忍殺二次創作短編集【ジャスト・スナップショット・オブ・ゼム】その４（原文のみ）

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

不意にトレンシャルが身を乗り出した。予想外の反応にヴィルデフラウが目を丸くする。「知っておるのか！？」「聞いたことがある。しかし我がその名を聞いたは江戸時代の折ぞ」その口から低い唸り。「我が愛弟子、タタラ……ポゴスティック＝サンを不具にした憎きニンジャ」24 #4215tk

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「あのポゴスティック＝サンがか」ヴィルデフラウが目を細める。「命はあるのじゃな？」「うむ。あの山の何処かで静養しておるはず」「成る程」トレンシャルの言葉を聞き、腕組みをする。それにしても江戸時代とは？あのニンジャがそこまで古いものと思えなかったのだが……25 #4215tk

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「もし彼奴が我がタタラを傷つけたニンジャならば捨て置けん、今すぐ見つけ出して八つ裂きにしてくれようぞ！」トレンシャルが吼える！物陰から小さな悲鳴。それを捉えたヴィルデフラウは舌打ちした。「静まりや、トレンシャル＝サン。儂の可愛い弟子を脅かしてくれるな」26 #4215tk

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その言葉に、トレンシャルは表面上大人しくなった。しかしその瞳には実際油断ならぬ敵意の色が光っている。絶対に危険だ。「まあ聞け。急いだヒキャクがカロウシするというコトワザがあるのを知らんのか」「……ミヤモト・マサシとやらだな。なぜ貴様がそれを」「弟子から聞いた」27 #4215tk

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呆れた眼差しを向けてくるトレンシャルに、ヴィルデフラウはマッタのポーズをする。「そう急くな。オヌシも起きたばかりであろう。まだカラテも本調子ではあるまい」「ム……」「万が一ということもある。ニンジャスレイヤー＝サンとのイクサはもう少し待て」28 #4215tk

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睨み殺さんばかりの視線をヴィルデフラウに向けていたトレンシャルは、ややあってから長い溜息をついた。「……仕方あるまい。たまには貴様の顔を立ててやるとしよう」「それはありがたい」「しかし、そうなると何をすべきか。貴様との組手だけではすぐに飽きてしまうしな」29 #4215tk

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瞑想するかのように目を閉じていたトレンシャルが、ふと気づいたようにヴィルデフラウを見た。「そういえばよ。我の弟子どもは何処にいった」「知らん」ヴィルデフラウはあっさりと答える。「大方、死んだのであろう。あの場に貴様以外のニンジャの気配はなかった」30 #4215tk

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「なんと！？」トレンシャルが目を見開く！「そんなバカなことが！たかだかあれだけの年月を生きて過ごせぬはずはない！」「根本が違うオヌシと一緒にしてやるな。……しかし」ヴィルデフラウが思いついたように言う。「蘇ったハトリ者ならば、ごまんとおるぞ」31 #4215tk

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首を傾げたトレンシャルが、すぐに顔をしかめる。「貴様の真似をしろてか？何が悲しゅうてハラキリをしたハトリ者どもの世話をせねばならん」「もはやその区別も無意味な時代よ！」ヴィルデフラウがカラカラと笑う。「なかなかに愛いものじゃぞ、ソウル憑依者というやつは！」32 #4215tk

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「フン……暇潰しにはなるか」「そうとも。ところでトレンシャル＝サン、ウルフマザー＝サンは生きておると思うかね？」「彼奴か？さあて、生きておってもおかしくはないが。なぜそんなことを聞く」「知れたことよ。やつも叩き起こす」トレンシャルが驚いたように顔を上げた。33 #4215tk

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ヴィルデフラウはニヤリと笑った。「何が起こるかわからんからな。味方は多いほうがよい」「……よくよく物好きな女だ、貴様は」呆れた声を上げるトレンシャルに、ヴィルデフラウは大笑する。「そろそろ組手の相手が欲しいでな！飯を食ったら探しに行くぞ」34 #4215tk

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「相変わらず……」トレンシャルはそれ以上何も言わなかった。ただ運ばれてきたスシを眺める。恐る恐るといった様子で食事の準備を始めた弟子たちを見て、ヴィルデフラウは思う。ひとまず当たれるものはすべて当たる。あの赤黒のニンジャが、何かをしでかすその前に。35 #4215tk

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『トレンシャル・レイニング』終わり #4215tk

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忍殺二次創作短編集【ジャスト・スナップショット・オブ・ゼム】より『ストレイ・ウルヴス・カミング』 #4215tk

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「おい、タバタ。お前どう思う？」「……まともな殺され方じゃないですよね」ネオサイタマはアタマ・ストリートの一角。その真ん中に倒れた無残な死体を観察し、二人のデッカーは顔をしかめていた。くたびれたヤクザ・スーツ。綺麗に消失した頭部。「カタナじゃねえな、こりゃあ」1 #4215tk

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「デスネー。どっちかっていうと」タバタが首無し死体の切断面を見やり、言う。「……噛みちぎられた跡みたいに見えませんか、これ？」もう一人のデッカー……シンゴ・アモは仏頂面で唸りを上げる。馬鹿馬鹿しい話だが、彼の目にもそうとしか見えぬ。「目撃者がいるんだったな」2 #4215tk

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「ええ、ええ」タバタがメモを確認し、眉をひそめる。「あるにはあります」「なんだ、その煮え切らない言い方はよ」「だって」シンゴの難癖に、タバタは肩を竦めた。「いかにもオカルトですよ、これ……複数の目撃者が、そろって同じことを言ってるんです」「複数だァ？」3 #4215tk

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シンゴが鼻を鳴らす。「だったら、もう俺たちの出番はないじゃねえか。犯人わかってるんだろ？」「はあ、でも捕まえられますかねこれ？」「なに？」「……被害者が容疑者にわざとぶつかって、難癖をつけたところ、急に首がなくなったそうなんです」シンゴはまじまじと相棒を見た。4 #4215tk

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「その容疑者ってのは」「どっかに行っちゃったそうです。管轄のマッポが捜索中で」「……見つからねえだろうな」シンゴは溜息をつく。デッカーとしての勘が、この事件は異常だと告げていた。タバタも同感なのだろう。彼も疲れたように溜息をついた。「ツイてないですよねぇ……」5 #4215tk

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その夜、同ストリート路地裏！「「「ザッケンナオラー！」」」「「「スッゾオラー！」」」双子めいて同じ顔のヤクザに囲まれ、その小柄な女はわずかに首を傾げた。「なんだい、最近の人間社会には妙なのが出回っているねェ……」動じた風もなく、ただのんびりと呟く。7 #4215tk

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その影からタタミ五枚分離れた箇所に「イヤーッ！」風めいて何かが降り立つ！ナムサン！藍色装束のニンジャではないか！？「ドーモ、ダガーアームです」アイサツを繰り出したそのニンジャは、油断なくカラテを構える。その両手甲からサイバネ刃が飛び出した。8 #4215tk

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「貴様だな？俺のヤクザ・クランの若いのを殺したのは」「へェ？」女は不思議そうに首を傾げた。そのまま眉根を寄せて何事か考えていた彼女は、不意に手を打った。「あぁ。あれか。すっかり忘れるところだった。……申し訳ないね、最近起きたばっかりなものだから」9 #4215tk

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ダガーアームは舌打ちする。なんとも人を食った態度。しかし……彼のニンジャソウルは、眼前の相手が只者でないことを警告している。「あの殺し方は到底モータルに真似できるものではない……貴様もニンジャだな？ならばアイサツせよ！」女はじろりとニンジャを見、笑った。10 #4215tk

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「ドーモ。はじめまして、ダガーアーム＝サン。ウルフマザーです」おお、見よ！アイサツを返す女の口元には、いつの間にか鉄格子めいたメンポが装着されているではないか！「ここで会ったのも何かの縁。ちょいと聞きたいんだが、あんた、この辺でタヌキとキツネを見なかったかい」11 #4215tk