【Re:AfterLife/MyImmortal】1/4

ちょっと重い話
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葛葵中将 @katsuragi_rivea

綿津見に 去りゆく者は…陸の花 散りゆく者は…海の風 その命燃ゆれども 華のように潔く 船揃へ 遠き水際いざ征かん

2015-07-14 21:09:52
葛葵中将 @katsuragi_rivea

集中治療室、と書かれたカードが刺されたドア 真っ白な壁と白いカーテン、消毒液の香りを嗅ぐわせる室内には患者用のベッドが中央に一つのみ そこに身体中にチューブを繋がれ瞼を閉じる少女が一人。 酸素供給マスクをあてがわれ息をするたびにその胸にかかるシーツが上下している様子が覗える

2015-07-14 21:11:47
葛葵中将 @katsuragi_rivea

黒い画面を映す計器が緑の線で弱々しく上下する波形と数字を表示し、 心拍数に合わせ電子音がリズムを刻み部屋に鳴り響く 辺りに散乱する包帯にはその少女の血がべったりと付着し…固まっている物から生乾きの物まで様々… 生命維持装置のみがその命の灯火を繋いでいる状態であった

2015-07-14 21:13:35
葛葵中将 @katsuragi_rivea

少女の傍には背もたれの無いスツールに腰掛ける "御札を付けた男"が その安否を案じるかのように少女の手を握り締める 無精髭が伸び切り目の下には大きくクマが浮かびあがり憔悴しきっている 時折痙攣するかのように動く小さな手と伝わる体温が少女の命が健在であることを感じ取っていた

2015-07-14 21:14:49
葛葵中将 @katsuragi_rivea

天井の隅に取り付けられたカメラがジー…という音を鳴らし それがアクティブであることを示す赤いランプが点滅している そのカメラを通し…映されるモニターの前にはいかにもオペレーターという風貌の女性、 大淀が静かにその様子を見つめていた

2015-07-14 21:16:09
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「任務娘」として知られ、いつも冷静沈着を保つ彼女は…珍しく苛立つ様子を隠せないでいた その原因の元は… 「…何をしておるかっ!!この役立たずどもが!!」 作戦司令部室に響き渡る怒号、その主である小太りの体躯のこの男にあった…

2015-07-14 21:17:39
葛葵中将 @katsuragi_rivea

本土強襲部隊邀撃戦…通称「Doolittle Raid」 棲地MI島攻略に向け発動されたAL/MI作戦 Ka諸島方面への打通、孤立化した島国の奪還、難民の救助を目的として この世界の海軍としては初となる多方面に渡る作戦が展開された

2015-07-14 21:19:24
葛葵中将 @katsuragi_rivea

作戦は至極順調… 陽動を目的として展開された北方AL海域においては そこに鎮座していた"小さなダッチハーバー"「北方棲姫」の破壊に成功し 龍驤、隼鷹といった航空部隊。那智を始めとする水上部隊の活躍により 同基地型棲姫級を一時休眠にまで追い込むことに成功する

2015-07-14 21:21:17
葛葵中将 @katsuragi_rivea

MI方面においても機動部隊は猛牛のような闘志を宿す棲鬼級「空母棲鬼」そして撃破目標たる「中間棲鬼」 これらの激しい攻撃にあうも主力起動部隊の活躍によりこれらを退けることに成功。 海軍は勝利を確信した… ーーーだが、敵は一枚も二枚も上手であった…

2015-07-14 21:23:19
葛葵中将 @katsuragi_rivea

AL/MI攻略作戦の一方で、熱帯性低気圧…大型台風が列島の付近を北上、一過 その嵐が名残を残す近海の哨戒に当たっていた駆逐隊から驚くべき報告があがる 「敵艦隊見ユ」 深海棲艦強襲部隊が台風の影に隠れ、小さな島国へと接近… 絶対国防圏を越え、前代未聞の侵攻を許したのだった

2015-07-14 21:24:49
葛葵中将 @katsuragi_rivea

ーーー軍上層部は戦慄した。 陽動を行っていたのは我々…敵は、その裏をかいてきた 急遽、本土に残っていた戦力をかき集め迎撃に当たるも…敵は遥かに強大 敵の大部隊による蹂躙で一方的な防戦に追い込まれ、硫黄島近海まで押さえ込むのがやっとの状態にまで陥った

2015-07-14 21:26:24
葛葵中将 @katsuragi_rivea

それに追い打ちをかけるかのようにAL/MI方面においても驚きの報告が飛び込んでくる AL方面では、北方棲姫が再稼働… 再生能力をフルに発揮し、周りを取り込み急速に基地形成を始め…最後の激しい猛攻へと打って出てくる 制圧に当たっていた艦隊は必然、苦戦を強いられることとなる

2015-07-14 21:27:45
葛葵中将 @katsuragi_rivea

MI方面からは…「魔の五分間」の再現ともとれる報告に人々は恐怖した。 撃破したかと思われた空母棲鬼、及び中間棲鬼は纏っていた"殻"を破り…その真の姿を現す。 これを確認した艦隊によって同二体は「棲姫級」と認められ以後、「空母棲姫」「中間棲姫」と呼称される

2015-07-14 21:29:02
葛葵中将 @katsuragi_rivea

再び禍々しい姿を現した二体による挟撃は…先の物よりも遥かな激しさを見せる 絵本に描かれたような悪魔の見てくれの新型艦載機が大量に飛来し、 目標の機動部隊へ向かい大量の爆弾を降り注いだ

2015-07-14 21:30:32
葛葵中将 @katsuragi_rivea

敵機直上!航空母艦、加賀が確認し声をあげるも時既に遅し 一航戦、赤城加賀が大破炎上。 二航戦、蒼龍飛龍が被弾炎上。 "あの大戦"においては作戦に参加していなかった五航戦、翔鶴瑞鶴も飛行甲板に被弾し発艦不可へと陥る 機動部隊は壊滅的な打撃を被り、一時撤退を余儀なくされた

2015-07-14 21:32:06
葛葵中将 @katsuragi_rivea

優勢にあったはずの状況が一気にひっくり返されたのだった 本土に残っていた将官及び士官は皆、新人かまたは… 事情があって本土を離れられない者のみで戦況の悪化にさらに拍車をかける ここ…横須賀に先の作戦において戦果を上げている者達が招集され、敵揚陸部隊邀撃作戦が発令される

2015-07-14 21:33:51
葛葵中将 @katsuragi_rivea

その複数の作戦指揮官の内の一人が先ほど怒号を飛ばしていた男… 野次(のつぐ)という名の大将 戦果を上げてはいるものの、良くない噂が絶えず囁かれ 無茶な作戦ばかりをたてると評判が常に付いて回る…そんな男であった …その噂も信憑性に足る話ではないかと大淀は思う

2015-07-14 21:34:40
葛葵中将 @katsuragi_rivea

彼の立てる作戦は無茶そのもの… 艦娘達は傷ついたままの状態で何度も出撃を命じられ、 成果を残せぬ者はこの男に罵声を浴びせられ切り捨てられる 犠牲者も既に少なからず出ている 大将という階級から誰も彼には逆らえない 反感を抱かない者を探すほうが困難。そう評価する

2015-07-14 21:35:45
葛葵中将 @katsuragi_rivea

彼女が野次の目を盗んで眼差しを向けるちらつくモニターに映りこむ中背で細身、長髪を首の後ろで結える男… "葛葵"もまた…彼の逆鱗に触れこの場を追われた それからずっとこの調子のまま眠る少女と共に過ごしている そのいきさつは二日ほど時間を遡る

2015-07-14 21:37:43
葛葵中将 @katsuragi_rivea

ーーー港は喧騒の中にあった。 敵部隊を少しでも足止めしようと反復出撃が繰り返され 帰投する艦隊と出撃する艦隊が交互にすれ違う 帰投してきた艦隊の艦娘の多くはひどく傷付き曳航されて帰投する者も少なくない 中には仲間の轟沈に嗚咽を漏らし泣き崩れる艦娘達の様子も見られた

2015-07-14 21:39:30
葛葵中将 @katsuragi_rivea

各方面へと精鋭部隊及び人員は送られ、人手は限りなく不足していた 作戦指揮に当たる指揮官相当の人材でも駆り出され 怪我人の搬送や艤装の整備などにもその手を貸し出しまさに"猫の手も借りたい"ような状況 そんな中、行き交う人の波を掻き分け走り回る葛葵と一人の少女の姿があった

2015-07-14 21:40:41
葛葵中将 @katsuragi_rivea

同日の夜。葛葵はこの銀髪で片目を隠す少女、駆逐艦「浜風」の一報を受け、 缶詰状態にあった司令部室を飛び出した 麾下にあたる艦娘、駆逐艦「天津風」が帰投したと聞き、いてもたってもいられなくなったのだ 彼の精神にも限界が近づいていた

2015-07-14 21:41:56