妖怪ウォッチ二次創作長編:くれは舞う風・第一話『帰郷』

以前に出していた妖怪ウォッチ18禁を長編小説化させました。その第一話です。オリジナルキャラ及び設定を含みます。
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みなみ @minarudhia

そうだ。 秋奈は夢の続きを思い出す。 過去に実際に起こったことを夢に見て途切れた続きを。 あの時も、間一髪でこの犬神が割り込み、戦いを始めたのだ。 戦いは熾烈で、禅納和尚も事態を感じて加わった。 94

2015-07-18 21:53:33
みなみ @minarudhia

しかし、妖怪の力は強大だった。 ようやく妖怪を封印した後、その傷と疲れで、禅納和尚は命を落とした。 「私はあなたを護るよう友、禅納から約束を受けていた」 犬神は話す。 「遠くへ行ってしまったことが侘しかった。…あなたが戻ってきたなら、私はあなたを………………」 95

2015-07-18 21:55:15
みなみ @minarudhia

言いかけて、犬神は言葉を止めた。 紅い双眸に危険な鋭い光が宿る。 「…そこの低級な妖怪は、去らせてもらう」 メラメライオンに目を向け、犬神は淡々と告げた。 直後、周囲の霜に覆われる範囲が拡大した。 「待って!彼は…」 「秋奈のそばにたやすく寄るな」 96

2015-07-18 21:58:45
みなみ @minarudhia

「アキナ、あいつは本気だ!危ないからさがれ!」 メラメライオンは叫び、礼服を脱ぎ捨てて跳躍した。 犬神の手から放たれた冷気が、メラメライオンのいた場所を凍らせた。 「メラッ!!」 近くの木の枝に跳び移り、メラメライオンが犬神に向け火の妖術を放つ。 97

2015-07-18 22:00:58
みなみ @minarudhia

小さな火球は、たちまち犬神の放つ冷気の固まりに撃ち落とされ、蒸発。 火球を打ち破りながらとんできた冷気を別の木に跳び移ることでやりすごす。 たちまち霜に覆われ氷のオブジェと化した樹木に、メラメライオンは舌打ちした。 「やはり普通の妖術じゃ、相殺にもならんか…」 78

2015-07-18 22:04:17
みなみ @minarudhia

犬神は最高位の妖怪の一体であり、冷気の妖術を得意とする。 その冷気の力は生半可な火の力などたちまちに鎮めてしまうほど強烈だ。 そうでなくても、イサマシ族は妖術の扱いを苦手とする者が多くメラメライオンも例に漏れない。 (奴の弱点は打たれ弱さ。そこを突かないことには…!) 79

2015-07-18 22:05:46
みなみ @minarudhia

第三波がとんでくる。 別の木の枝へ跳び移りながら、メラメライオンは犬神の周囲に目を走らせる。 犬神は不動のまま大杉の上に浮いたままだ。 一番近い木のそばまで寄りたいところだが、まっすぐに向かおうものなら…。 今度は立て続けに二発放たれる。 80

2015-07-18 22:08:33
みなみ @minarudhia

それもかわし、メラメライオンはやむなく離れた所の木まで枝を伝い避難した。 「ちょこまかと!」 犬神は身を翻し、大杉の頂きからメラメライオンに向かい飛んできた。 妖術をより正確に当てるため距離を詰めに出たのだろう。 だがそれで十分だった。 81

2015-07-18 22:10:42
みなみ @minarudhia

放たれる冷気を前に、メラメライオンは賭けに出た。 「メラーッ!」 「!? ぐあっ!」 肌を斬るような冷気を前面に受けながら、メラメライオンは拳を犬神の鳩尾に打ち込んだ。 犬神の方はまさか妖術を真正面から受けての攻撃を想定していなかっただろう。 82

2015-07-18 22:12:29
みなみ @minarudhia

ダメージを無視しきれず大きく身を傾いだ。 「ぐ…貴様…!」 メラメライオンが着地するより先に犬神は手を向けた。 「しま…!」 氷結した地面へ着地した直後、メラメライオンの足を這い上がるように冷気が凍りつく。 83

2015-07-18 22:14:53
みなみ @minarudhia

「メラメライオン!」 日廉と共に離れていた秋奈が叫ぶ。 犬神の手に冷気が収束していく。 「お前のようなどこの馬の骨とも知れぬ、低級の妖怪が、彼女といてはならない」  犬神は冷気を掌に集めながら言い放つ。 84

2015-07-18 22:17:16
みなみ @minarudhia

もちうる全ての冷気を敵に向けてたたき付ける技、“氷結地獄”を放つ構えだ。 まともに受ければ、いくら火の属性を持つメラメライオンとてタダでは済まない。 「ずっと秋奈を待ち続けてやっとこの時が来たのよ。友との約束を、果たさなければならない。お前なぞ!」 「やめて!!」 85

2015-07-18 22:20:33
みなみ @minarudhia

氷結地獄!! 秋奈が叫ぶも、犬神は容赦なく掌に収束させた全ての冷気を解き放った。 メラメライオンに向けて! 「メラメライオン!!」 「秋奈さん!」 日廉の制止を振り切り、秋奈が全速力でメラメライオンに駆け寄った。 86

2015-07-18 22:23:51
みなみ @minarudhia

「秋奈!?」 犬神が目を見開く。 だがすでに周囲を死そのものにひとしき世界に変える程の冷気は放たれてしまった。 放たれ向かう先の木々も草も地面も塚も全て氷に包み、なおメラメライオンめがけて迫った。 秋奈がメラメライオンを庇うために抱きしめる。 87

2015-07-18 22:25:53
みなみ @minarudhia

彼女の足も、冷気に捕われ凍りつく。 メラメライオンの目が、カッと見開かれた。 正拳バーニング!! メラメライオンが全身の妖気を最大限に引き出し、放った。 地面を這う妖気は燃え上がる炎と化して冷気を吹き飛ばし、犬神の元まで噴き上がる。 88

2015-07-18 22:28:23
みなみ @minarudhia

「!!」 とっさに防御姿勢をとる犬神を炎が包み込む。 「ぐぅ…!」 ほんの一分が長く感じられた。 身に冷気を纏わせて炎を吹き払い、目を開いた時すでにメラメライオンと秋奈を束縛する冷気は溶けていた。 89

2015-07-18 22:31:15
みなみ @minarudhia

「つ…」 「アキナ…その脚…」 着物を着ていたがために彼女の脚は冷気の束縛をじかに受けて霜焼けを起こしていた。 「秋奈……何故……」 犬神は呆然とした。 「秋奈さん!なんて無茶なことを!」 日廉が駆け寄り、秋奈の脚を診る。 秋奈が口を開いた。 90

2015-07-18 22:32:37
みなみ @minarudhia

「………あなた達妖怪と向き合う勇気をくれたのは、彼、メラメライオンのおかげなのよ……」 秋奈は顔を上げ、犬神を見た。 犬神の身体は所々火傷を帯びていた。 美しい銀の毛並み…一本でも手に入れた者は子々孫々幸運を約束されるとされたその毛並みはメラメライオンの炎に焦がされている。91

2015-07-18 22:34:39
みなみ @minarudhia

「今まで私はずっと、妖怪から逃げ続けてきた。父が妖怪に殺された時は、私自身を呪った。こんな目なんかいらないって…!」 「アキナ…」 「救急箱を取ってくる」 日廉がその場を離れた。 秋奈は脚を引きずり、一歩犬神へと歩み寄る。 92

2015-07-18 22:36:58
みなみ @minarudhia

「目を潰そうとしたけどダメだった。ネットワークの世界に逃げてもダメだった。どこへ行っても妖怪だらけで、…気が狂いそうだった。彼と会って、色々…本当に、色々…あってやっと勇気が出たの」 「…」 「犬神……メラメライオンは、私の大切な人。私の恋人。だから、お願い。彼を……」 93

2015-07-18 22:39:33
みなみ @minarudhia

「親父、何があったんだ!」 三人が入ってきた所から声が聞こえた。 命海の声だ。 慌ただしく走る日廉の後ろから命海が続く。 秋奈とメラメライオン、そしてその向こう側に対峙する犬神を見た。 「犬神!一体何やらかしたんだ!?」 94

2015-07-18 22:42:09
みなみ @minarudhia

凍傷を負った秋奈の脚を見て、命海が驚く。 犬神は黙ったままうつむき、ゆっくりと離れて行く。 「待って!」 秋奈が引き止めようとしたが、その姿はたちまちかき消えてしまった。 95

2015-07-18 22:46:35
みなみ @minarudhia

「これでよし、と」 応急処置をほどこし、秋奈の脚に軽く包帯を巻き付けて日廉は立ちあがった。 「これでしばらくは様子を見ておこう。あまり無理はいけないよ」 「ありがとうございます」 「全く…アキナ、いくらなんでも無謀すぎる!」 97

2015-07-18 22:56:07
みなみ @minarudhia

メラメライオンが鼻息を荒くした。 「犬神もお前が介入したら容赦していただろうが、オレの技で弾けなかったら死んでたぞ!」 「でも…」 「オレは妖怪だ。妖怪同士の戦いで人間が割り込んでいいことなんてない。下手したら死ぬってことくらい知ってもらわなければ困る!」 98

2015-07-18 23:02:19
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