気まぐれ俳句鑑賞

1
Sho SAKAI @shosakai

冷房や脚のながさを計らるる(上条かをる) 冷房が当たり前にどこの家にもある今でも、冷房といえばデパートという連想には無理を感じないし、上五詠嘆はまさにあの過冷房(のありがたさの方)の感じだ。冷風の中、人に何かされ自分はただつっ立っているお大尽な特別感と少しのむずがゆさ。 #気ま鑑

2015-07-21 10:44:25
Sho SAKAI @shosakai

神父の汗どつと惜しげもなし場末(平畑静塔) 自分で句作するとき、下2、3音に違う要素を入れるとどうしてもとってつけたようになってしまうので、この句型が大成功している句を見るとおおーとなる。ニュートラルな風景に、唐突に情緒を規定する場末。他所がやや緩いから余計ハッとする。 #気ま鑑

2015-07-16 13:23:52
Sho SAKAI @shosakai

誰彼となく美しく夏たのし(奈良鹿郎) ストレートアヘッドな気持ち良さ。「句柄が大きい」ってこういうのだろうな。先人達の句には、それが土台になっているがゆえ、今見るとあまりに当たり前でつまらなく思えるものもたくさんあるけど、これは今句会で出会ってもきっとマルつけると思う。 #気ま鑑

2015-07-14 12:50:24
Sho SAKAI @shosakai

天暑し孔雀が啼いてオペラめく(西東三鬼) 言われてみれば鳴き声も出で立ちもたしかにオペラっぽいけど、孔雀「が」オペラ「の如」なのでなく、孔雀が居て鳴くことでその場全体がオペラ「めく」という切り取り方に、抜群の説得力がある。非凡。上五も「啼」の字も隙がない。すごい。 #気ま鑑

2015-07-13 15:05:02
Sho SAKAI @shosakai

三鬼って、いいなとか好きだなの前にまず、すげーっ!!ってなる。

2015-07-13 15:39:32
Sho SAKAI @shosakai

日に焼けし手くびに輪ゴムそんな主婦(京極杞陽) シビれる…! そんな主婦! ただ「いるなー」ということだけを強く思うとき、切れ字では余分なエネルギーが強いのかも。苦労や貧しさ、田舎や異国、あるいは侮蔑といった色を一切感じさず詠嘆するためには、この下五が必然なのかも。 #気ま鑑

2015-07-13 13:37:30
Sho SAKAI @shosakai

夕焼のホースたどれば必ず父(今井聖) 素直に「ホースで遊ぶ子(自分)と洗車する父」の普遍的郷愁に読んだけど、「必ず」の無茶な断定は、蛇口=父性とか、ゴムの線が時空を越えて常につながる何かとか、いろんな風にとる余地があって面白いし、そう読んでもなお、郷愁的且つきれい。 #気ま鑑

2015-07-10 17:20:44
Sho SAKAI @shosakai

滝の前だんだんわれの居なくなる(奥坂まや) 他の音が聴こえなくなってボーッとしてくる、思考が消えてくる、自分は何者でもない、ちっぽけだという感じが強まるとか、その全部が、こんなつまらない説明をせずともこれだけでバシッと伝わる。「前」は説明的だと思うけど、でも欠かせない。 #気ま鑑

2015-07-09 23:14:18
Sho SAKAI @shosakai

包丁を持つて驟雨にみとれたる(辻桃子) サスペンスではなく台所(料理の手を止めて)でしょう。日常といつも隣り合わせのぎりぎりの気持ちと、それをモノに託して客観的に切り取れる冷静さ。下五も連体形でどこにも切れがない(だよね?)のが、かえって勢いやざわつきを増します。 #気ま鑑

2015-07-09 13:39:55
Sho SAKAI @shosakai

初夏だ初夏だ郵便夫にビールのませた(北原白秋) こうずっと天気が悪いと、勤務中の他人を昼酒に巻き込むほど浮かれている人が清々しく思えてくる。初夏(五月かせめて六月前半)なのがよくて、「夏だ夏だ」だと急にチャラくなる。3-3-6-7で読みたい。ど不定形だけどリズムがいい。 #気ま鑑

2015-07-08 15:21:13
Sho SAKAI @shosakai

ショカダショカダ、のリフレインも、「口がよろこぶ」感ある。

2015-07-08 15:29:41
Sho SAKAI @shosakai

一夕立過ぎたる街のながしかな(富安風生) 雨上がりの夕方、どこかから音楽が聞こえる、光と音と匂いから立ち上る夏の気分。路上ミュージシャン等に自然に脳内置換できて、演歌・昭和感はあまりしない(古くも臭くもない)。「一」「街の」が全体を良い意味で薄味・軽やかにしているかも。 #気ま鑑

2015-07-06 10:20:27
Sho SAKAI @shosakai

梅雨の犬で氏も素性もなかりけり(安住敦) 作者の他の句を知っているからか、トムウェイツ『Rain Dogs』を思い出すからか、つい「(我もまた)」的な含意を補って読んでしまう。悲しいけどどこか乾いていて、絶望的深刻さが無いのは、わざわざ字余らせた「で」の効果でしょうか。 #気ま鑑

2015-07-03 10:24:24
Sho SAKAI @shosakai

知られざる地球の皮や茗荷汁(攝津幸彦) 金色に茗荷汁澄む地球かな(永田耕衣) なぜだろう、茗荷汁と地球は相性がいい。どちらの句も、日常の些事とスケールの大きなものの取り合わせ「ではなく」、茗荷汁星雲の渦に自分が吸い込まれていきそうに感じる不思議。言外に嗅覚がたっぷり。 #気ま鑑

2015-07-02 13:14:40
Sho SAKAI @shosakai

汗垂れて庶民モツ喰ふヘイ・マンボ(岸田稚魚) …まいりました。 #気ま鑑

2015-06-30 16:14:40
Sho SAKAI @shosakai

妻呼べば鶏来るや梅雨の宿(為成菖蒲園) シュールや幻想ではなく、実際偶然に起きてクスッとした話と読みたい。ためしに他の季節を置いてみると、春はイチャコラ夏は面白過剰、秋は切なく冬は嘘っぽく、実は梅雨の湿度や薄暗さが逆にささやかな滑稽を見せているのかも。旅先なのもいい。 #気ま鑑

2015-06-30 13:41:32
Sho SAKAI @shosakai

緑蔭に黒猫の目のかつと金(川端茅舎) 木陰で猫の目が光っているという着想はありがちだけど、緑・深緑・黒・金の配色がとてもきれい。ひっぱって「金」で終わる形、の〜の〜ときてからの「カッとキン」の音で、ぐっとシャープになっている。色が立つのもきっとこの形の力。カッキーン。 #気ま鑑

2015-06-29 13:44:45
Sho SAKAI @shosakai

でで虫を見て老人の泣きにけり(今井杏太郎) 思い出がフラッシュバックしたでも、自分を重ねたでもない、ただ理由なくトリガーになったんだと思う。きっと一粒ではなく、声や鼻水が出てしまうやつ。肌寒い梅雨の日。気分はよくわかるけど、老人のそれはきっと僕らのよりはるかに深く重い。#気ま鑑

2015-06-27 20:32:31
Sho SAKAI @shosakai

くちびるに触れてつぶらやさくらんぼ(日野草城) さくらんぼの、小さくつるんとした球体としての可愛げやピチピチさを最も意識するのは、たしかに唇に触れたとき。こう言われるから、口に入れてしまうとぐちゃっとすることも意識させられる。エロとフレッシュさ両面を伝えるひらがなの妙。 #気ま鑑

2015-06-26 23:03:19