【ア・ニンジャ、キャン・ビー・ア・ヒーロー?】 #1

しまな @cimana_ns

【ア・ニンジャ、キャン・ビー・ア・ヒーロー?】 #忍殺深夜の真剣創作一本勝負

しまな @cimana_ns

「アイエエエ！」「なあ兄貴、こいつやっぱファック&サヨナラしちまおうぜ?」「そうだなぁ…売り飛ばすまでもねぇや」「「アハハハハ！！」」甲高い悲鳴に振り向いたタジマ・マサトの目に飛び込んだのはそのような光景であった。ネオサイタマではさして珍しくもないマッポーの風景。

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彼のような低所得エスイー(原注・タイピング肉体労働者を指すと思われる)はしばしばこの類のインシデントに遭遇し、そして奥ゆかしく無視する。彼は比較的正義感が強い方であり、初めの一度は助けた。が、彼は代わりに囲んで棒で叩かる事となり、給料日直後のクレジット素子をネコソギされ懲りた。

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実際、このような治安悪化エリアでわざわざ人助けをするのは自殺行為に等しい。仮に居るとするならばZBR中毒者、狂人、ドネート目当てのヤクザ、あるいは……「…カートゥンのヒーロー」自然と口が動き、小型UNIXを詰めたビジネスバッグの重みが、その中の新品の玩具のベルトの重みが増す。

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マサトが子供時代から好きだったカートゥン…シノビライダーの変身グッズのプレミア復刻変身ベルト。彼は3ヶ月分の給料をやりくりの上仮病で早退、でバーとへ駆け最後の新品一つを確保した。その家路の半ばこのようなインシデントに遭遇したのだ。シノビライダーなら確実に、この路地に現れる。

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マサトは路地裏を一歩通り過ぎ、立ち止まる。「狂人の真似をすれば実際狂人」平安時代の詩人であり剣聖、ミヤモト・マサシの遺したコトワザが頭をよぎる。だが……。暫く固まっていたマサトはしゃがみ込み、新品のベルトを開封。バックルは無論、自動で装着されはせず、ベルトの調整に数分。

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「アイエエエ！アイエエエ！」なおも悲鳴。「よっし…」ベルトを巻き終えたマサトは毒々しいネオンを背に路地裏の入口へと立ち、子鹿めいて震える足を張り、声を絞りだす。「ま…待て！」「ア?」ヨタモノが振り返る。「アッへ！何そのカッコダセェ！その年にもなってヒーロー気取りのお子様かぁ！？」

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ズバリ・ハイのヨタモノが千鳥足でマサトへと近づく！その手には錆びついた金属パイプ！「違う！俺は！」「イヤーッ！」「オゴーッ！」返事代わりのボディーブロー！マサトは躊躇無しの一撃に嘔吐、壁へと後ずさる！「何か覚めちまったっすよ兄貴…アッへ…こいつでストレス解消したぁい…」

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「そっちの方が楽しそうだなぁ…?俺も混ぜろ」「ガキに現実教えてやりましょうよぉ！ヘヘッ！」兄貴と呼ばれたヨタモノの手には…ナムアミダブツ、横領マッポガン。「こいつ狂人だからな、わざわざ治安悪化エリアを巡回してやっていた俺様が正当防衛重点で射殺よ」「アイエエエエ！」悲鳴が遠ざかる。

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「逃げられちゃ困るんだよぉ！」BLAMN!「ンアーッ！」足を撃ち抜かれた女性が水溜りへと転倒。「イヤーッ！」「グワーッ！」床に転がるマサトの意識は朦朧とし、自身の無力への後悔と自虐の声が鳴り響く。(俺には無理だったんだ。センタ試験には失敗、カチグミにもなれない、結局何も出来や…)

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(…そうだ、ヒーローの真似事した事なんかが間違いだったんだ。これからはもっと奥ゆかしく…波風立てないように…)「アッへ！！」「グワーッ！」ヨタモノに嬲られ、マサトはブザマに床を舐める。その視線の先にはもう一人のヨタモノと女性。ナムサン、ファック&サヨナラと言うことか。

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マサトの意識はは後悔から疑念…そして怒りへと変わる！(俺は…波風立てずに生きようと?あんな非道を見て見ぬ振りをして生きようと?ふざけるな！そんな人生なら死んだ方がマシだ！俺は…俺は……!)脳内に幼き日のシノビライダーの映像がリフレインし、不意に全身に力が溢れる感覚。「イヤーッ！」

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ブザマに路地を舐めていたマサトが痙攣、そして電撃的に立ち上がる！まるでニンジャの如く！「グワーッ！？」顎を跳ね上げられたヨタモノが呻く！「アヘッ…何だテメェいきなり！」「俺は…」マサトが顔を上げる！その奥の決断的な怒りと狂気と…正義に燃える眼を！「俺が…シノビライダーだ！変身！」

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「アイエエエ！！」薬物による仮初めの耐性が剥がれヨタモノが重篤なニンジャリアリティ・ショック症状へと陥る！「ななな何者だテメェ！」「俺はシノビライダーだ」ニンジャが歩み寄る。「アイエエエエアバッ」後ずさるヨタモノの首が消え、一瞬してスプリンクラーめいて鮮血が噴出する。

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ナムアミダブツ、マサトは狂ったか！？だが玩具に過ぎないはずのベルトが電子音声を発すると同時、彼の姿は帯めいた暗闇へ包まれ、一瞬後に夜に溶ける藍色めいた装束のニンジャが現れる！まるでカートゥンの中から抜け出し、実体化したが如く！「…オイノチ、チョーダイ」ニンジャが呪詛を吐く。

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ニンジャがファック&サヨナラを目論みたヨタモノへと歩み寄る。「何だぁテメェアイエエエ！？」「アイエエエ！」同時にニンジャリアリティショックを発症、女性は失禁しながら気絶し、ヨタモノはマッポガンを向け「イヤーッ！」「アバーッ！」正拳がヨタモノへと突き刺さる。

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拳を引き抜くと同時、鮮血がニンジャ装束を濡らす。シノビライダーと名乗ったニンジャは無感情にヨタモノを蹴り飛ばすと再びベルトを操作。電子音声と同時にニンジャ装束が解け、マサトが現れる。「アイエエエ！！」マサトが情けない悲鳴を上げる！「何だ…何だこれ……」

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マサトが血溜まりを前に立ち尽くす。「俺が…俺がやったのか…?」だが彼のスラックスにはシミ一つ無し。「アイエエエ…」しばらく彼は途方に暮れていたが、目の前の女性に気付くと女性を抱え上げようとし…数回失敗した後、表通りのネオン街へと歩き出した。腰に玩具のベルトを巻きつけたまま。

しまな @cimana_ns

【ア・ニンジャ、キャン・ビー・ア・ヒーロー?】 #1 終わり。