忍殺二次創作短編集【ジャスト・スナップショット・オブ・ゼム】その４（原文のみ）

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

忍殺二次創作短編集【ジャスト・スナップショット・オブ・ゼム】より『トレンシャル・レイニング』 #4215tk

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岡山県、マウント・カクレガ。そこに秘匿されたドージョーの中で、一人の女ニンジャがザゼンしている。彼女の名はヴィルデフラウ。神話時代より蘇りし、恐るべきリアル・ニンジャだ。NRSに陥らぬ読者には、このニンジャの眉間に刻まれた深い皺が見えたかもしれぬ。1 #4215tk

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然り。この世に蘇って初めて、ヴィルデフラウの心中には一抹の不安が生まれていた。その原因はなにか？……少し前に邂逅した二人のニンジャである。一人の名は、ドラゴン・ニンジャ。かつて彼女の主君たるカツ・ワンソーに抗ったニンジャ六騎士の一人。2 #4215tk

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が、ヴィルデフラウはそれをさして脅威に思ってはいない。そのワザマエがかの時代に比べてあからさまに低下していたからだ。彼女が気にしているのはドラゴン・ニンジャが伴っていたもう一人のニンジャ。ニンジャスレイヤーなる存在。正確に言うならば、その者が内に秘めたソウル。3 #4215tk

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あのニンジャソウルを知覚した瞬間のことを、ヴィルデフラウは忘れないだろう。一瞬だけとはいえ、彼女は本能的にそれを恐れた。蘇って初めての体験！……結局のところ、二人のニンジャは大人しくマウント・カクレガを去っていった。それでもなお彼女は焦燥感を捨て切れぬ。4 #4215tk

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一対一ならまだなんとかなる。が、今の彼女には弟子がいる……その弟子を守りながらあの恐るべきソウル憑依者と渡り合えるか？彼女のニンジャ第六感は、冷酷な答えを下した。否だ。あのような存在がいる以上、己も対策を練らねばならぬ！「センセイ？」彼女はかっと眼を見開いた。5 #4215tk

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「アイエッ」驚きの声を上げたのは、彼女の一番弟子であるトランスルーセント。半透明の彫像めいた肉体を持つ、スライム・ニンジャ・クランのソウル憑依者である。ヴィルデフラウはすっくと立ち上がり、10フィートの高みから弟子を見下ろした。「出かけるぞ。ついてくるがよい」6 #4215tk

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「エッ、出かけるとはどこに」トランスルーセントの言葉を待たず、ヴィルデフラウは彼女を摘み上げた。「アイエッ！？」そしてそのまま「イヤーッ！」ドージョーの壁をトライアングル・リープし、ドージョーの外へと飛び出す！まだ暗い空の下を、彼女は風めいて疾走していった。7 #4215tk

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山をいくつ越えただろうか。ようやく目当ての地点にたどり着いたヴィルデフラウが、トランスルーセントを解放する。「セ、センセイ……ここはいったい」「フゥーム」ふらつきながら立ち上がる彼女に答えず、ヴィルデフラウは周囲を見渡した。草木の一つも生えぬ盆地である。9 #4215tk

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「彼奴め、いい加減くたばっておるか……？」ヴィルデフラウは苦い声を上げ、その場に片膝をつき、地面に耳を当てた。そのままニューロンを研ぎ澄ませ、己のニンジャ聴力をフル活用。……その耳に届いたある音に、彼女はにやりと笑みを浮かべた。「チョージョー」10 #4215tk

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「あの、センセイ？いったいなにを」言葉を投げかけたトランスルーセントが口を閉じる。すっくと立ち上がった己の師がしようとしていることに気づいたからだ。片膝を立てた姿勢になり、拳を大地に当て、ゆっくりと振り上げる。カラテの基礎、カワラ割りの事前動作！11 #4215tk

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「キエーッ！」大気を切り裂くカラテシャウトとともに、ヴィルデフラウが拳を振り下ろす！KRAAAASH！地面に亀裂が入る！「アイエエエ！？」広がる亀裂にバランスを崩しかけたトランスルーセントが悲鳴！なんとか平衡を取り戻した彼女は、足元に不穏な地響きを察知する。12 #4215tk

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微かな揺れは次第に大きくなり、やがてニンジャでも耐えられぬほどの激震となる。そして！「ロウオオオオーン！」地の底から響いた方向に、トランスルーセントは身を竦ませた。ヴィルデフラウがにやりと笑う。「寝坊助め。ようやく起きよったか」KRAAAASH！13 #4215tk

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「イヤーッ！」ヴィルデフラウがバック転退避！彼女がいた地面を砕き、大木めいた長いなにかが飛び出してくる！「あれは」トランスルーセントは目を見張った。大地から現れたのは、おお、ゴウランガ！蛇めいた体に鹿の角を生やした異形の生物ではないか！？14 #4215tk

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トランスルーセントは知るまい。この悪夢的生物の正体を！これぞ神話時代、ニンジャのイクサでも猛威を振るったと言われる伝説のクリーチャー、飛龍である！『我が！眠りを！妨げるのは！誰ぞ！』飛龍の咆哮！そこに確かな意味を感じ取り、トランスルーセントは困惑した。15 #4215tk

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堂々たる態度で、ヴィルデフラウがアイサツを繰り出す。「ドーモ、トレンシャル＝サン。ヴィルデフラウです」ぎょろり、と飛龍の目がリアルニンジャを見据えた。『ドーモ、ヴィルデフラウ＝サン。トレンシャルです』「ゴブサタじゃの」『起こしたのは貴様かよ』16 #4215tk

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「おお、そうじゃ。久しぶりに用ができたでな」『気持ち良く寝ておったものをよ……少し待て』トレンシャルと名乗った飛龍が、一声吼えた。黒い雲がその巨大な姿を覆い隠す。その中から、一つの人影が降り立った。スケイル・ニンジャメイルに身を包んだ女ニンジャが。17 #4215tk

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「ニンジャ」トランスルーセントが呆然と声を上げる。そしてトレンシャルに一瞥され、身を硬くした。「おうとも。我もニンジャよ。貴様と同じくな……この情けないニンジャはなんだ、ヴィルデフラウ＝サン」「儂の弟子よ。そういじめてくれるな」「弟子」18 #4215tk

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トレンシャルがまじまじとトランスルーセントを見つめた。ややあってから彼女はヴィルデフラウに呆れた表情を向ける。「オヌシ、また他のニンジャ・クランから落第生を引き抜いたか。よくよく面倒ごとの好きな女よの！」「弟子を育てるのが好きなのはオヌシも同じじゃろうが」19 #4215tk

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呆然と太古のニンジャのやりとりを眺めていたトランスルーセントは、不意に雨が降り始めたことに気づく。トレンシャルの黒雲から降り注ぐ雨に。「まあ聞け、トレンシャル＝サン」ヴィルデフラウが真剣な表情を見せた。「のうのうと寝ておる場合ではない。脅威が迫っておるぞ」20 #4215tk

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【 #4215tk 】

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忍殺二次創作短編集【ジャスト・スナップショット・オブ・ゼム】より『トレンシャル・レイニング』後編 #4215tk

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……ヴィルデフラウの住処でもあるカクレガ・ドージョー！そこに訪れた客人を、トランスルーセントらは物陰から怖々と眺めていた。スケイル・ニンジャメイルを身にまとった女ニンジャ、トレンシャル。なんたることか、センセイであるヴィルデフラウと同様のリアルニンジャなのだ！21 #4215tk

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「……成る程。今の世の成り行きは飲み込めた」ヴィルデフラウが振る舞ったサケを豪快に呷り、トレンシャルが言った。「それ故になお訝しい。貴様が恐れるほどのニンジャがおると？それもリアルニンジャではなく？」「然り」ヴィルデフラウは苦い顔で答える。22 #4215tk

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「貴様のキユウ・アングザエイティではないか？」またもサケを呷り、トレンシャル。「わざわざ我を起こすほどのこととは思えん」「ニンジャ第六感よ」ヴィルデフラウがむっつりと呟く。「いずれにせよ、あのニンジャスレイヤーなる者は油断ならぬ」「なに、ニンジャスレイヤー？」23 #4215tk