創作で陥る意外性追求のインフレーション

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花村萬月 @bubiwohanamura

驚きと感動は、似て非なるものだ。最近読んださる小説は、残念なことに読み手を驚かそうとして(意外性を追求しすぎて)感動を殺してしまった。非常にもったいない作品だった。この作者はすばらしい才能の持ち主なのに、ここ最近、なぜか意外性ばかりを追い求め、作品を台無しにしてしまっている。

2015-07-12 22:39:47
花村萬月 @bubiwohanamura

ジャンルはちがうが、ホラー映画を脳裏に描いて冷静に考えてほしい。ドキッとさせる、つまり意外性によって(たとえば観客が一息ついた瞬間などだ)驚かせることは、感動とまったく別ものであることは一目瞭然だ。

2015-07-12 22:40:01
花村萬月 @bubiwohanamura

意外性の追求は、じき読み手に麻痺をもたらす。ドッキリも慣れてしまえば、驚かなくなる。すると作者は意外性のインフレーションに励まなければならなくなる。暴力描写や性描写も同様だ。執筆者がこれに填り込むと、作品を構築するのがじつにつらいこととなる。

2015-07-12 22:40:20
花村萬月 @bubiwohanamura

いちばん怖いのは、作者に書くべきことがなく、結果、意外性や暴力や性描写のインフレに逃げるしかない──という情況だ。作者自身は、全力で筋書きをつくり、小説をつくっているつもりなのだが……。

2015-07-12 22:41:15
花村萬月 @bubiwohanamura

意外性に類することに填り込んでいる作者は、往々にしてなにを書いてよいかわからないという状態にあることが多い。これから抜けでるためには、このもっとも安易な遣り口から離れて、小説以前の自分自身の思想(砕けた言い方をすれば立ち位置だ)を明確に確立するしかない。

2015-07-12 22:42:01
花村萬月 @bubiwohanamura

まずは主題を明確にし、(その作品中にあらわす)思想を固め、正統な描写を積み重ねて小説を構築する。しかも、さらにその先があって、固めた思想を放擲し、直観により言語を紡ぐ。この境地に至ることを目指すしかない。

2015-07-12 22:42:29
花村萬月 @bubiwohanamura

俺自身を省みるに偉そうなことを言えた立場ではないが、新人賞応募作など、この悲惨なインフレーションに陥ってしまって作品を台無しにしてしまっているものがあまりにも多い。意外性等を否定するものではないが、インフレーションにだけは陥らぬよう心して作品を紡いでください。

2015-07-12 22:46:56