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NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「ドーモ。ミチグラ・キトミです。今夜もノンストップ!庶民の味方、ネオサイタマ・プライド!」市街の大型プラズマディスプレイに、精力的な司会者の顔と、不自然にボリュームのある髪型が映し出された。 1
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【ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ 10101900:ネオサイタマ・プライド】
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「私が少しの休憩を頂いている間のエモーショナル映画プログラム『涙の家族日記……元ヨタモノの俺だけど、お母さんありがとう』はお楽しみいただけましたか?」ミチグラの顔にカメラが寄る。「感動的シーンの数々に私も思わずハンカチを濡らしました!苦しくても我慢する!忘れてはいけません!」 2
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「TVの前の皆さん、社会から伝統的な道徳規範が失われると、フジキド・ケンジのような非道テロリストが生まれてしまうのです!一連のテロを許してしまったのは我々です!そう、TVの前の皆さんの油断が原因だ!」彼はスタジオを闊歩し、顔の見えぬ相手から与えられたスクリプトを語り続ける。 3
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「洋上を視察中の官房長官が殺害された事件は間違いなく、フジキド・ケンジの一派です」ミチグラは追悼ポーズを取る。「そもそも彼が一人の無軌道犯罪者であるという証拠すらないのだ。我々社会全体が反省しなければならない……彼の名を冠する闇の無軌道テロ集団を生み出してしまったことをね!」 4
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「そしてこちらをご覧ください!見てほしい!」スタジオ後方の大型スクリーンに、ネオサイタマ市街のマップ。「今わかっているだけでもこれだけたくさんのポイントで、不審火、爆破テロが起こっています!けっして外に出ないでください!これも間違いなくフジキド・ケンジ組織のしわざです!」 5
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「では、市民生活を脅かす彼らを止める手段は無いのか?ハイデッカーの新長官に就任した、犯罪心理学にも詳しいサモタギ氏のコメントです」『ドーモ、サモタギです。ネオサイタマの治安は安全です。彼らには理念などありません。社会に適合できず癇癪を起こしただけの、矮小で幼稚な人間なのです』 6
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『皆さんの献身的な監視と通報のおかげで、事態は終息に向かっております。彼らは結局の所、正義と秩序を愛するネオサイタマ市民の善良なる心には勝てなかったのだ』後方では懸賞金リストが逐次更新される。『しかし油断は禁物。まだまだ協力が必要。さらに多くのテロ容疑者を追加指名手配します』 7
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「通報チャンス!今なら懸賞金2倍!考えているヒマはない、今すぐ通報!」ミチグラが視聴者を指差した。「そして皆さん、社会の何が悪かったのか見つめ直しましょう。お子さんに最近おかしな兆候はないですか?反社会的な音楽を聴いたり、仲間同士で連れ立って外出したり……クラブに行ったり!」 8
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「そこでは乱交パーティーと薬物がセットだ!ジゴクに通じる堕落の門はお宅の玄関なのです!治安良好地域といえど、他人事ではありませんよ!むしろ富裕層のお子さんの間で薬物汚染は深刻。そういうデータもある。日々の相互監視やデジ・ネンブツ、そしてスポーツ等がどれだけ大事な防波堤か……!」9
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市街。ごった返す人の波。市民らは安らぎを得るためにネオサイタマ・プライドを見上げる。「帰り道に指名手配犯でも転がってねえかなァ!」ヨタモノらが言葉を交わす。「なるべく弱そうなの」「女のテロリストがいいな」「俺たちで捕まえりゃさらにポイント倍点で……痛ェな。なんだよ、オッサン」10
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よろめきながら雑踏の中を進んでいた男が、ヨタモノと肩を接触させたのだ。ハンチング帽を目深に被り、トレンチコートの襟を立てた……傷だらけの男。「……スミマセン、ちょっと……通りますよ……」男は振り返りもせず、足を引きずるように歩いてゆく。「おい、オッサン、待てってんだよ」 11
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「……」男は振り返った。ハンチング帽の陰から、凄まじい目が見返した。「アイエ」ヨタモノは思わず怯んだ。彼にもし博物学的知識があれば、手負いの絶滅ニホンオオカミに睨まれた心地に喩えただろう。その目は超自然的な赤い光すら帯びて……ヨタモノは一瞬視線を反らした。男は消えていた。12
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「待て、あ、いねえ?」ヨタモノは雑踏を見渡した。「クソッ、いねえ!ありゃ犯罪者だな、間違いねえ」ヨタモノはハンティングのモチベーションを失ってはいない。彼は携帯端末を操作し、IRCチャネル「犯罪ハンティングフォーラム」にアクセスする。一方、トレンチコートの男は路地裏へ潜った。13
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トレンチコートの男の足取りは不確かだが、速かった。路地に染み出した水を撥ねると、漏電コードが小さく火花を照らした。彼は時折振り返り、聞き耳を立て、時には敢えて来た道を戻り、別の路地を選択するなどした。男は追われていた。男の名はフジキド・ケンジ。またの名をニンジャスレイヤー。14
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彼はこの10月10日、アマクダリ・セクトの最高幹部である「12人」の構成員を立て続けに倒した。マジェスティ、ブラックロータス、メフィストフェレス、ジャスティス、ハーヴェスター、マスターマインド、キュア。当然それは並の道程ではない。彼は傷つき、疲労し、焦燥していた。 15
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ニンジャスレイヤーは現職官房長官マスターマインドを打倒後、洋上から尋常ならざる手段でネオサイタマへ取って返し、ニチョーム殲滅作戦の陣頭指揮を執っていたヨロシサン製薬の役員、ヤイミ・コナギバことキュアをも殺害した。彼の帰還はしかし、恐るべき追跡者の再始動も意味していた。16
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スパルタカス。古代ローマカラテの頂点に立つ格闘王者にして、ニンジャ。そしてアマクダリ・セクト「12人」の一人。その恐るべきカラテに対し、今のニンジャスレイヤーが真っ向からぶつかり合う道理はない。彼は逃げ続けたが、追撃の手は緩まなかった。 17
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ニンジャスレイヤーがネオサイタマから消失した後、スパルタカスは己の茶室へ戻り、ゆったりとセイシンテキしていた。しかしニチョーム殲滅戦の場へニンジャスレイヤーが飛び戻ったという情報がもたらされるや、彼は即座に追跡を再開……キュア殺害の僅か4分後に、ニンジャスレイヤーを捉えた。18
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ニンジャスレイヤーはスパルタカスと切り結んだ。持てる手を全て使い、どうにか彼を再び撒いた。しかしその逃走努力と引き換えに、ニンジャスレイヤーは確かな打撃を数発貰う事となった。次に追いつかれたとき、果たして同じようにやり過ごす事はできるのか?もはや拳すら満足に握れぬ身で……?19
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「ハアーッ……」フジキドは据え置き型ネオン看板に手をつき、数秒の休止をとる。「最高70分コース」と書かれた桃色のネオン看板が明滅した。「アーラ、お疲れドスエ……アイエッ?」半開きのカーボンショウジ戸から勧誘しようとしたオイランが泡を食う。勘付いたのだ。「アイエエ!フジキド!」20
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フジキドはハンチング帽を目深に被り直し、すぐさまその場を去る。「フジキド!フジキドドスエ!」「なんだって!」「通報だ!マッポ……ハイデッカーだ!早く!」「アイエエエ!」喧騒が追ってくる。彼は闇にまぎれる……。 21
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「なんだって!通報だ!マッポ……ハイデッカーだ!早く!」「アイエエエ!」「ちょっといいか、アンタら」「エッ?」狼狽するイロマチ・スタッフのもとに、スタスタと歩いてきた男あり。黒に金の縁取りをほどこした外套を羽織り、目つきは鋭い。注意深い者は外套の下に鎖装束を見るだろう。23
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「な……なんでしょう?」ゴヨキキはやや卑屈に見上げた。その男が只者ではなかったからだ。然り。男のアンダーグラウンド直観は正しい。この黒外套の男こそがスパルタカスなのだから。「今……ちょっと聴こえたもんでな」スパルタカスは囁いた。「フジキドという名が」 24
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