを与えましょう」女神様。あんた、勘違いしてないか。俺が欲しいのはあんたの返事。あんたの心が欲しいんだ。「全て」にそれは入るのか？#twnovel

Hiroyuki inoue @hiro_kinako

#twnovel 待ち合わせの場所に着くと、彼女がリンゴを手にしていた。聞けば近くの青空市で調子の良いおばさんから買わされたのだという。毒々しいほどに真っ赤なその姿。毒リンゴだったりして？と僕がからかうと、彼女はするりと腕を絡ませてきた。「そしたら、キスしてくれる？」

日向日影🍊📖@文化系物書きVtuber（HUB） @hyuugahikage

#twnovel 役所は混んでいた。私が窓口に住民カードを出すと金色に気付いた職員は作業をやめてすぐに私の書類を受理する。高額納税者カードは順番待ちがなく実によい。財政に貢献する者の正当な権利である。帰りに選挙ポスターに気づく。納税額に基づき与えられた３６票を誰に投票しようか。

Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 「ははははは！　完成したぞ！　『冷やし中華はじめました薬』！　これで少女は冷やし中華をつくれるようになる！」「博士。その薬のことはともかく、私、冷やし中華を食べたくなりましたよ」パリン！「この薬は廃棄する。さぁ、冷やし中華をつくるから手伝ってくれ」「はい、博士」

相応恣意 @aioushii

靴箱で見つけた一通の手紙。書かれていたのは、ほんの数行のメッセージだけれど、君はこれに、どれだけの時間をかけてくれたのだろう。どれだけの想いを込めてくれたのだろう。想像するとなんだかこそばゆくって。 #twnovel そう、返事は最初から決まっていた。「こちらこそお願いします！」

由 @pq3i

怪獣たちの間で今一番ホットな話題は誰が最初にスカイツリーを破壊するかってことだ。怪獣だけでなく天界魔界でも人気ナンバーワンだ。先陣を切ったのは風神だが先日使った力を回復しきれていなかったのでエレベーターを止めるにとどまった。 #twnovel

いでゆのまち @ideimachi

#twnovel お腹の子を遺して、彼は逝ってしまった。元気な赤ちゃんを産むため、私は自ら狩りに出る。獲物に忍びより、刺し貫こうとした瞬間。獲物もまた身重だと気づいた。そっと離れると、私は近くのオスを刺した。『うわ、また喰われた。何で俺ばっかり』『そりゃ女どうし、労わり合うのよ』

夕凪奏恵 @k_you_nagi

#twnovel さほちゃん。ごはんをくれるひと。あそんでくれるひと。おやつをくれるひと。ぼく、だいすきなの。だからね、かなしそうなかおは、みたくないの。ふわふわほっぺにちゅーしちゃうんだ。くすぐったいよって、わらってくれる。ぼく、ねこだからね。ちゅーくらいしか、できないんだ。

瀬口 @an2a_09

寄せ書きにそっとくちづけを忍ばせる。亀のように歩みの鈍い私の恋がうさぎ年のあの人に追いつけるはずもない。昔話とは違う。皆の言葉で巧みに隠した最初で最後の恋文を、私はあなたに手渡すだろう。「お元気で、またいつか」当たり障りのない言葉に当たり障りのない笑顔を添えて。 #twnovel

雪月 @setugetufuka

今日はキスの日らしいけど、キスってなんだろう。人間界に修行に来ていた子ぎつねは調べてみました。どうやら甘酸っぱくておいしいものみたい。でも、この写真は…。雑誌の切り抜きにはキスを交わす恋人の写真。何を食べてるんだろう。人間って怖い…。 #twnovel

鈴々@物語る鳥 @re_rhythm

朝起きたら枕元に置いていたはずの眼鏡が背中でひしゃげていた。仕方なく古い眼鏡を出してきた。お蔭で鏡に映る顔は非常に野暮ったい。憂鬱を振り払うように乱雑に顔を洗った。気づけばタオルの用意がない。何この不幸。携帯が鳴った。能天気な彼の声に、よろしい別れよう。何故に！ #twnovel

ゆえ @sakuyue

南国へ出張中の彼が、海の写真と一緒に亀をモチーフにしたネックレスを送ってきた。手紙にはただ一言、お守りに、とだけ。調べてみたらかの国では亀は幸運の象徴らしい。良い事あるかしら、とつけて一時帰国の彼をお出迎え。でも空港でキスの雨とプロポーズはやりすぎじゃない？ #twnovel