怪談乱舞第一回・一夜目(個人ログ)

数奇屋さん主催の #kaidan_rnb で語っていたものの自分のログです。
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宵野光 @Julius_Li

そしてそんな素敵なお話のあとで緊張しますが、一つ、語らせていただこうと思います。しばしお付き合いいただければ幸いです。 #kaidan_rnb

2015-07-19 01:47:05
宵野光 @Julius_Li

怪談乱舞、語り手いっきまーす

2015-07-19 01:47:21
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr 題は……考えていなかったのですが、ひとまず「懐かしき香り」とでも。それでは、――怪談乱舞、始めようか。 #kaidan_rnb

2015-07-19 01:50:48
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr 陽は落ち、遠くから酒を酌み交わす大きな見目の刀たちの笑い声が聞こえてくるような、夜の時間。刀剣男士たちそれぞれに割り当てられた六畳部屋の一室には、ふわりとした煙と共に、うっとりとするような香りが漂っていた。 #kaidan_rnb

2015-07-19 01:52:30
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr 部屋の主は、細く煙を伸ばす香炉を眺めて満足げに頷いて、炉にくべた香の残りを香箱にしまいこんで向き直ると、ゆるりと口角を吊り上げて笑みを見せる。 「ああ、いいねえ……やっぱりこの香りは落ち着くよ。君たちもそう思うだろう?」 #kaidan_rnb

2015-07-19 01:54:31
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr 尋ねると、伽羅の香りですね、と香炉をしげしげと桃色の癖毛の刀が言う。白檀の香りもするよ、と金糸雀の羽のような髪を肩の下あたりまで伸ばした刀が加われば、白いふわふわとした癖毛の刀が恐る恐る、乳香の香りもほんの少しだけします、と付け加えた。 #kaidan_rnb

2015-07-19 01:56:27
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr 「ふふ、秋田くんと乱くんはよく分かったねえ。でも、一番鼻がいいのは五虎退くんかな。この香には他にもいろいろ入っているそうだけどね」  それを聞いてあとは丁子だ、安息香だ、桂皮だ、と盛り上がる三振り。 #kaidan_rnb

2015-07-19 01:59:26
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr その光景に対して、つんと跳ねた赤髪の刀は絆創膏を貼りつけた鼻をひくひくとさせたはいいが、いい香りがする、という印象しか残らなかったらしく首をひねっている。 #kaidan_rnb

2015-07-19 02:00:53
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr 先程から横でだんまりとしたままの蒼い髪の刀に複雑すぎてわかんねえよな、と同意を求めたが、返ってきたのはすぐには分からなかったけれど…、という控え目な否定で、雅ごとが分かんねえのはここじゃ俺だけかあ、と赤髪の刀は肩を落とした。 #kaidan_rnb

2015-07-19 02:02:51
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr その様子を見てふふ、と笑った部屋の主が「愛染くんには少し難しかったかな。小夜くんの前の主は音に聞く風流人だからねえ、気にして比べることもないさ」と慰めるとまあそれもそっか、と気を持ち直したようで。 #kaidan_rnb

2015-07-19 02:05:33
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr 部隊を同じくした五振りは、辿ってきた経歴も性格も嗜好もそれぞれだったが、それでも付き合いがそこそこ長いなりに良好な関係を築いていた。そして五振りとも、戦場で頼れる味方であり意外に面倒見のいい部屋の主を慕っては、ふとねだるのだった。 #kaidan_rnb

2015-07-19 02:07:53
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr なあ、今日は何を聞かせてくれるんだ、と、よく磨いた銅のような瞳を輝かせた赤髪の刀が言う。 #kaidan_rnb

2015-07-19 02:09:26
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr 「おやおや、そんなに僕が欲しいのかい? さて、今日は何を話そうか」 #kaidan_rnb

2015-07-19 02:11:23
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr 怖い話がいい! 間髪入れずに差し込んできたのは金糸雀の髪の刀。 あんまり怖いのはいやですよ、と肩を寄せ合う純白と桃色の癖毛の刀だが、部屋の主を見上げる眼差しにはどこか期待する色がある。 #kaidan_rnb

2015-07-19 02:12:35
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr さきほどまでそっぽを向いていた、蒼い髪を高い位置で結いあげた刀も、部屋の主の話は気になるのかちらちらとそちらを見ている。 五対の幼げな瞳に見上げられ、部屋の主は片方だけ晒している鶸の羽色の左目をゆうるりと細めてわらった。 #kaidan_rnb

2015-07-19 02:14:34
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr 「君たちも好きだねえ。夜の京都へ行く道すがらで散々語らされて、もうあまり手持ちがないんだけどなあ……」 #kaidan_rnb

2015-07-19 02:15:41
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr 「じゃあ、例えばこんな話はどうかな?僕が前の主の居城だった丸亀城、あそこは石垣がとても見事でね……でも、築城はとても難航して、遂には雨が降る夕暮れ、誰でもいいから通りかかった者を人柱として石垣に埋めよ、ということになってしまってね」#kaidan_rnb

2015-07-19 02:20:12
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr 「ああそこへ、不幸にも通りかかってしまったのが一人の豆腐売りの男。雨のせいで豆腐が売れず、とーふー、とーふー、と力無く繰り返しながら歩いていた男は、普段は通らない城の付近を通りがかってしまったがために、捕えられて人柱として生き埋めに……」 #kaidan_rnb

2015-07-19 02:22:48
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr 「そんな出来事を経て、あの丸亀城の素晴らしい石垣は完成したのさ。しかしそれからというもの、雨が降る夜になると……、……え、この話はもう聞いたって?」 #kaidan_rnb

2015-07-19 02:24:49
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr 雨が降る夜になると…、と、部屋の主の声を真似てかわざと低めた声で囁いたのは桃色の髪の刀。 石垣の中から、声が聞こえるんだよお…、と、これは金糸雀色の髪の刀。 どこからともなく…と、蒼い髪の刀が繋ぎ、でも確かに…と赤髪の刀が脅すように囁く。 #kaidan_rnb

2015-07-19 02:29:52
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr とーふー、とーふー……って……。最後に、幽鬼の声とはかくあらんと紛うばかりのか細い声で白い髪の刀が締めくくる。 と、一拍置いて、きゃーっ!こわぁい!と合いの手が入った。 見事な連携だった。 #kaidan_rnb

2015-07-19 02:32:11
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr 話の、それも最後が語りの最高潮ともいえる怪談噺のオチを取られ、部屋の主の笑みもさすがに微笑むだけとはいかず苦笑いでぱちぱちと拍手を送ってから頬を掻いた。 「参ったなあ…それなら丸亀城の石垣職人の話は、ああ、それもだめかい? うーん……」 #kaidan_rnb

2015-07-19 02:38:49
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr 「――じゃあ、特別に、僕がまだ誰にも話したことのない話を、聞かせてあげようか」 そう言って人目を憚るように声を低めた部屋の主に、五振りがごくりと息を飲んだ。 しんと静まり返り、香炉からくゆる煙だけがゆらめく部屋で、部屋の主が口を開く。 #kaidan_rnb

2015-07-19 02:43:37
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr 「せっかくだから、香にまつわる話を、ひとつ。江戸時代のことだ。とあるありふれた長屋に、一人の僧侶が越してきた。昼間にはただの僧侶かと思われたけれど、――夜な夜な、誰も彼も眠りを求める夜半に念仏を唱える声がする。 #kaidan_rnb

2015-07-19 02:49:19
宵野光 @Julius_Li

@kai_bsr 南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏、囁く声はけして大声ではなかったけれど、夜通しそんな声を聞かされていた近隣の部屋の住人は、どんな気持ちだったのかな。――まあ、快いと思わなかったことだけは、確かだろうね。 #kaidan_rnb

2015-07-19 02:52:12